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協調性がない。

2016-02-15 | 日記

協調性がない。

 

1 協調性のなさの程度
 協調性がないといっても程度問題であり,通常許される個性の範囲内に収まっている程度の問題なのか,それとも,社員としての適格性が問われ,又は企業秩序を阻害するものなのかを見極める必要があります。よく検討しないまま主観的に協調性がないと決めつけてしまうのは危険です。周囲の社員に問題があることもあるので,客観的に判断するためにも,本人の言い分もよく聴取して事実確認をする必要があります。

2 注意指導
 協調性のない社員の対処法としては,注意指導して,周囲と協調性を保つことの重要性を理解させることが何よりも重要です。
 口頭で注意指導しても改善しない場合は,書面で注意指導する必要がある場合もあります。書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟になった場合,協調性のなさを注意指導した証拠を確保することもできます。訴訟では,労働者側から,十分な注意指導を受けていないから解雇は無効であるといった主張がなされることが多くなっています。口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,十分な注意指導をしたことを立証するのが困難となってしまいます。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。

3 配置転換
 配転の余地があるのであれば,協調性がないとされている社員を別の部署に配転させ,配転先でもやはり協調性がないのか確かめてみた方が無難です。周囲の社員に問題があることもあり,配転先では協調性がないとは評価されない可能性があります。他方,配転先でも協調性がないために周囲との軋轢が生じるようであれば,本人に問題がある可能性が高いと言わざるを得ません。

4 懲戒処分
 書面で注意指導しても改善しない場合は,懲戒処分を検討せざるを得ません。まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていくことになります。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者は珍しくありませんが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのでは社員にとって不意打ちになりトラブルになりやすいですし,悪質な事情がない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高くなります。
 そもそも,協調性のない問題社員に対して注意指導や懲戒処分等ができないようでは,かえって周囲の社員が迷惑を被って職場の雰囲気が悪くなってしまい,場合によっては退職者が続出することになりかねません。問題点があるのに十分な注意指導もできず,懲戒処分にもできず,いきなり解雇するほかないというのでは,コミュニケーション不足の職場と言うほかありません。必要な注意指導や懲戒処分を行うとともに,職場の雰囲気を良くするためにリーダーシップを発揮するのは,会社経営者の責任です。

5 解雇の検討項目
 注意指導し,懲戒処分等に処しても著しい協調性のなさが改善せず,改善の見込みが極めて低い場合には,解雇や退職勧奨を検討することになります。解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
 ① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
 ② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)に当たらないか
 ③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
 ④ 解雇が法律上制限されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。

6 解雇権濫用・懲戒権濫用
 解雇が有効となるためには,単に①就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく,②客観的に合理的な理由が必要ですし,社会通念上相当なものである必要もあります。解雇に客観的に合理的な理由がない場合は,そもそも①解雇事由に該当しないだとか,②解雇権又は懲戒権を濫用したとして,無効となってしまいます。
 解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど協調性のなさの程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要です。解雇が社会通念上相当であるというためには,労働者の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等),他の労働者の処分との均衡,使用者側の対応・落ち度等に照らして,解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
 協調性を欠くことを理由とする解雇が客観的に合理的なものであるかどうかを判断するにあたっては,協調性が特に必要とされる業務内容,職場環境かどうかという点を考慮する必要があり,チームワークが重視される共同作業が多い業務内容なのか,少人数の職場なのか等を検討する必要があります。
 注意指導,懲戒処分等で協調性のなさが改善されるのであれば,注意指導や懲戒処分で改善させればいいのですから,解雇権濫用・懲戒権濫用の有無を判断するにあたっても,注意指導,懲戒処分等では著しい協調性のなさの改善が期待できないかどうかが問題となります。客観的な証拠がないのに,注意指導や懲戒処分等をしても改善の見込みがないと思い込んで解雇するケースが散見されますが,客観的証拠から改善の見込みがないことを立証できる場合でない限り,実際に注意指導や懲戒処分等を行って改善の機会を与えた上で,職場から排除しなければならないほど協調性のなさの程度が甚だしく,注意指導や懲戒処分では改善される見込みがないことを確かめてから,解雇に踏み切るべきでしょう。


