推定相続人が欠格事由(民法891条)に該当する行為を行うと,当然に相続資格を失う。被相続人等を殺害した者,詐欺・脅迫によって自分に有利な遺言をさせた者などが列挙され,常識的にも首肯できる。
ところが,同条1号を注意深く読むと,「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」とある。つまり,民法は,被相続人や他の推定相続人を殺害しても,行為時に心神喪失状態にあると判断されて不起訴処分や無罪判決が確定した者につき,依然として相続資格を失わせないとしているのだ。
刑法39条の妥当性をめぐり深刻な議論が存在することは周知のとおりである。とはいえ,現行法においても,刑事責任能力を欠くと判断された者がそのまま放置されているわけではなく,心神喪失者等医療観察法の適用を受ける(もちろん,同法の内容は実質的な保安処分であるといえるので,依然としてその妥当性は,刑罰論の観点から問題とされうるが)。
まとめると,被相続人を心神喪失状態で殺害した推定相続人は,刑事上は不可罰であるが,「特別予防」「本人の社会復帰」という思想から医療観察制度下に置かれる。他方,民事の相続資格については,責任能力を者にサンクションを科すことはできないで,影響を受けない。たしかに平仄はあっているが・・・
1 コメント
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- Unknown (Unknown)
- 2014-10-21 19:34:49
- 起訴猶予になると相続欠格事由にならないとは、全く驚くべきことだ!
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