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転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性が争われた場合,主に何が問題となりますか?

2015-01-16 | 日記

転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性が争われた場合,主に何が問題となりますか?


 転勤命令違反を理由とした懲戒解雇 の有効性が争われた場合,
① 転勤命令権限の有無(勤務地限定特約の有無)
② 転勤命令が濫用されたと評価できるかどうか
③ 懲戒解雇が懲戒権の濫用(労契法15条)に当たるかどうか
が主に問題となります。


懲戒解雇と退職金不支給の関係について,教えて下さい。

2015-01-16 | 日記

懲戒解雇と退職金不支給の関係について,教えて下さい。


 懲戒解雇 事由に該当する場合を退職金の不支給・減額・返還事由として規定しておけば,懲戒解雇事由がある場合で,当該個別事案において,退職金不支給・減額の合理性がある場合には,退職金を不支給または減額したり,支給した退職金の全部または一部の返還を請求したりすることができます。
 退職金の不支給・減額事由の合理性の有無は,労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全額不支給の場合)又は減殺(一部不支給の場合)するほどの著しい背信行為があるかどうかにより判断されます。
 懲戒解雇が有効な場合であっても,労働者のそれまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信行為はない場合は,例えば,本来の退職金の支給額の30%といった金額の支払が命じられることがあります。


懲戒解雇・諭旨解雇・諭旨退職等の退職の効果を伴う懲戒処分を検討する際の注意点を教えて下さい。

2015-01-16 | 日記

懲戒解雇・諭旨解雇・諭旨退職等の退職の効果を伴う懲戒処分を検討する際の注意点を教えて下さい。


 懲戒解雇 ・諭旨解雇・諭旨退職等の退職の効果を伴う懲戒処分については,懲戒権濫用の有無が厳格に審査され,紛争となりやすい傾向にあります。
 特に,退職金が不支給・減額とされる場合には,訴訟で争われるリスクがさらに高くなります。
 退職の効果を伴う懲戒処分は,特に慎重に行う必要があり,特に退職金が不支給・減額される事案であれば,訴訟で争われることを覚悟した上で,懲戒処分に踏み切るくらいの心構えが必要だと思います。
 このようにアドバイスすると,あたかも重い懲戒処分をしないよう言っているように聞こえるかもしれませんが,そうではありません。
 事案に応じた適切な懲戒処分は必要であり,重大な問題行動を行った社員については,懲戒解雇等の懲戒処分に処し,退職金を不支給又は減額にする必要があります。
 大事なのは,これから行おうとする処分のリスクを理解し,見通しを立ててから懲戒処分等に踏み切ることです。
 争われるのが怖くて必要な懲戒処分ができなかったり,リスクを具体的に理解せずに見通しが立たないまま何となく懲戒解雇等を行ったりといった事態にならないようにする必要があります。
 リスクを具体的に理解し,見通しを立ててから懲戒解雇・諭旨解雇・諭旨退職等の退職の効果を伴う懲戒処分を行ったことにより紛争が発生したとしても,予定どおりの経過をたどり予定どおりの結末で終わるのであれば,もはや「リスク」と評価することすらできないようにも思えます。


懲戒解雇の懲戒権濫用の有無を判断する際,どのような要素が考慮されますか?

2015-01-16 | 日記

懲戒解雇の懲戒権濫用の有無を判断する際,どのような要素が考慮されますか?


 懲戒解雇 の懲戒権濫用の有無を判断するにあたっては,規律違反行為により職場から排除しなければならないほど職場秩序を阻害したのかが問題となり,
① 規律違反行為の態様(業務命令違反,職務専念義務違反,信用保持義務違反等)
② 程度,回数
③ 改善の余地の有無
等が考慮されることになります(労働事件審理ノート参照)。


社員の非違行為が懲戒解雇事由に該当する場合であっても,懲戒解雇が無効となることがありますか?

2015-01-16 | 日記

社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当する場合であっても,懲戒解雇が無効となることがありますか?


 労契法15条は,「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と規定しています。
 したがって,社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当するように見える場合であっても,懲戒解雇 が,客観的に合理的な理由を欠いたり,社会通念上相当でなかったりした場合は,懲戒権を濫用したものとして無効となります。


まずは戒告処分をし,反省の色が見られないようなら懲戒解雇しようと思うのですが問題ないでしょうか?

2015-01-16 | 日記

まずは戒告処分をしてみて,反省の色が見られないようなら,同じ事実を理由として懲戒解雇しようと思うのですが,問題ないでしょうか?


