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弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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バックペイと中間収入や失業手当の控除

2013-09-10 | 日記
解雇が無効と判断された場合に支払う賃金(バックペイ)から,解雇された労働者が解雇期間中に他社で働いて得た収入(中間収入)や失業手当を控除することはできませんか?

 解雇期間中の中間収入(他社で働いて得た収入)がある場合,その収入が副業収入のようなものであって解雇がなくても取得できた(自社の収入と両立する)といった特段の事情がない限り,
① 月例賃金のうち平均賃金の60%(労基法26条)を超える部分(平均賃金額の40%)
② 平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額
が控除の対象となります(米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決,あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決,いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決)。
 控除しうる中間収入はその発生期間が賃金の支給対象期間と時期的に対応していることが必要であり,時期が異なる期間内に得た収入を控除することは許されません(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。
 解雇期間中に失業手当を受給していたとしても,失業手当額は控除してもらえません。

 単純化して,解雇期間中の賃金が月額30万円,平均賃金も月額30万円と仮定して説明すると,以下のとおりとなります。
 中間収入の額が平均賃金額の40%(12万円)を超えない場合,例えば他社で毎月10万円を稼いでいた場合には,30万円-10万円=20万円の賃金を毎月支払えば足りることになります。
 中間収入の額が平均賃金額の40%(12万円)を超える場合,例えば他社で毎月25万円を稼いでいた場合には,30万円-25万円=5万円の賃金を毎月支払えば足りることにはならず,平均賃金の60%(18万円)を毎月支払わなければならないことになりますが,平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)がある場合には,平均賃金の40%(12万円)を超える1月あたり13万円の部分についても賞与等の全額を対象として控除することができます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

遅刻や無断欠勤が多い。

2013-09-10 | 日記
遅刻や無断欠勤が多い。

(1) 注意指導
 遅刻や無断欠勤が多い社員は,注意指導して遅刻や無断欠勤をしてはいけないのだということを理解させることが重要です。
 当たり前の話のように聞こえるかもしれませんが,訴訟や労働審判になって弁護士に相談するような事例では,当然行うべき注意指導がなされていないことが多いというのが実情です。
 従来,ルーズな勤怠管理をしていた職場の場合,従来であれば容認されていた程度の遅刻や無断欠勤をしたからといって,直ちに処分することは困難ですので,今後は遅刻や無断欠勤には厳しく対処する旨伝え,それでも改善しない場合に懲戒処分等を検討していくことになります。
 口頭で注意指導しても遅刻や無断欠勤を続ける場合は,書面で注意指導することになります。
 書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟になった場合,遅刻や無断欠勤を注意指導した証拠を確保することもできます。
 訴訟では,労働者側から,十分な注意指導を受けていないから解雇は無効であるといった主張がなされることが多いです。
 口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,十分な注意指導をしたことを立証するのが困難となってしまいます。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。
 面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。

(2) 懲戒処分
 書面で注意指導しても遅刻や無断欠勤を続ける場合は,懲戒処分を検討せざるを得ません。
 まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていくことになります。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者もいますが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのでは社員にとって不意打ちになりトラブルになりやすいですし,よほど悪質な事情がある場合でない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高いところです。
 そもそも,遅刻や無断欠勤の多い問題社員に対して注意指導や懲戒処分等ができないようでは,会社経営者や上司として当然行うべき仕事ができていないと言わざるを得ません。
 必要な注意指導や懲戒処分を行い,職場の秩序を維持するのは,会社経営者や上司の責任です。

(3) 解雇の検討項目
 注意指導し,懲戒処分等に処しても遅刻や無断欠勤が改善せず,改善の見込みが極めて低い場合には,解雇や退職勧奨を検討することになります。
 解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)に当たらないか
③ 解雇予告制度(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇が禁止されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。

(4) 解雇権濫用・懲戒権濫用
 解雇が有効となるためには,単に就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく,②客観的に合理的な理由が必要であり,社会通念上相当なものである必要もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由がない場合は,②解雇権又は懲戒権を濫用したものとして無効となってしまいますし,そもそも①解雇事由に該当しない可能性もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど協調性のなさの程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要です。
 解雇が社会通念上相当であるというためには,労働者の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等),他の労働者の処分との均衡,使用者側の対応・落ち度等に照らして,解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
 遅刻や無断欠勤が多い社員の解雇の有効性を判断するにあたっては,遅刻や欠勤が業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,遅刻や欠勤の理由,謝罪・反省の有無,遅刻欠勤を防止するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されることになります。
 注意指導,懲戒処分等で遅刻や無断欠勤をしなくなるのであれば,注意指導すれば足りるのですから,解雇権濫用・懲戒権濫用の有無を判断するにあたっても,注意指導,懲戒処分等では遅刻や無断欠勤の頻度が改善されないかどうかが問題となります。
 客観的な証拠がないのに,注意指導や懲戒処分等をしても遅刻や無断欠勤は改善されないと思い込んで解雇するケースが散見されますが,客観的証拠から改善の見込みがないことを立証できる場合でない限り,実際に注意指導や懲戒処分等を行って改善の機会を与えた上で,職場から排除しなければならないほど遅刻や無断欠勤の程度が甚だしく,注意指導や懲戒処分では改善される見込みがないことを確かめてから,解雇に踏み切るべきでしょう。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

