弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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普通解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,どのような事情が必要となりますか?

2015-01-09 | 日記

普通解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,どのような事情が必要となりますか?


 普通解雇 に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど能力不足,勤務態度不良,業務命令違反等の程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要となります。
 会社経営者が主観的に解雇 する必要があると判断しただけでは足りません。
 通常は,客観的に合理的な理由の存在を証明するための客観的証拠が必要となります。
 会社関係者の証言,陳述書も証拠となりますが,証明力が低く評価される傾向にあります。

 


懲戒解雇事由に該当する事実が存在する場合であっても,懲戒解雇せずに普通解雇することはできますか?

2015-01-09 | 日記

懲戒解雇事由に該当する事実が存在する場合であっても,懲戒解雇せずに普通解雇することはできますか?


 普通解雇 の有効要件を満たすのであれば,懲戒解雇事由に該当する事実が存在する場合であっても,懲戒解雇 せずに普通解雇することができます。
 高知放送事件最高裁昭和52年1月31日判決は,「就業規則所定の懲戒事由にあたる事実がある場合において,本人の再就職など将来を考慮して懲戒解雇に処することなく,普通解雇に処することは,それがたとえ懲戒の目的を有するとしても,必ずしも許されないわけではない。」としています。


就業規則に規定する普通解雇事由以外の理由に基づき,普通解雇することはできますか?

2015-01-09 | 日記

就業規則に規定する普通解雇事由以外の理由に基づき,普通解雇することはできますか?


 就業規則が存在する会社については,就業規則に規定された普通解雇事由に基づいてのみ普通解雇 できるとする見解と,就業規則に規定されていない解雇事由によっても普通解雇できるとする見解があり,現時点では論争に決着がついていません。
 この論争に巻き込まれないようにするため,「その他,前各号に準じる事由があるとき。」といった包括的な条項を普通解雇事由として規定しておくようにして下さい。


就業規則がない会社でも普通解雇することができますか?

2015-01-09 | 日記

就業規則がない会社でも普通解雇することができますか?


 就業規則がない会社でも,民法627条に基づき普通解雇 することができます。
 懲戒解雇 が,就業規則がない場合には原則として行うことができないのとは対照的です。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において,雇用は,解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には,解約の申入れは,次期以後についてすることができる。ただし,その解約の申入れは,当期の前半にしなければならない。
3 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には,前項の解約の申入れは,3か月前にしなければならない。


普通解雇の有効性を判断するに当たっては,どのような事項を検討する必要がありますか?

2015-01-09 | 日記

普通解雇の有効性を判断するに当たっては,どのような事項を検討する必要がありますか?


 普通解雇 の有効性を判断するにあたっては,
 ① 就業規則の普通解雇事由に該当するか
 ② 解雇権濫用(労契法16条)に当たらないか
 ③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
 ④ 解雇 が法律上制限されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。


普通解雇とはどのような解雇をいいますか?

2015-01-09 | 日記

普通解雇とはどのような解雇をいいますか?


 普通解雇 (狭義)とは,能力不足,勤務態度不良,業務命令違反等,労働者に責任のある事由による解雇 のことをいいます。
 普通解雇(広義)は,普通解雇(狭義)に整理解雇 (使用者側の経営上の理由による解雇)を加えたものをいうのが一般的です。
         普通解雇(広義)=普通解雇(狭義)+整理解雇


解雇が法律上制限されている場合には,どのようなものがありますか?

2015-01-09 | 日記

解雇が法律上制限されている場合には,どのようなものがありますか?


 解雇 が法律上制限されている主な場合としては,以下のようなものがあります。
 ① 国籍,信条又は社会的身分による差別的取扱いの禁止(労基法3条)
 ② 公民権行使を理由とする解雇の禁止(労基法7条)
 ③ 業務上の負傷・疾病の休業期間等,産前産後休業期間等の解雇制限(労基法19条)
 ④ 性別を理由とする差別的取扱いの禁止(男女雇用機会均等法6条4号)
 ⑤ 婚姻,妊娠,出産,産前産後休業を理由する不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条)
 ⑥ 育児休業,介護休業,子の看護休暇,所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限,所定労働時間の短縮措置の申出等を理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(育児介護休業法10条,16条,16条の4,16条の9,18条の2,20条の2,23条の2)
 ⑦ 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止(パートタイム労働法8条)
 ⑧ 都道府県労働局長に対し個別労働関係紛争解決の援助を求めたこと,あっせんを申請したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(個別労働関係紛争解決促進法4条3項,5条2項)
 ⑨ 法違反を監督官庁(労基署等)に申告したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いの禁止(労基法104条2項,最低賃金法34条2項,安衛法97条2項,賃確法14条2項等)
 ⑩ 公益通報したことを理由とする解雇の無効(公益通報者保護法3条)
 ⑪ 不当労働行為の禁止(労働組合法7条)


