弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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退職勧奨するより解雇してしまった方が,話が早いのではないですか?

2015-01-26 | 日記

退職勧奨するより解雇してしまった方が,話が早いのではないですか?


 社員を有効に解雇 するためには,客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要ですので,そう簡単に解雇に踏み切るわけにはいきません。
 勤続年数が長い正社員や幹部社員の解雇事案では,毎月支払われる賃金額が高額になる結果,仮に解雇が無効であった場合のバックペイの金額が高額となることなどから,解決金の相場も高額になりがちで,解雇が無効とされた場合のダメージも大きくなります。
 一般論としては最後の最後まで解雇は行わず,社員から任意に退職届を提出してもらえるよう努力すべきです。
 退職届の提出があった場合であっても,退職勧奨 の違法を根拠に,損害賠償請求を受けたり,退職の無効を主張されたりするリスクはゼロではありませんが,退職届も取らずに,一方的に解雇した場合と比べると,格段にリスクが低下することは疑いありません。


退職勧奨と解雇の違いを教えて下さい。

2015-01-26 | 日記

退職勧奨と解雇の違いを教えて下さい。


 解雇 は,労働契約を終了させる使用者の一方的意思表示ですので,解雇の有効要件を満たせば,労働者の同意がなくても労働契約終了の効果が生じることになります。
 退職勧奨 は,使用者が労働者との間で合意退職により労働契約を終了させようとするものですので,労働者の合意があって初めて労働契約終了の効果を生じることになります。


合意退職に関する紛争にはどのようなものが多いですか。

2015-01-26 | 日記

合意退職に関する紛争にはどのようなものが多いですか。


 合意退職には,使用者側から何らの働きかけがないのに,労働者の側から退職願の提出があり,退職日を決めて退職するというものもありますが,このような事案の合意退職に関する紛争は多くありません。
 紛争となりやすいのは,使用者から労働者に対して退職を働きかけ(退職勧奨 ),合意により退職させようとする事案です。


辞表を提出してきた社員が引継を拒絶し,退職日までの全労働日について有休の取得申請をしてきた場合

2015-01-26 | 日記

一方的に辞表を提出して辞職する旨申し出た社員が仕事の引継ぎを拒絶し,退職日までの全労働日について年次有給休暇の取得申請をしてきました。どのように対応すればよろしいでしょうか。


 年休取得に使用者の承認は不要であり,労働者がその有する休暇日数の範囲内で,具体的な休暇の始期と終期を特定して時季指定をしたときは,適法な時季変更権の行使がない限り,年次有給休暇が成立し,当該労働日における就労義務が消滅します。
 使用者が,社員の年休取得を拒むことができるというためには,時季変更権(労基法39条5項)を行使できる場面でなければなりませんが,時季変更権の行使は,「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては,他の時季にこれを与えることができる。」(労基法39条5項)とするものに過ぎず,年休を取得する権利自体を奪うことはできません。退職後に年休を与えることはできませんので,退職までの全労働日の年休取得を申請された場合,よほど信義則に反するような事情がない限り,使用者は時季変更権の行使ができず,退職日までの年休取得を拒絶することはできないものと考えられます。昭和49年1月11日基収5554号も,「年次有給休暇の権利が労働基準法に基づくものである限り,当該労働者の解雇予定日をこえての時季変更は行えないものと解する。」としています。
 引継ぎをしてもらわなければ業務に支障が生じることもあり得ますが,法的にはやむを得ないケースがほとんどと思われます。退職する社員とよく話し合って,年休買い上げの合意をするか,退職日を先に延ばす合意をするなどして,引継ぎをするよう説得するほかありませんが,合意退職の申出ではなく,一方的に辞職を申し出てきたような場合は,話し合いが難しいかもしれません。


契約期間3年の契約社員が勤務開始1年半で辞めたいと言い出してきた場合,拒絶することはできますか?