協調性がない。

2013-09-10 | 日記
協調性がない。

(1) 協調性のなさ
 協調性がないといっても程度問題であり,通常許される個性の範囲内に収まっている程度の問題なのか,それとも,社員としての適格性が問われ,又は企業秩序を阻害するものなのかを見極める必要があります。
 よく検討しないまま主観的に協調性がないと決めつけてしまうのは危険です。
 周囲の社員に問題があることもあるので,客観的に判断するためにも,本人の言い分もよく聴取して事実確認をする必要があります。
(2) 注意指導
 協調性のない社員の対処法としては,注意指導して,周囲と協調性を保つことの重要性を理解させることが何よりも重要です。
 口頭で注意指導しても改善しない場合は,書面で注意指導する必要がある場合もあります。
 書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟になった場合,協調性のなさを注意指導した証拠を確保することもできます。
 訴訟では,労働者側から,十分な注意指導を受けていないから解雇は無効であるといった主張がなされることが多くなっています。。
 口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,十分な注意指導をしたことを立証するのが困難となってしまいます。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。
 面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。
(3) 配転
 配転の余地があるのであれば,協調性がないとされている社員を別の部署に配転させ,配転先でもやはり協調性がないのか確かめてみた方が無難です。
 周囲の社員に問題があることもあり,配転先では協調性がないとは評価されない可能性があります。
 他方,配転先でも協調性がないために周囲との軋轢が生じるようであれば,本人に問題がある可能性が高いと言わざるを得ません。
(4) 懲戒処分
 書面で注意指導しても改善しない場合は,懲戒処分を検討せざるを得ません。
 まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていくことになります。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者は珍しくありませんが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのでは社員にとって不意打ちになりトラブルになりやすいですし,悪質な事情がない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高くなります。
 そもそも,協調性のない問題社員に対して注意指導や懲戒処分等ができないようでは,かえって周囲の社員が迷惑を被って職場の雰囲気が悪くなってしまい,場合によっては退職者が続出することになりかねません。
 問題点があるのに十分な注意指導もできず,懲戒処分にもできず,いきなり解雇するほかないというのでは,コミュニケーション不足の職場と言うほかありません。
 必要な注意指導や懲戒処分を行うとともに,職場の雰囲気を良くするためにリーダーシップを発揮するのは,会社経営者の責任です。
(5) 解雇の検討項目
 注意指導し,懲戒処分等に処しても著しい協調性のなさが改善せず,改善の見込みが極めて低い場合には,解雇や退職勧奨を検討することになります。
 解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権の濫用(労契法15条)に当たらないか
③ 解雇予告制度(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇が禁止されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。
(6) 解雇権濫用・懲戒権濫用
 解雇が有効となるためには,単に就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するように見えるだけでなく,②客観的に合理的な理由が必要ですし,社会通念上相当なものである必要もあります。
 解雇に客観的に合理的な理由がない場合は,そもそも①解雇事由に該当しないだとか,②解雇権又は懲戒権を濫用したとして,無効となってしまいます。
 解雇に客観的に合理的な理由があるというためには,労働契約を終了させなければならないほど協調性のなさの程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていることが必要です。
 解雇が社会通念上相当であるというためには,労働者の情状(反省の態度,過去の勤務態度・処分歴,年齢・家族構成等),他の労働者の処分との均衡,使用者側の対応・落ち度等に照らして,解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。
 協調性を欠くことを理由とする解雇が客観的に合理的なものであるかどうかを判断するにあたっては,協調性が特に必要とされる業務内容,職場環境かどうかという点を効力する必要があり,チームワークが重視される共同作業が多い業務内容なのか,少人数の職場なのか等を検討する必要があります。
 注意指導,懲戒処分等で協調性のなさが改善されるのであれば,注意指導や懲戒処分で改善させればいいのですから,解雇権濫用・懲戒権濫用の有無を判断するにあたっても,注意指導,懲戒処分等では著しい協調性のなさの改善が期待できないかどうかが問題となります。
 客観的な証拠がないのに,注意指導や懲戒処分等をしても改善の見込みがないと思い込んで解雇するケースが散見されますが,客観的証拠から改善の見込みがないことを立証できる場合でない限り,実際に注意指導や懲戒処分等を行って改善の機会を与えた上で,職場から排除しなければならないほど協調性のなさの程度が甚だしく,注意指導や懲戒処分では改善される見込みがないことを確かめてから,解雇に踏み切るべきでしょう。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎

バックペイからの中間収入や失業手当の控除

2013-09-10 | 日記
解雇が無効と判断された場合に支払う賃金(バックペイ)から,解雇された労働者が解雇期間中に他社で働いて得た収入(中間収入)や失業手当を控除することはできませんか?

 解雇期間中の中間収入(他社で働いて得た収入)がある場合,その収入が副業収入のようなものであって解雇がなくても取得できた(自社の収入と両立する)といった特段の事情がない限り,
① 月例賃金のうち平均賃金の60%(労基法26条)を超える部分(平均賃金額の40%)
② 平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額
が控除の対象となります(米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決,あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決,いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決)。
 控除しうる中間収入はその発生期間が賃金の支給対象期間と時期的に対応していることが必要であり,時期が異なる期間内に得た収入を控除することは許されません(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。
 解雇期間中に失業手当を受給していたとしても,失業手当額は控除してもらえません。
 単純化して,解雇期間中の賃金が30万円,平均賃金の60%が18万円と仮定して説明すると,以下のとおりとなります。
 中間収入の額が平均賃金額の40%を超えない場合,例えば他社で毎月10万円を稼いでいた場合には,30万円-10万円=20万円の賃金を毎月支払えば足りることになります。
 中間収入の額が平均賃金額の40%を超える場合,例えば他社で毎月25万円を稼いでいた場合には,30万円-25万円=5万円の賃金を毎月支払えば足りることにはならず,平均賃金の60%である18万円を毎月支払わなければならないことになります。
 平均賃金の40%を超える1月あたり13万円(25万円-12万円)の部分については,賞与の全額を対象として控除することができることになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