民事訴訟における当事者の変更

2017-09-06 15:43:18 | 財産法・相続法

【例題】甲地方裁判所に、「原告X、被告Y」と記載された訴状が提出され、「Y」に宛てて訴状が送達された。現在、訴訟係属中である。

(case1)「Y」と名指しされた人の正式名称が「Y2」だと判明した。

(case2)Xは、「XからYに対する請求」から「PからYに対する請求」へと改めたいと考えている。

(case3)Xは、被告を「Y」から「(Yが代表を務める)株式会社Z」へと改めたいと考えている。

 

[「当事者の表示の訂正」とその拡張的運用]

・(case1)では、訴状で「Y」と表示された人物と「Y2」と呼ばれる人物は同一人格である。したがって「通称名Yから本名Y2へと改める」のは、単なる表示の問題にすぎない。この「表示の訂正」が認められるべきことに異論はない。□兼子107,420、コンメ(1)276

・他方、(case3)において、「自然人Y」と「株式会社Z」はもはや別人格である。ところがそれにもかかわらず、多くの裁判例では、このような変更も「当事者の表示の訂正」に該当するとして許容されている。同様に「親権者名義から子名義へ」「死者名義から相続人名義へ」という変更(訂正)を認めた裁判例も存在する。□コンメ(1)277

・以上のような柔軟(すぎる)実務の処理につき、「当事者の確定に関して表示説を採りつつ、人格の同一性を厳密に考えれば、当事者の表示の訂正の範囲に収まるか疑問が残るものもあるが、相手方に特に不利益を生じさせない限り、当事者の意思を忖度し、訴訟法律関係をその前後を問わず継続させる効果をもつ当事者の訂正という手続に仮託して処理することも不適法とはいえず、実務の知恵として許容されるべきであろう」。□コンメ(1)277

 

[任意的当事者変更]

・「当事者の表示の訂正」に対して、(case2)のように別人格の者へ当事者を変更することを「任意的当事者変更」と称する(もっとも既述のとおり、理論的には「任意的当事者変更」であっても、実務では「表示の訂正」の一類型と処理されることがある)。

・民事訴訟において任意的当事者変更をストレートに認める条文は存在しない。他方、取消訴訟においては「被告の変更」が法定されている;行政事件訴訟法15条1項「取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤つたときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもつて、被告を変更することを許すことができる。」。□梅本694

・戦後の下級審裁判例は、任意的当事者変更について次の傾向だと評される;□コンメ(1)274-5

[a]相手方に異議がない場合は、別異の人格への変更を認める例が多い。

[b]相手方の異議にかかわらず任意的当事者変更を認める例も少なくない(ただし、被告側の変更?)。

[c]すでに控訴審の段階であっても、訴えの変更の要件を要求して許容する裁判例もある。

[d]具体的事例の中では、変更を否定する例もある。

・兼子説は「任意的当事者変更=旧当事者に対する訴えの取下げ+新当事者に対する新訴の提起」と理解する。□兼子420-1、梅本695

 

兼子一『新修民事訴訟法体系〔増訂版〕』[1965]

梅本吉彦『民事訴訟法〔第4版(補正第2刷)〕』[2010]

秋山幹男ほか『コンメンタール民事訴訟法1〔第2版追補版〕』[2014]

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