是正勧告とは,労働基準監督官が事業所調査や臨検(立入検査)をした場合において,その事業所で労働法令違反に該当する事実を確認した時に行なわれる行政指導のことをいいます。
内容証明郵便での請求に対する回答は,内容証明郵便でする必要がありますか。
内容証明郵便での請求が届いたからといって,必ずしも必ずしも内容証明郵便で回答する必要はありません。特に,労働者側に代理人弁護士がついている場合は,回答書を代理人事務所宛FAXすれば足りるのが通常です。
万全を期すのであれば,通常のビジネスマナーと同様,回答書をFAXした後,代理人事務所に電話して回答書のFAXが届いたかどうかを確認し,メモに残しておくとよいでしょう。
もっとも,一定の内容の文書が一定の時期に相手方に届いたことを立証できるようにしておく必要性が高い事案については,内容証明郵便を配達証明又は配達記録付きで発送する必要があります。
会社を辞めた社員の代理人弁護士から内容証明郵便が届き,7日以内に回答するよう要求されていますが,今が会社の繁忙期ということもあり,間に合いそうもありません。2週間後の回答では遅過ぎますか。
一概には言えませんが,相手方から示された回答期限は必ずしも守る必要はないケースがほとんどです。一般論としては,しっかり準備して合理的期間内に回答すれば十分です。
もっとも,合理的間を超えて回答が遅れると訴訟や労働審判 を申し立てられてしまう可能性が高まりますので,合理的期間内に回答する必要はあります。回答の準備に時間がかかるようでしたら,その旨事前に連絡してから回答を準備することが望ましいところです。
2週間という期間であれば,回答に要する合理的期間内と評価できるケースが多いのではないでしょうか。
パワハラ・セクハラ問題に関し,実務上の留意点を教えて下さい。
パワハラ ・セクハラ 問題に関する実務上の留意点としては,以下のようなものが考えられます。
まず,第一に,業務指導の重要性を強調したいと思います。パワハラ・セクハラと言われるのを恐れて,必要な業務指導ができなくなるようなことがあってはなりません。
次に,コミュニケーションの重要性が挙げられると思います。上手にコミュニケーションが取れていないと,パワハラ・セクハラの問題が生じやすい傾向にあります。
パワハラ・セクハラ事案は,会話内容が無断録音されていることが多い傾向にあります。口頭の発言であれば,「言った言わないの話」で済むとは考えないで下さい。
違法なパワハラ・セクハラと評価されないための心構えとしては,会話内容が無断録音されていても支障がないような発言をすれば足ります。
平成27年6月15日に公表された「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」に関する調査結果を利用するに当たっての注意点を教えて下さい。
平成27年6月15日に公表された「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」に関する調査結果は,紛争解決システムの運用の実態の概要を理解するために参考にすることはできるかもしれません。
しかし,この調査結果は,あくまでも一般的傾向を公表しているに過ぎず,個別具体的事案では同調査結果における一般論とはかけ離れた結果になることも起こり得ます。
したがって,同調査結果は一般的傾向の理解に使うにとどめ,個別具体的事案の判断においては同調査結果に頼り過ぎないよう注意する必要があります。
個別事案の対応に当たって知る必要があるのは,当該個別事案の見込みであり,一般論では足りないのです。
②解雇,休職期間満了退職無効を理由とした地位確認請求の内容はどのようなものですか。
精神疾患 発症の原因が職場のパワハラ ・セクハラ の場合は,療養のための休業期間及びその後30日間は,原則として解雇 したり,休職期間満了退職扱いにしたりすることができません(労基法19条,同条類推)。
(解雇制限)
労基法19条 使用者は,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は,解雇してはならない。ただし,使用者が,第81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては,この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては,その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
また,事業場の閉鎖などに伴い退職勧奨 したところ退職勧奨に応じなかったため,別の事業場への転勤を命じたところ転勤に応じないため解雇したような事案で,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから,転勤命令権限の濫用で無効であり,転勤命令拒否を理由とする解雇も無効であるといった主張がなされることがあります。性的な要求に応じなかったことが理由であれば,セクハラの問題となります。
①安全配慮義務違反や不法行為(使用者)責任を理由とした損害賠償請求は,どのようなものですか。
使用者は,労働者の身体の安全等を確保しつつ働けるよう配慮する労働契約上の義務(安全配慮義務,労契法5条)を負っており,安全配慮義務に違反し,被害者に損害を与えた場合は,損害賠償義務を負うことになります(民法415条)。
また,従業員が不法行為法上の注意義務に違反して,パワハラ ・セクハラ により他の従業員に損害を与えた場合には,使用者は,被害者に生じた損害を賠償する責任(使用者責任)を負うことになります(民法715条)。
パワハラ・セクハラは,加害者と被害者の間だけの問題ではなく,使用者も紛争の当事者(被告)となるリスクを負っていることに留意する必要があります。
(労働者の安全への配慮)
労契法5条 使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。
(債務不履行による損害賠償)
民法415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。
(使用者等の責任)
民法715条 ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし,使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき,又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは,この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も,前項の責任を負う。
3 前2項の規定は,使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
パワハラ ・セクハラ を法的に分析する際の視点としては,「適法性」の問題と「適切性」の問題に分けて考える必要があります。
パワハラ・セクハラが問題とされる言動には,
① 違法な言動
② 適法だが不適切な言動
③ 適法かつ適切な言動
の3段階があります。
訴訟等において,損害賠償請求がなされた場合に問題となるのは①違法な言動か,②③適法な言動かであり,②不適切な言動か,③適切な言動かは副次的にしか問題となりません。②適法だが不適切な言動は数多く見られますが,①違法な言動とまで評価される言動はごく一部に過ぎません。「パワハラ・セクハラかどうか?」という問題設定がなされることが多いですが,程度の問題として考えた方が実態を正確にイメージすることができます。
パワハラ・セクハラを巡る紛争の実態は,どのようなものですか。
パワハラ ・セクハラ を巡る紛争の実態には,以下のような傾向があります。
① パワハラ・セクハラを不満に思い,公的機関などに相談している労働者の数は多いが,パワハラ・セクハラを理由とした損害賠償請求がメインの訴訟,労働審判はあまり多くなく,解雇無効を理由とした地位確認請求,残業代請求等に付随して,損害賠償請求がなされることが多い。
② 解雇無効を理由とした地位確認請求,残業代請求等に付随して,パワハラ・セクハラを理由とする損害賠償請求がなされた場合は,業務指導に必要のない不合理な言動をしているような場合でない限り請求棄却になりやすく,仮に不法行為責任等が認められたとしても慰謝料の金額は低額になりやすい。
いわゆる「セクハラ指針」は,「職場におけるセクシュアルハラスメント」を「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け,又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義しています。
「パワハラ 」は法律用語ではないこともあり,明確な定義はありません。
『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告』(平成24年1月30日)が,「職場のパワーハラスメントとは,同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」としているのが参考になると思います。