弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

労働審判で相手方代理人弁護士が答弁書を期限までに提出できないことがある理由

2010-10-12 | 日記
労働審判において,相手方代理人弁護士が答弁書を期限までに提出できないことがあります。
これに対し,期限までに答弁書を提出するのは当然のことであるという意見が多いですが,なぜ,期限までに答弁書を提出できないことがあるのでしょうか?

まず,そもそも,答弁書提出期限を過ぎてから,労働審判の対応の依頼を受けることがあります。
依頼を受けた時点で期限が過ぎているのですから,当然,提出期限には間に合いません。
また,答弁書提出期限は過ぎていなくても,答弁書提出期限の2~3日前に労働審判の対応の依頼を受けることがあります。

私は,答弁書提出期限を過ぎてから依頼を受けた事案で,依頼を受けたその日(事務所が休みとなる土曜日)に答弁書を完成させ,即日,答弁書を裁判所に発送したことがありますが,弁護士は通常,当日から数日分は予定が詰まっていますので,そのような例外的な対応は極めて困難です。
私も,土曜日に相談を受けることは,通常は行っていません。
証拠がその場にそろっておらず,即日,答弁書を起案したのでは,十分な反論立証が難しいケースも多いことと思います。

答弁書提出期限を守れないことを問題視する意見の中には,このような状況を理解していないと思われるものが多くあります。
どうも,労働審判の申立書が相手方会社に届いてから3週間くらいは時間があるのだから,当然,答弁書を期限までに提出できるのだと思い込んでいる人が多いようです。
その結果,「相手方会社が限られた期間で準備することが大変なのは『理解』しているが,答弁書提出期限を守るのは当然である。弁護士がついているのに,提出期限を守らないなんて,理解できない。そんなこと,一般社会では通用しない。」といったコメントがなされるのだと思います。
これでは,「理解」が不十分と言わざるを得ません。

現実には,申立書が相手方会社に届いてから相手方代理人弁護士のところに相談に来るまでには,(特に,顧問弁護士のいない中小零細企業の場合)相当のタイムラグがあります。
上記のとおり,提出期限を過ぎてから相談を受けることもありますし,提出期限直前に相談を受けることはザラにあります。
申立書作成提出の場面とは,事情が大きく異なるのです。
相手方代理人弁護士が依頼を受けてから2週間以内に答弁書を提出すれば足りるというのであれば,労働事件に慣れた弁護士であれば,たいていは問題が生じないのでしょうけどね。

では,どのような処方箋が必要となるのでしょうか?
私は,相手方会社が弁護士への相談を申立書が届いてからすぐにする必要があるということを,周知徹底することが,何よりも重要だと思います。
この周知徹底を怠っている状態で,相手方会社を非難しても始まりません。
私も,微力ながら,「労働審判手続申立書が裁判所から届いたら,すぐに弁護士に相談して下さい。理由は…です。」といった広報活動を行うことで,より円滑な労働審判手続の実施に貢献していきたいと考えています。

企業担当者の方,ぜひ,労働審判手続申立書が会社に届いたら,すぐに弁護士に相談するようにして下さい!!
労働審判手続では,訴訟の場合のような猶予はありません。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 法定休日の定めがない場合に... | トップ | 労働審判の調停条項における... »
最新の画像もっと見る

日記」カテゴリの最新記事