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減給の懲戒処分をする場合,減給できる額を使用者が自由に決めて良いのですか?

2016-03-29 | 日記

労働者が非違行為をしたことが分ったので,減給の懲戒処分をしたいと考えています。減給できる額を使用者が自由に決めて良いのですか?


第1 はじめに

 減給できる額には,労基法上の制限があるため,同法の範囲内で減給額を決定することになります。

 その制限とは次の通りです。

 一つの事案における減給額は平均賃金の1日分の半額以下

 減給の総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下

でなければなりません。

 この制限について懲戒処分の手順(FAQ536 )に沿って検討してみます。

第2 ケース検討

0 想定事例

(1) 非違行為発生日時

 平成○○年7月1日

(2) 賃金の締め日(賃金の締め日があるときはその直前の締め日から3か月を起算する)

 当該月の末日

(3) 総日数

 91日(4月~6月)

(4) 賃金

 月給30万円

1 就業規則などにおける根拠規定の存在

 就業規則に減給できる旨の規定があるかを確認します。

 たとえば,「始末書をとり将来を戒めるとともに賃金を減ずる。この場合,減給の額は一事案について平均賃金の1日分の半額とし,複数事案に対しては減給の総額が当該賃金支払期間における賃金総額の10分の1を超えないものとする」という規定が考えられます。このように,減給の際には始末書も提出させる旨定めることもあります。

2 懲戒事由該当性

 懲戒事由に該当するかは,客観的な証拠から認定できるかを軸に検討していきます。

 実際にはここでの証拠収集や認定作業(手続)を抜かりなくやっていくことが重要です。

 客観的な証拠は,後に事実の有無が争われた際に,懲戒事由に該当する事実があると主張する際に重要な証拠になります。

3 懲戒処分の相当性

 当該減給が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当とは認められない場合には無効になります。

 その際には,非違行為の性質,態様や被処分者の勤務歴および当該同種の非違行為に対する懲戒処分についての先例等を総合的に判断していきます。

 労基法のルールは,一つの事案における減給額は「平均賃金の1日分」の「半額以下」というものです()。

(1) 平均賃金の計算方法

ア 計算式

計算式

イ あてはめ

あてはめ

(2) 減給額

ア 平均賃金の1日分÷2=減給額()

イ 9890円÷2=4945円

(3) 他のケースの場合( 減給の総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下)

 仮に同じ月に7事案の非違行為をした場合

 4945円×7事案=3万4615円を減給できるか??

ア 一賃金支払期の賃金総額×0.1(10分の1)=減給の総額()

イ 30万円×0.1=3万円までが減給できる範囲になります。

 したがって,3万円を超える減給はできず,それを超える部分(4615円)は次回の賃金支払期以降に減額していくことになります。

第3 最後に

1 「減給」とは?

 以上説明してきた懲戒処分としての「減給」とは,労務遂行上の懈怠や職場規律違反に対する「制裁として」賃金額から一定額を差し引くことをいいます。

 これと区別すべきものとしては,たとえば,配転による職務内容の変更に伴って賃金が低額に変更される場合があります。

 また,人事考課における低査定の結果,基本給や賞与の額が低額になることは賃金の計算方法に過ぎず,「減給」には該当しません。

 さらに,遅刻,早退,欠勤に対する賃金の差引は,現に労働しなかった事案に相当するだけの差し引きであれば賃金の計算方法に過ぎず,「減給」には該当しません(不就労時間に相当する賃金額以上の差し引きであれば,超過部分につき「減給」に該当します)。

2 国家公務員の場合

 なお,国家公務員については,「1年以下の期間,俸給の月額の……5分の1以下に相当する額を,給与から減ずる」定めがありますが,このような措置をとることは労基法上は許されていません。


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