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実刑判決の後

2016-08-06 07:42:14 | 身柄拘束・身体刑

2023-03-05追記。

【例題】窃盗被告事件において被告人Aは犯人性を争っていたところ、出廷した公判期日において「懲役1年6月」との有罪判決を宣告された。

 

[身柄の扱い]

・勾留中の場合:実刑判決が宣告された後、勾留中の被告人は公判廷から勾留場所へ帰る。

・在宅の場合:在宅の被告人も判決確定までは刑の執行を受けない(刑訴法471条)。したがって、有罪判決を宣告された当日は公判廷から一旦は帰宅し、判決確定後に、裁判を執行する検察官(刑訴法472条1項)から呼出しを受けて(刑訴法484条前段)、収容されるのが通常である(※)(後述)。□新コンメ633〔上野友慈〕,639-41〔上野友慈〕

※ただし、例外的に呼出しを経ずに直ちに収容状が発付されることもある(刑訴法485条、484条後段参照)。収容状が執行された場合は、その時から刑期が起算されると解されている。□新コンメ639-41〔上野友慈〕

・保釈中の場合:保釈の効力は(禁錮以上の)実刑判決によって失効するので(刑訴法343条前段)、検察官の指揮(勾留状謄本を添付した収容指揮書)に基づいて検察事務官等が被告人を直ちに収容する(刑訴法343条後段→98条1項、事件事務規程140条)。通常は、判決宣告期日の公判廷に検察事務官が待機しており、閉廷後の法廷内で直ちに被告人の身柄を確保して拘置所に収容する。□新コンメ518-9〔河原俊也〕

 

[控訴する場合]

・上訴提起期間は判決宣告時から進行するため(刑訴法358条)、被告人が判決宣告の即日に控訴を申し立てることは可能。初日である判決宣告日は不算入だから(刑訴法55条)、実際の控訴提起期間は、判決宣告当日を含んだ「1日+14日(刑訴法373条)=15日」となる。□新コンメ542〔三村三緒〕

・控訴は、控訴申立書を第一審裁判所へ差し出すことをもって行う(刑訴法374条)。刑事施設に収容されている被告人が控訴する場合は、控訴申立書を刑事施設長宛てに差し出すことになる(刑訴法366条1項、刑訴規則227条、228条)。□新コンメ551〔園原敏彦〕,547〔高橋康明※ハシゴ高〕

・訴訟記録が控訴裁判所に送付された後、控訴裁判所から被告人に控訴趣意書差出最終日が通知される(刑訴規則236条1項2項)。明文では「通知書送達の翌日から21日以降」とされているものの(刑訴規則236条3項)、実務的には提出期間を1か月とすることが多い。被告人控訴の場合、被告人(弁護人)はこの最終日までに控訴趣意書を差し出す必要がある(刑訴法376条1項)。公判期日の弁論は控訴趣意書に基づいておこなわれるので(刑訴法389条)、新たに控訴理由を付加することはできない。□新コンメ551〔園原敏彦〕,566-7〔園原敏彦〕

・被告人控訴の場合、法定通算される未決勾留日数は原則として「判決宣告日~控訴申立日の前日」となるから(刑訴法495条1項)、法定通算を稼ぎたい者は控訴提起期間ギリギリに控訴申立てをすることになろう。なお、被告人控訴によって原判決が破棄されれば「控訴申立て後~控訴審判決宣告日の前日」の未決勾留日数全てが法定通算されるから(刑訴法495条2項2号)、控訴審弁護人は破棄事由のネタを探すことになる。□新コンメ644-5〔上野友慈〕

 

[控訴しない場合]

・控訴しないで判決が自然確定すれば、「判決宣告時~控訴提起期間満了日(15日)」の未決勾留日数が法定通算される(刑訴法495条1項)。

・控訴提起期間内であっても、上訴放棄申立書を原審裁判所に提出することで上訴の放棄をすることができる(刑訴法359条、360条の3)(なお、刑訴法367条により366条が準用されるから、勾留中の者が上訴放棄申立書を提出する先は拘置所長宛となる)。検察官からも同時に上訴放棄をすれば確定が早まり、その分だけ刑の執行も前倒しになるが(刑訴法471条)、裏返しとして法定通算の対象となる未決勾留日数も縮まるので、刑の執行終了時は自然確定と同じになる。□情状A181-2

 

[判決確定後の執行指揮]

・実刑判決が確定すると、検察官は、執行指揮書(執行事務規程19条)により、刑事施設の長に対して刑の執行を指揮する(刑訴法471条、472条本文)。確定から執行指揮までの間は数日~1週間程度が多いか。□情状A184

・在宅事件の場合、判決確定後に呼出状の送付がされ(刑訴法484条前段)、指定された出頭期日に検察庁へ出頭する。確定から出頭期日までの時間は一定でなく、予定が立てづらい。□情状A184

・処遇調査:執行指揮がなされると、当該刑事施設の長による「受刑者の資質及び環境の調査」(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律84条3項)が行われる。「受刑者の処遇調査に関する訓令」3条は、この調査を「処遇調査」と呼称する。刑執行開始時調査は「おおむね2か月以内」で終了するとされているが(受刑者の処遇調査に関する訓令6条4項)、実際は10日程度で終了しているか。□情状A184-6

・収容先の決定:この処遇調査の結果を踏まえ、受刑者には処遇指標が指定され、これから収容される刑事施設が決定される。さらに処遇調査の結果に基づいて、処遇要領(=矯正処遇の目標とその基本的な内容・方法を受刑者ごとに定める矯正処遇の実施の要領。刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律84条1項)が定められる。どの刑事施設が決定されたかにつき照会はできないため、被収容者から家族等へ手紙を書くしかない。□情状A184-6

 

三井誠・河原俊也・上野友慈・岡慎一編『新基本法コンメンタール刑事訴訟法〔第2版〕』[2014]

『情状弁護アドバンス(季刊刑事弁護増刊)』[2019]

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