解雇予告後退職前の社員の管理に関する注意点を教えて下さい。

2015-01-09 | 日記

解雇予告後退職前の社員の管理に関する注意点を教えて下さい。


 解雇 予告された社員は,自己都合退職した社員以上に,働くモチベーションが下がりがちです。モチベーションの下がった社員の対応により,業務に重要なミスが発生したり,顧客から苦情が寄せられたりすることがないよう,原則として引継業務やアルバイトでもできるような責任の軽い業務のみを行わせ,正社員でなければ任せられないような重要な業務からは外すべきでしょう。年休消化の希望があれば年休を消化させたり,最低限の引継に必要な時間を除いて転職活動をすることを容認したりして,最低限の引継業務以外は就労を免除するといった措置をとってもいいかもしれません。 
 また,解雇予告された社員の中には,機密情報を不正に持ち出したり,消去したりする者もいますので,不審な行動がないか,上司が監督する必要があります。機密情報を不正に持ち出したり,消去したりするのを防止するため,原則として会社のパソコンは使わせず,どうしても必要な場合は,上司の監視の下,パソコンを使用させるといった対応をするのが望ましいところです。
 機密情報保護の必要性が特に高い担当業務の場合は,
 ① 解雇予告後は,年休消化の希望があれば年休を消化させたり,最低限の引継に必要な時間を除いて就労義務を免除し転職活動をすることを容認したりして,機密情報にはアクセスさせない
 ② 解雇予告するのではなく30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払って即時解雇し,パソコン等に触れさせないまま,最低限の私物を持たせて退社させ,残った私物は宅配便で自宅に発送する
といった配慮が必要なケースもあると思われます。


30日前に解雇を予告した上で,平均賃金30日分の解雇予告手当を支払えば問題ないでしょうか?

2015-01-09 | 日記

社員を解雇するに当たり,30日前に解雇を予告した上で,平均賃金30日分の解雇予告手当を支払おうと思います。これで問題ないでしょうか?


 貴社の対応で労基法上問題があるわけではないのですが,解雇 予告義務(労基法20条)に関し,誤解があるように思えます。
 労基法20条1項本文が要求しているのは,
 ① 30日前の解雇予告
 ② 30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払
のいずれかです。つまり,①②いずれかをすれば足り,両方を行う必要はありません。
 ①30日前に解雇予告した場合は,②解雇予告手当の支払は不要です。この場合,解雇予告から30日間は労働契約が存続していますから,退職までの期間は当該社員に仕事をするよう命じることができます。
 ②30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払った場合は,即時解雇しても労基法20条には違反しません(民事上,解雇が有効かどうかは,別問題です。)。
 なお,解雇予告の日数は,平均賃金を支払った日数分短縮することができますから(労基法20条2項),
   解雇予告から解雇までの日数+解雇予告手当として支払われた平均賃金の日数≧30日
であればよいことになります。例えば,解雇日の15日前に解雇予告するのであれば,解雇日までに15日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払えば労基法20条には違反しないことになります。


解雇した覚えがないのに出社しなくなった労働者から,解雇予告手当を支払えと請求された場合

2015-01-09 | 日記

解雇した覚えがないのに出社しなくなった労働者から,口頭で即時解雇されたから解雇予告手当を支払えと請求されています。どう対応すればいいでしょうか?


 使用者は解雇 した覚えがないのに,出社しなくなった労働者から,口頭で即時解雇されたとして解雇予告手当の請求を受けることがあります。このような主張がなされる一番の原因は,出社しなくなった社員に対し出勤を催促したり,退職届を取得するのを怠ったりしたことにあります。
 突然,出社しなくなった社員に対しては,必ず出勤を催促して下さい。まずは電話を掛け,それでも出勤しない場合には,電子メールや書面での催促をすることになります。
 本人が,会社を辞めると口頭で言ってきた場合は,必ず退職届を提出させるようにして下さい。自分から会社を辞めると言っておきながら,退職届を提出していないのをいいことに,解雇されたと後から言い出す問題社員が後を絶ちません。
 退職届が提出されている事案,退職勧奨 もしていないのに勝手に自己都合で辞めたいと言い出した労働者が解雇予告手当の請求をしてきたような悪質な事案等の場合は,最後まで解雇予告手当の支払を拒絶するのが原則的対応です。他方,退職勧奨により辞めてもらうようなケースで,退職届の提出もないような事案については,辞めてもらうために必要なコストだと思って,退職合意書を作成し,署名押印させた上で,解雇予告手当相当額程度は支払ってあげて解決することもあります。


雇入れから14日以内であれば,自由に解雇できますよね?

2015-01-09 | 日記

雇入れから14日以内であれば,自由に解雇できますよね?


 この質問は,労基法21条が,解雇予告義務の適用がない労働者として,「試の使用期間中の者」を規定しつつ,14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告義務の適用がある旨を定めていることから生じた誤解と思われますが,労基法21条は,解雇予告義務の適用がない労働者について規定した条文に過ぎず,同条の定める解雇予告義務の適用がない労働者に該当したからといって直ちに解雇が有効になるものではありません。
 雇入れから14日以内の労働者を解雇 した場合であっても,解雇に客観的に合理的な理由がなかったり,解雇が社会通念上相当でなかったりすれば,解雇権を濫用したものとして解雇は無効になります(労契法16条)。
 また,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間の解雇,女性労働者の妊娠,出産,産前産後休業等を理由とする解雇,労働基準法違反の申告を監督機関にしたことを理由とする解雇,性別を理由とする解雇,不当労働行為の不利益取扱いとなる解雇,公益通報をしたことを理由とする解雇等,一定の場合については,法律上解雇が制限されており,これらに反する解雇は無効となります。
 雇入れから14日以内の労働者を解雇する場合は,勤務期間が短いだけに,解雇に客観的に合理的理由があることを立証するための客観的証拠が不足しがちであり,むしろ,よほど明白な解雇理由があるような場合でない限りは,解雇が無効と判断されるリスクが高いように思えます。
 早期に和解や調停が成立した場合には和解金の額が低めになりやすいですが,和解や調停が成立せず,判決に至ったような場合には,思いの外高額の賃金の支払を命じられることがあります。