![]() | 海の見える理髪店 |
荻原 浩 | |
集英社 |
「海の見える理髪店」
大物俳優が利用していた店として話題となった理髪店 それは海岸通りから斜面を少し登ったところにある
店主は客の姿が写る鏡に海が映るように置く位置を工夫したのだと言う
予約をとってきた客の仕事はグラフィックデザイナー
客のつむじを触った店主は溜息をついた
客の髪を切りながら 床屋としての仕事をしながら店主は自分の過去を話し続ける
店主は客が誰なのか知っていたし 客も店主が誰なのか知っていた
店主は その客に自分のことを聞かせたかった
客もまたある思いから この店に来ている
客は店主にとって とても大切な気がかりな人間であった
店主は最後に言う
「あの、お顔を見せていただけませんか もう一度だけ いえ 前髪の整え具合が気になりますもので」
ずうっととっておいた子供用のブランコー
「いつか来た道」
弟から母親の話を聞いて戻ってきた長い事 家を離れていた娘
娘と母親の間はうまくいかなかった
母親は余りに個性的 エキセントリックすぎて こうあってほしいと願う母親の枠には納まらない人だった
ひまわり
それでも母親の好きな桃を買ってきた娘
老いて 認知症にかかっている母親
そんな母親に「また 来るから」と言えた娘
長い時間がかかったけれど・・・・・
「遠くから来た手紙」
子供はできたけれど夫への不満が爆発してしまった女は実家に戻る よくやって来る夫の母親への不満もある
いっぱいの不満
でも実家の自分のものだった部屋は弟とその妻が使っている
祖母も入っている仏壇のある部屋に寝泊まりする女
その携帯に古風な文面のメールが届く
実家に置いていた結婚する前に夫とかわした手紙
女にとって夫は初恋の相手だった
交際の始め 再会して付き合うようになりー
好きだった気持ち
女は古風な文面のメールの意味に気付く
「空は今日もスカイ」
父親が死んで片親 しかし身を寄せた場所は居心地が良くなくてー
少女は家出を決行する
途中で親から虐待されてる少年と道連れになり一緒に海へ
ホームレスらしき男性が二人に食事を出し泊めてくれる
その男性は初めて二人のことを案じてくれた大人だったかもしれない
けれど警察は誤解してー
淡々と描かれているけれど 幾つもの問題を含んだ物語
今後 親に虐げられている少年は保護を受けることができるのか
少女は現実を受け止めて生きていけるのか
「時のない時計」
父の持っていた時計を修理に持っていた時計店の主人の店に置いた時計にまつわる想い出
男は父のことを思う
男も悩みを抱えていた
今後について
それなりの答えを男は見出す
「成人式」
15才で死んだ娘 交通事故
父親は悔やまれてしかたない
母親は死んだ娘に届いた成人式の呉服の案内に心乱れる
繰り返し観る生前の娘の映像
妻の心を落ち着かせようと夫はあることを言い出す
娘の出るはずだった成人式に出よう
娘の代わりに
おかしな奴と笑われてもいいー
準備をして 娘の同級生の力も借りて成人式の会場へ
喪われたものは 時間は取り戻せない
でも痛みをかかえながら生きることはできる
いつか いつか 生きていたら 生き続けていたら
少しは いいことだってあるかもしれない