パンダとそらまめ

ヴァイオリン弾きのパンダと環境系法律屋さんのそらまめによる不思議なコラボブログです。
(「初めに」をご一読ください)

北方領土面積二等分という読売虚報は何だったのか?

2006-12-26 23:59:12 | Weblog
 Boxing Dayです。街に大荷物の人が多くて皆帰ってきてる感じ んで、ちょっとは時間ができたのでレポート書き中気になってたことを(長文注意)。読売の14日の記事でこんなのが(リンク切れてるのでキャッシュです)。
   北方領土解決へ4島「面積で2等分」…麻生外相が私案(読売、14日)

記事を読めば分かるように明らかに見出しと記事内容が全く合ってないので、ひどい見出しだなぁとクリップだけしてたところ。なのに発言そのものよりも「北方領土解決へ4島「面積で2等分」…麻生外相が私案」という見出しに反応した記事が続々と。
 ・産経社説(15日) 【主張】北方領土2等分 麻生外相は何をお考えか
 ・朝鮮半島にまで(15日) ロシア・日本紛争北方4島…日「全面積で半分ずつ」
 ・ついにロシアにまで(読売、16日(キャッシュ)) 麻生外相の北方領土解決案、露外相が受け入れ拒否
んで最後のでロシア外相に一蹴される・・・というわけだったのです。あれ、
   日本大使館前で抗議集会 麻生外相の北方領土発言で(産経、27日)
ってことが起こったんですね。結局妥協点を探りにくい雰囲気が残ってるわけですが、ホントは何を言ったのだろうと気になってたんです。国会会議録をチェックしたらアップされてたので見てみました。質問者は民主党の前原前代表だったんですね。(注:強調そらまめ)
○前原委員 ある新聞に、これは時評なんですが、安倍内閣発足直後の会見で、麻生外務大臣が、二島ではこっちがだめ、四島では向こうがだめ、間をとって三島返還というのは一つのアイデアとして考えられる、こういうお話をされたということであります。
 これを直ちに私は批判をするつもりはありません。交渉事でありますので、どのぐらいの時間をかけるのか。ことしが日ソ共同宣言五十周年ということでございまして、スペインなんかは二百何年かけて領土問題を解決したという例もありますので、拙速にやって損したということ、タイムスパンをどれだけとるかということは大変重要な問題だというふうに思いますけれども、交渉事には、私はそれはアローアンスがあっていいと思うんです。
 ただ、一つ私が気になりましたのは、例えば二島先行返還のときもそうだったのでありますが、果たして、そういう議論をされている方々というのは、島の大きさというものをちゃんとわかっておられるのかということなんですね。四島あって、半分は二島じゃないんです。
 御存じであればお答えをいただきたいと思いますけれども、歯舞、色丹が四島のうち何%で、では三島、国後まで入れたら何%か、大臣、御存じですか。御存じなければいいですよ、私、お答えしますから。

○麻生国務大臣 御指摘は正しいと思いますが、半分にしようじゃないかといいますと、択捉島の二五%を残り三島にくっつけますと、ちょうど五〇、五〇ぐらいの比率になります。大体、アバウトそれぐらいの比率だと存じます。

○前原委員 二島が七%、歯舞、色丹で七%、国後を入れて三島で三六%。ですから、おっしゃるように一四%だから、択捉というのは六四%あるわけでして、すごく大きいんです。ですから、今まさに外務大臣がおっしゃったように、半々にしたとしても、択捉はある程度は入れなきゃいけないということで、そこは、三島という言い方をしてしまうと、自民党の議員さんで、モスクワで三島でいいんだなんておっしゃった方が、議長の息子さんでおられるようでありますけれども、これは私はよくない話だと思うんですね。
 繰り返し申し上げますけれども、交渉事ですから、いろいろなアローアンスがあっていい。しかし、中国とロシアが国境線の画定をしたときに、お互い半々にしたんですよ、中ロは。だからそれに倣えということではありません。原則は四島でありますけれども、この問題を本当に解決するんだという意識があれば、今のことも含めて、三島と言い切ってはだめ。つまりは、仮に半分にまけたとしても、私はまけるつもりはありませんが、まけたとしても四島は入るんだというところの認識を持ってこの話はしておかなくてはいけないということであります。
 その点、交渉されるのは外務大臣、当事者ですから、もう時間も三十分しかありませんので、公式見解はわかっています、それは当然あるとして、しかし、御自身の言葉で、では、臨むに当たって、今の私の指摘も含めてどういうふうに考えておられるのか、本音で答弁をいただきたいと思います。

