l'esquisse

アート鑑賞の感想を中心に、日々思ったことをつらつらと。

RCA Secret 2009

2009-11-25 | アートその他
イギリスのThe Independent紙のオンライン・ニュースにRCA Secret 2009の記事が載っていた。

RCA Secretとは、ロンドンのロイヤル・コレッジ・オブ・アート(Royal College of Art)が毎年今頃の時期に主催するアート・イベント。学校側が無償にて制作依頼した、既に名声を確立しているアーティストから最近の卒業生までの手になるポストカードの作品を、学内で展示販売する。アーティスト1人当たり6点まで出展でき、今年は1000人以上のアーティストにより寄贈された作品が2700点ほど売りに出された。1作品40ポンド(本日付の換算で計算すると5880円くらい)で売られ、その売り上げは奨学金等に使われるべく、学校の基金に充てられる。1994年に始まり、今やイギリスの初冬の風物詩とも言えるこのイベントも今年で16回目を数えた。

さて、何が「秘密」かというと、どの作品も作者の名前が伏せられているという点。めでたく作品を入手できた人だけが、購入後に絵の裏に書かれたサインで誰の作品であるか知ることができるという仕組み。

とは言え、実際のところ「秘密」と言いながら作品を寄贈したビッグ・ネームは事前に発表されるし、やはり作品を観てみるとわかる人にはわかるという作品も多そうだ。私ですらジュリアン・オピーなんかパッと観でわかりました。オノ・ヨーコなんて「Imagine Peace」って書いてあるし(笑)。知らずに買って、「えぇ~っ、これがあの有名人の作品?」という純粋なビッグ・サプライズがあれば、それは楽しいでしょうけど。

それより、さきほど“めでたく作品を入手できた人”と書いたが、作品の入手が結構大変。まずは所定の期間内にインターネットで参加申し込み。これがないと入場できない。1日限りのこのイベント(ちなみに今年は11月21日だった模様)の前に1週間ほど開かれる展覧会にて、各々欲しい作品の目星をつけることも可ではあるが、当日はまず、事前に1ポンドで売り出されるクジに当選した50人が入場してお買い上げ。恐らくこの時点で、誰もが目星をつけるような作品は無くなると思われる。そのあとは先着順となるのだが、行列の先頭集団は何とテントを張るなどして2日以上並ぶらしい。当然のことながら午前8時の開場の前から建物をぐるりと囲むほどの長蛇の列が出来上がり、底冷えのするイギリスの寒空の下、鼻をすすりながら建物の中に入るまで何時間も並ばなくてはならない。そう聞くと、いつか行ってみたいと思う私の気持ちもどんどん萎えてくる(なんて言ってるようじゃ多分一生行けないでしょうね)。

今年のビッグ・ネーム筆頭は、何といってもゲハルト・リヒター。6点寄贈したそうで(太っ腹!)、どれも本当に美しい抽象画。これを一つ6000円足らずで買えるなんて確かに垂涎もの。あとはグレイソン・ペリー、アニッシュ・カプーア、トレイシー・エミン、ビル・ヴィオラ、そして先に挙げたジュリアン・オピーやオノ・ヨーコなど。初めて聞く日本人の方々のお名前も散見された。

日本にもあったらいいなぁ、と思うようなアート・イベントだが(「わぁ、この脱力系のワンちゃん、かわいー」とか言って5000円くらいで買って、裏に「奈良美智」ってあったらどうします?)、後にオークション等で転売するべく人を雇って列に並ばせたりなんてことも起こっているそうなので、ちょっと難しい側面もあるかもしれない。

もしご興味がある方はこちらをどうぞ。今年の出展作品が作者名と共に全て観られます。


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