懲戒処分の手順を教えてください。また,懲戒事由及び種類にはどのようなものがありますか?
懲戒処分は以下の3つの手順を踏んでその適法性を判断していきます。
1 就業規則などにおける根拠規定の存在
就業規則に懲戒処分の規定がない企業,就業規則に定めがあってもこれを事業場の労働者に周知していない企業は,有効に懲戒処分をすることができません。
就業規則に定めることが考えられる懲戒事由は以下の通りです。
(1) 経歴詐称
(2) 業務命令違反
(3) 職場規律違反
(4) 無断欠勤など
(5) 会社物品の私用
(6) 私生活上の非行
(7) 二重就職・兼業規制
2 ② 懲戒事由該当性
具体的なケースによって判断していきます。
その際にはFAQ535 でも説明したとおり,事実経過を記載した始末書があると,有利な証拠になります。
3 懲戒処分の相当性
当該懲戒が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当とは認められない場合には無効になります。
その際には,非違行為の性質,態様や被処分者の勤務歴および当該同種の非違行為に対する懲戒処分についての先例等を総合的に判断していきます。
懲戒処分の種類は次のものが考えられます。
(1) 戒告・けん責
一般的に,戒告は始末書の提出を求めずに将来を戒めるもの,けん責は始末書の提出をさせて将来を戒めるものとされています。
(2) 減給
減給額について,労基法上の制限があるので注意してください(FAQ537 をご参照ください)。
一事案の減給額は平均賃金の1日分の半額以下,減給の総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下でなければなりません。
(3) 出勤停止・自宅待機命令
(4) 降格
(5) 諭旨解雇
(6) 懲戒解雇
4 最後に
懲戒解雇などの有効性が裁判で争われた際には,懲戒処分時に上記の3つのステップがきちんと踏まれていたかを審理していきます。そのため,懲戒処分時にどのような事実(証拠)に基づいて当該懲戒処分をしていたかが決定的に重要になります(処分時に懲戒事由としなかった事由を追加して主張することはできません)。
したがって,懲戒処分の検討段階からどのように証拠を残していくかを念頭に置きながら対策を練っていくことが必要です。
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