○麻生国務大臣 御指摘のありましたとおりだと存じますが、基本的には、いわゆるこの話をこのままずっと二島だ、四島だ、ゼロだ、一だというので引っ張ったまま、かれこれ六十年来たわけですが、こういった状況をこのまま放置していくというのが双方にとっていいかといえば、これは何らかの形で解決する方法を考えるべきではないか。これはプライオリティーの一番です。
 二番目は、そのときには双方が納得するような話でないといかぬのであって、今言われましたように、二島だ、三島だ、四島だという話になると、これはこっちが勝って、こっちが負けだという話みたいになって、双方ともなかなか合意が得られないといって、ダマンスキー、ダマンスキーというのは例の中国とロシアの間の島のことですが、あのダマンスキーのときも、いわゆるあれで話をつけたという例もあります。
 確かに領土の話というのは、先ほどスペイン等の話も出されましたし、ほかにも、世の中いろいろ、世界じゅうありますので、そういうような国は、金で話をつけた例えばアラスカの例もあれば、またニューオーリンズの例もあれば、いろいろ例はいっぱいあります。
 そういった例を引くにつけましても、この種の話をするときに、今言われたように、島の面積も考えないで二島だ、四島だ、三島だというような話の方が、私も全くそうだと思います。
 したがって、半分だった場合というのを頭に入れておりましたので、択捉島の西半分というか、南のところはもらって初めてそれで半分よという話になるんだと存じます。幸いにして、右というか東方、北東の方に人口は集中しておりますので、そこらのところの人口比が圧倒的に多いというのも事実なんですが、いろいろな意味でこれは交渉事ですから、今いろいろ交渉していくに当たって、現実問題を踏まえた上で双方どうするかというところは、十分に腹に含んだ上で交渉に当たらねばならぬと思っております。
 このやり取りのどこが「面積半分」の私案提示なんでしょうか? 普通に考えれば「交渉頑張って欲しいしある程度のオリシロはあっていいと思うが、四島の半分は面積を考えると二島でも三島でもない」という質問に「その通り、双方が納得できる解決目指して交渉頑張ります!」と言ったに過ぎないわけで、保守派同士のInside Baseballだとかいって逆サイドの方々が揶揄するならまだしも、「北方領土解決へ4島「面積で2等分」…麻生外相が私案」という見出しには普通の考えではなりっこない。
 考えられるのは、元々妥協は一切ケシカランと思っている記者が面積で半分のやり取りを聞いてこれが妥協になるならケシカランと考え、いっそ潰してやろうと思って書いたってことか? でも、それって質問してる前原前代表自ら「交渉事ですからある程度アローワンス」(許容度)があっていいと言ってて解決を望んでるんだから質問者も答弁者も意図しないことですよね。報道が広がってロシアにまで伝わってロシア政府が反応して・・・ってこういう外圧の引き出しってある特定の新聞の専売特許じゃなかったのね。

 ちなみに伏線として挙げられている大臣留任記者会見での麻生大臣の答弁です。外務大臣会見記録(平成18年9月26日(火曜日)23時09分~ 於:本省会見室)
(外務大臣)北方四島の問題に関しては、プーチン大統領と森総理の時から、この問題はかなり、先方もこの問題を解決しないと日露関係の進展はしないという認識を、向こう側も持っていたと思います。それに対応して、この話はずっとしこったままになっていますので、これは、役人がずっと積み上げていた話というのは60年間やってもなかなかうまくいかない話ですから、どこかで政治的な判断が必要だというようなことになってきているのではないかと思っています。従って、どこかの時点で、きちんと、外務大臣同士でどうのこうのという話ではないのではないかと、なんとなく、トップ同士の決断にならないと話が付かないのではないかという感じはします。それが、四島そのまま還ってきたら、こちらが勝って向こうが負けたとか、二島だったら向こうが勝ってこちらが負けたとかいう種類の話だと、双方で納得しないというのでは多分駄目なのだと思います。どこかで話を付けるというところは考えなくてはいけないというところなのだと思います。ルイジアナ州とかは、フランスから買ったりアラスカをロシアから買ったりしたという歴史もありますし、領土の話というのは、実に色々なケースがあるのだと思います。ロシアとの話はどこかで話の決着を付けるような努力を、双方で譲り合わないと、永遠にこの話だけで条約がとか、友好関係がとかいうのは、双方にとってあまり利益にならないなという感じがします。双方で折り合うというのは、ある程度信頼関係ができないとなかなか難しいと思いますので、事務的に積み上げていてできる話かなというのが、私自身も今、感じているところです。ただ、それでどういう答えがあるかというと、その答えを持っている訳ではありません。
外務省のHPが全部を伝えていない可能性も結構ありますが、前後のつながりからして白黒ハッキリということに疑問を呈してはいても「間をとって三島返還というのは一つのアイデアとして考えられる」なんてことは言っていないように見えますけどね。100%取ることしか許されない交渉なんて交渉になりっこないんだし、また間を取る=三島というわけでもないハズでしょうに(日本領ですと宣言するとか、4つ全部もらうがガスプロムと超長期契約を結ばされるとか←ヤダコレ、逆に2島は諦めるが漁業資源の利用権はクリル列島含めてもらうとか、ロシア軍だけ出て行ってもらうとか、要するに何でもアリなハズ)。

 実はもう一つ考えられるのは単に記者が理解力に乏しく、「半分にしようじゃないか」とか「半分だった場合というのを頭に入れておりました」とかの言葉に脊髄反射しただけの非意図的ミステイクってこと。結構あり得そうな気がしますが、そうだとすると、幼少期に「お前のジジイ(注:吉田茂)が死ねば、日本は良くなるんだ」と言われた(文芸春秋10月号)麻生大臣のトラウマというかアンチ記者度合いがますます高くなりそうな。引き続きめげずに頑張ってください。

ただ、一番の解決策は、やっぱり前原前代表のこの解決策だったのかも。
○前原委員 こういう席で不謹慎かもしれませんが、エリツィンのときは惜しかったですよね。川奈に来たときに、もうちょっとウオツカを飲ませて、そして判をつかせればよかったなとこれは本気になって思ったことはありましたけれども、これができなかったわけで、今の相手はやはりプーチンでありまして、(略)
惜しかったですねぇ(笑) 毒物を飲まされないよう注意して頑張ってください(こっちは笑い事じゃスミマセンね)。