[本則と附則]
・「本則」に対する「附則」には、施行期日、適用区分、経過措置、本則の特則、他法改正、検討条項が書かれる。□読み方9
[編>章>節>款>目]
・条数のまとまった法律を区分する場合の基本単位は「章」である。特に「章」よりも大きな単位を要する場合は「編」を用いる。章立てや編立ての法律には、法律の題名の次に「目次」が付けられる。□読み方7-8
[条>項]
・法文の基本単位を「条」とする。□読み方11
※例外として、極めて簡単な法令は「条」がなく「項」のみから構成される。例えば、明治32年法律第40号(失火の責任に関する法律)は、1つの項(本文とただし書)しか持たない。裁判例で引用される際には、項すらも言及されずに「失火の責任に関する法律本文、ただし書」とされる(最三判昭和32年7月9日民集11巻7号1203頁)。□読み方11-2
・1つの条を内容に応じて区分する必要がある場合、段落分けを行い、段落を「項」とする(※)。戦後直後頃から、第2項以下は算用数字で項番号をつけている。□読み方11-2
[号>イロハ>(1)(2)(3)>(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)]
・条(項)の中で複数の事項を列記する場合、漢数字で番号を付けて列記して「号」とする。□読み方12
・号の中をさらに細分化する場合は、「イ、ロ、ハ・・・」とし、さらなる細分化は「(1)、(2)、(3)・・・」「(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)・・・」とする。□読み方12
[号を含む条項の内部]
・号の記載を総称して「各号列記の部分(各号列記)」と呼称し、それより前の記載を総称して「各号列記以外の部分」と呼称する。□道垣内38、林23、礒崎8
・「各号列記以外の部分」のうち、特に「次に掲げる・・・」「次のいずれかに・・・」を含むセンテンス(※)を「柱書」と呼称するが、法令用語では用いない。この柱書の他にもセンテンスがあれば、柱書は「前段、後段」「本文、ただし書」のいずれかでもある。□道垣内38、礒崎8-11
※なお、近時の法制執務では、柱書の表現方法として「次の各号に掲げる」「次の各号の一に該当する」とはしない。□道垣内38、礒崎8-10
・民法494条1項を例に採れば、↓の太字部分が「各号列記以外の部分」、↓の太字かつ下線部が「柱書」、↓の赤字部分が「各号列記の部分」である。この例では、「各号列記以外の部分」はさらに「前段(=柱書)、後段」と分けられる(たぶん)。□礒崎10-11参照
弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
[条項が2文から構成される場合:前段と後段]
・1つの項(条)が2つのセンテンスが構成される場合、第1文目を「前段」、第2文目を「後段」と呼称する(※)。後段は「この場合において・・・」で始まる例や、「・・・ときも、同様とする。」で終わる例が多い。□辞典490-1、道垣内39-40、外山132
※刑訴法学では、1センテンスにすぎないはずの刑訴法321条1項1号や2号本文(?)を、「又は」の前後で「前段、後段」と分けるが、法制執務一般とは異なる独特の用法だと思われる。なお、最高裁もこの用法を使い、「1号前段」「2号後段」などという(最一決令和元年6月25日集刑326号1頁)。この特殊性を示唆する文献として、宇藤崇・松田岳士・堀江慎司『刑事訴訟法〔第2版〕』(LQ)[2019]391頁。
・特に第2文目が「ただし」で始まる場合は、第1文目を「本文」、第2文目を「ただし書」と呼称する。「本文=原則、ただし書=例外」という関係に立つ。□辞典490-1、道垣内39、外山131
[条項が3文以上から構成される場合]
・1つの項(条)が3つのセンテンスから構成される場合、第1文目を「前段」、第2文目を「中段」、第3文目を「後段」と呼称する。□辞典490-1、道垣内40
・現在の法制執務ではマレであるが、1つの項(条)が4つのセンテンスから構成される場合、第1文目を「第一段」、第2文目を「第二段」、第3文目を「第三段」、第4文目を「第四段」と呼称する。□林22-3、礒崎7
・以上の呼称を嫌って、わかりやすさのために「第一文、第二文、第三文・・・」などと呼ぶこともあるが、正式な呼称ではない。□道垣内40-1
[表]
・本則の中に「表」を用いることもできるが、内容が複雑となるときは「別表」とする。□礒崎22
・縦書きの場合、別表の列を「1の項、2の項、3の項・・・」と呼ぶ。□礒崎22
・縦書きの場合、別表の行を「上欄、中欄、下欄」「第一欄、第二欄、第三欄、第四欄」と呼ぶ。見出しがある場合はそれに従う。例えば、家事事件手続法別表第一では「上欄=事項の欄」「下欄=根拠となる法律の規定の欄」である。□礒崎22
林修三『法令用語の常識』[1958]
道垣内弘人『プレップ法学を学ぶ前に』[2010]
礒崎陽輔『分かりやすい法律・条例の書き方〔改訂版〕』[2011]
法制執務用語研究会『条文の読み方』[2012]
角田禮次郎ほか編『法令用語辞典〔第10次改訂版〕』[2016]
外山秀行『法令実務基礎講座』[2017]