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就業規則には,懲戒処分として行う出勤停止の日数としてどれくらいの日数を定めておくのがお勧めですか

2016-02-15 | 日記

就業規則には,懲戒処分として行う出勤停止の日数として,どれくらいの日数を定めておくのがお勧めですか。


 国家公務員の懲戒について規定している「人事院規則一二―〇(職員の懲戒)」は,第2条において,「停職の期間は、一日以上一年以下とする。」と定めています。
 これを参考に考えると,出勤停止の日数としては,「1日以上1年以下」が穏当と思われます。

 出勤停止の日数として,最長7日程度までの規定となっている就業規則をよく見かけます。
 しかし,それでは,出勤停止よりも重い懲戒処分として規定されているのは,降格,諭旨解雇(退職),懲戒解雇 くらいのことが多く,7日間の出勤停止処分を受けてもなお,非違行為が改善されない場合,あっという間に退職の効果を伴う重大な懲戒処分に踏み切らざるを得ないことになりかねません。
 7日間の出勤停止処分と諭旨解雇(退職),懲戒解雇との間には,懲戒処分の重さとして,大きなギャップがあるように思います。
 事案に応じた適切な重さの懲戒処分を行えるようにするためには,出勤停止の日数で懲戒処分の重さを調整できる幅を十分に取っておいた方が良いのではないでしょうか。
 出勤停止の日数を最長1年としたのではいくら何でも長過ぎるとお考えの場合であっても,6か月程度は無給の出勤停止とすることができるよう,就業規則に規定しておくことをお勧めします。


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年休を消化することが困難なため,年休の買い上げをしようと思っているのですが,問題はありますか?

2016-02-15 | 日記

年休(有給休暇)について,当社は従業員が少ないこともあって,なかなか年休を消化してもらうことが困難なため,実際にはその年の年休を消化しない代わりに,その日数分を支払っています(年休の買い上げ)。この方法になにか問題はありますか?


 使用者が未消化の年休を買い上げることはできず,そのような扱いは労基法違反になります。

 なぜ労基法違反になるかと言いますと,年休制度の目的は労働者を休ませ心身のリフレッシュを図り,また,自己啓発の機会をもつことを可能にすることにあるところ,年休の買い上げは,この目的に反するからです。

 ただし,既に時効消滅した年休,法定外の年休,退職時に未消化の年休を買い上げることは労基法違反にはなりません。

 なお,年休権は2年の消滅時効にかかり,1年に限り繰り越しが認められる(発生から2年で消滅する)ものと解されています。


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36協定を締結するにあたり,延長できる労働時間に限度はありますか?

2016-02-15 | 日記

時間外労働及び休日の労働をさせるために36協定を締結したいのですが,延長できる労働時間の限度はあるのですか?もしこれに違反した場合にはどうなりますか?


 労使協定で定めた延長可能な労働時間または以下の厚生労働省が定めている延長時間の限度を超えた場合には,労基法違反となり,6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

 また,この罰則には両罰規定が定められています。つまり,法律違反をした者(例えば,支配人や法人の代表者など)だけではなく,個人企業の場合は個人事業主,法人の場合はその法人そのものも処罰の対象となる可能性があります。

 なお,違法な時間外労働であっても,その時間の割増賃金を支払う必要があります。

 平成27年4月に厚生労働省が、東京労働局と大阪労働局に「過重労働撲滅特別対策班(通称,かとく)」を設置しました。

 これにより,過重労働による健康被害の防止を目的として、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導が行われていくことが予想されます。

 延長時間の限度について

① 一般の労働者の場合

期間     限度時間

1週間    15時間

2週間    27時間

4週間    43時間

1か月    45時間

2か月    81時間

3か月   120時間

1年間   360時間

 

② 対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者の場合

期間     限度時間

1週間    14時間

2週間    25時間

4週間    40時間

1か月    42時間

2か月    75時間

3か月   110時間

1年間   320時間


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