2015-01-26 | 日記

契約期間3年の契約社員が勤務開始1年半で辞めたいと言い出し,退職届を提出してきました。退職を拒絶することはできますか。


 労基法137条は,所定の措置が講じられるまでの間は,労働者は,1年を超える契約期間を定めた場合であっても,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの,労基法14条1項1号2号の専門的な知識等を有する労働者等を除き,契約期間の初日から1年を経過した日以後は,いつでも退職できるものとしています。
 このFAQを執筆している時点では,所定の措置は講じられていませんので,貴社の契約社員が,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの,労基法14条1項1号2号の専門的な知識等を有する労働者等に該当する場合を除き,契約期間中の退職であっても,拒絶することはできないことになります。


有期労働契約であれば,契約期間途中で労働者が一方的に辞職するのを防止することができますか。

2015-01-26 | 日記

有期労働契約であれば,契約期間途中で労働者が一方的に辞職するのを防止することができますか。


 有期労働契約においては,本来,「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても,やむを得ない事由があるときは,各当事者は,直ちに契約の解除をすることができる。この場合において,その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは,相手方に対して損害賠償の責任を負う。」と定める民法628条に規制され,やむを得ない事由がなければ契約期間満了前には退職できないのが原則です。
 もっとも,期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き,その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(労基法14条1項各号に規定する労働者を除く。)は,民法628条の規定にかかわらず,当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後は,使用者に申し出ることにより,いつでも退職することができます(労基法137条)。
 また,労基法137条が適用されない事案であっても,有期労働契約者の就業規則に一定の期間(例えば,14日前とか,30日前)に申し出れば退職できる旨就業規則に規定されていれば契約期間満了前に退職することができます。
 有期契約労働者が使用者に退職希望の意思を伝えて欠勤を続けた場合,賃金の欠勤控除をしたり,懲戒処分に処したりすることはできるかもしれませんが,強制的に働かせることはできません。損害賠償請求ができるかどうかは一概には言えませんが,仮に損害賠償請求が認められたとしても費用対効果が悪いケースが多いように思えます。


使用者が退職を承認(受理)しなかった場合,労働契約は存続しますか。

2015-01-26 | 日記

正社員が一方的に退職を宣言して出社しなくなったのに対し,使用者が退職を承認(受理)しなかった場合,労働契約は存続しますか。


 期間の定めのない労働契約の場合,労働者から使用者に対し辞職の意思表示が到達すれば,使用者が労働者の退職を承認(受理)しなくても,民法627条所定の期間が経過することにより退職の効力が生じます。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において,雇用は,解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には,解約の申入れは,次期以後についてすることができる。ただし,その解約の申入れは,当期の前半にしなければならない。

3 6か月以上の期間によって報酬を定めた場合には,前項の解約の申入れは,3か月前にしなければならない。


社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまった場合,どのように対応すればよろしいでしょうか?

2015-01-26 | 日記

社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまったような場合,どのように対応すればよろしいでしょうか。


 社員が口頭で会社を辞めると言って出て行ってしまったような場合,退職届等の客観的証拠がないと口頭での合意退職が成立したと会社が主張しても認められず,解雇 したと認定されたり,合意退職も成立しておらず解雇もされていないから労働契約は存続していると認定されたりすることがあります。
 退職の申出があった場合は口頭で退職を承諾するだけでなく,退職届を提出させて退職の申出があったことの証拠を残しておいて下さい。印鑑を持ち合わせていない場合は,退職届に署名したものを提出させれば足ります。後から印鑑を持参させて面前で押印もさせることができればベターです。
 出社しなくなった社員が退職届を提出しない場合には,電話,電子メール,郵便等を用いて,
 ① 退職する意思があるのであれば退職届を提出すること
 ② 退職する意思がないのであれば出勤すること
を要求して下さい。放置したままにしておくのはリスクが高いです。特に,解雇通知書や解雇理由証明書を交付するよう要求してきたら要注意です。