 懲戒処分の有効性は,一事不再理の原則を考慮して判断されるため,懲戒処分を行った事実と同一の事実について,懲戒解雇 することはできないことを前提として,どのような懲戒処分に処するのかを決定する必要があります。
 戒告処分に処した場合は,同じ非違行為を理由として更に懲戒処分に処することはできないものと考えて下さい。
 懲戒解雇するには,戒告処分の理由とされた非違行為とは別の非違行為が必要となります。


懲戒解雇した場合には無効となるリスクがそれなりに高い場合,どのように解雇すればいいでしょうか?

2015-01-16 | 日記

懲戒解雇したい事案において,普通解雇すれば有効となりそうなのですが,懲戒解雇した場合には無効となるリスクがそれなりに高い場合,どのように解雇すればいいでしょうか?


 普通解雇 であれば有効となりそうなものの,懲戒解雇 は無効となるリスクがそれなりに高い場合は,普通解雇を選択するか,懲戒解雇と合わせて普通解雇の意思表示も明示的にするかすべきでしょう。
 当初,懲戒解雇のみを行ってしまったが,訴訟の審理が進むにつれ,懲戒解雇としては無効となる可能性が高いことが判明したような場合も,予備的に普通解雇の意思表示をしておくべきです。


懲戒解雇の意思表示は,同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか?

2015-01-16 | 日記

懲戒解雇を通知した場合に,懲戒解雇の意思表示は,同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか。

 

 この問題は,結局のところ,当該解雇 の意思表示の解釈(事実認定)の問題であり,事案ごとに検討するほかありません。
 懲戒解雇 のみを行ったことが明らかな場合は,普通解雇 であれば有効な事案であっても,懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
 裁判例の中には「使用者が,懲戒解雇の要件は満たさないとしても,当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており,懲戒解雇に至る経過に照らして,使用者が懲戒解雇の意思表示に,予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合には,懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる」とするもの(岡田運送事件東京地裁平成14年4月24日判決)もありますが,「使用者が懲戒解雇の意思表示に,予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合」を広く考えることはできません。
 解雇する時点で,普通解雇にするのか,懲戒解雇にするのか,その理由はどのようなものなのかを明確にしておくべきであり,懲戒解雇とともに普通解雇も合わせて行うのであれば,解雇通知書にその旨明記しておくべきでしょう。


当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が後から判明した場合

2015-01-16 | 日記

懲戒解雇した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず,当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が後から判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできますか?

 

 懲戒解雇 した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず,当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が新たに判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることができるかに関し,山口観光事件最高裁第一小法廷平成8年9月26日判決(労判708号31頁)が,「使用者が労働者に対して行う懲戒は,労働者の企業秩序違反行為を理由として,一種の秩序罰を課するものであるから,具体的な懲戒の適否は,その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって,懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから,その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。」と判示していますので,懲戒解雇した時点で使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできません。
 この点は,原則として解雇 事由の追加主張が認められる普通解雇 と大きく異なります。
 懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為が新たに判明した場合は,
 ① 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決のいう「特段の事情」があるかどうか
 ② 懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあると評価することができるか
 ③ 当初の懲戒解雇とは別途,予備的解雇をする場合の懲戒解雇又は普通解雇の理由とするか
等について検討していくことになります。


就業規則がなくても懲戒解雇することはできますか?

2015-01-16 | 日記

就業規則がなくても懲戒解雇することはできますか?


 フジ興産事件最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決が「使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要する」「そして,就業規則が法的規範としての性質を有する…ものとして,拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。」と判示していることからすれば,就業規則に懲戒解雇事由を定め,就業規則を周知(従業員が就業規則の存在や内容を知ろうと思えばいつでも知ることができるようにしておくこと。)させておかなければ,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,通常は懲戒解雇 することはできないと考えられます。
 もっとも,フジ興産事件最高裁平成15年10月10日第二小法廷判決は,労働組合との労働協約に懲戒の種類及び事由が定められていて当該労働者に労働協約の効力が及んでいる場合や,個別労働契約において懲戒の種類及び事由が定められているような場合であっても懲戒解雇することができないとまでは言っておらず,これらの場合に懲戒解雇することができないと考えるべき理由もありませんので,私見ではこれらの場合にも懲戒解雇することができるものと考えています。
 私見によっても,就業規則に懲戒の種類及び事由が定められて周知されておらず,労働組合との労働協約に懲戒の種類及び事由が定められていて当該労働者に労働協約の効力が及んでいる場合でもなく,個別労働契約において懲戒の種類及び事由が定められてもいない場合には,労働者が重大な企業秩序違反行為を行った場合であっても,懲戒解雇することはできず,普通解雇 退職勧奨 等で対処することになります。
 労働契約上の根拠規定がなくても民法627条により行うことができる普通解雇とは大きく異なる点です。