親の相続を放棄した子は、親を代襲して祖父母の相続人となるか

2016-03-03 22:59:13 | 相続法・相続税法

2021-11-16全訂。

【例題】祖父A、父B、子Cがいる。Bが死亡し、Cはその相続放棄をした。その後にAが死亡したが、CはAの代襲相続人となるか。

 

・民法887条2項の文言からは、Kが代襲するための要件は「①Bが既に死亡している、②CはBの子である、③CはAの孫である」のみ。素朴にこの文理にしたがえば、かつて「Xの相続放棄をした」としても、新たな代襲相続は認められる(はず)。

・以上の結論を明言するのが、中川善之助・泉久雄『相続法〔第3版〕』[1988]p146「代襲者は、被代襲者の子であることを要するだけで、その相続人であることを要しない。A(親)、B(子)、C(孫)のうち、Bが先死した場合、CがBに対し、欠格もしくは廃除によって相続権を失っており、またはBの相続を放棄したとしても、なおCはBを代襲してAを相続することができる。」。他方で、近時の代表的な体系書(潮見佳男編著『新注釈民法(19)』[2019]、潮見佳男『詳解相続法』[2018]、二宮周平『家族法〔第4版〕』[2013])には明示した箇所はない。古典を捨てられない理由である。

 

※旧記述

表題の問題をいままで考えたことがなかった。手持ちの教科書類(注民含む)にも記載がない。親切な方に、山形地判平成17・3・15(平成16年レ第17号貯金債権支払請求控訴事件)を教えていただく(ネットで検索するとPDFが出てくる。控訴人がアップした?)。Aが有していた郵便貯金に関し、Kがその払戻請求権を相続したとして郵政公社を訴えた事案。表題が争点となった。判旨は、次のロジックでこれを肯定した。たしかに、後述の廃除等に関する確定解釈とパラレルに考えれば、肯定説が採用されよう。

・代襲相続の要件を定める民法887条2項は、「被代襲者の子+被相続人の直系卑属+同時存在」とする。

・「親の相続を放棄した子が、放棄された親を代襲することを否定する規定」は民法にない。

・民法939条は、相続放棄の効力を当該被相続人の相続に関して相対的な効力を有するのみとする。

・例えば、子が被代襲者である親から廃除されたときでも、子は親を代襲して直系尊属である被相続人を相続できると解釈されているが、それは欠格や廃除の効果が相対的であるから。

→よって、Kが親Xを相続放棄していたとしても、それは「Xを代襲してAの相続人となる」ことを否定しない。

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