第86回のセンバツ高校野球の抽選会が14日に大阪府内で行われた。注目の抽選会には多数の報道陣が訪れた。初戦から同じ地域同士が対戦することを避けるために工夫された抽選を経て、大会6日目までの組み合わせが決まった。
21世紀枠として出場する都立小山台高校は大会初日の第3試合で、大阪の履正社高校、やまびこ打線復活が期待される徳島の池田高校は大会2日目の第2試合で登場し、和歌山の海南高校と対戦する。
抽選後、行われたカード別の囲み取材でとりわけ大きな輪ができていた場所があった。大会4日目の第3試合で対戦が決まった高知の明徳義塾高校の馬淵史郎監督(58)と、智弁和歌山高校の高嶋仁監督(67)が2人並んで、どっしりと腰をかけていたのだ。
歴代5位の甲子園通算勝利数42勝(23敗)の馬淵監督と、歴代1位の63勝(30敗)の高嶋監督。2人合わせて105勝の名将対決がいきなり1回戦から実現することになったのだ。2002年の夏の甲子園では決勝のカードだった両校。その時はヤクルトの森岡を擁した明徳義塾が優勝している。
対戦が決まった瞬間、2人の監督は「いや~、まいった」というような表情をしていた。そこから早くも2人の舌戦、心理戦が始まった。
実はこの2人、ライバル校の監督同士ではあるが、仲がいい。高嶋監督は「いや~、実は2人で2月に食事をしていたんです。センバツ出場が決まって、決勝戦で我々が対戦しようという話し合いになっていったんですがね」と笑って明かした。馬淵監督も「本当は決勝戦で当たりたかったですね。強豪と当たるのは仕方がないとはいえ、親しい仲なので」と戸惑いを隠せなかった。
対戦が決まったことについて両監督の答えはほとんど同じだった。
高嶋監督が「試合で勉強をさせていただきたい。馬淵監督はいろんな作戦を持っているから。『えっ? えっ?』ってこちらがベンチで思ってしまうくらい。なるほどなぁ……って勉強になるんですよ」と話せば、馬淵監督も「大監督ですから、野球を教えていただきたい。みんなが見本にしている監督ですからね。ゲームをやってこんなにうれしいことはないですよ。結果が悪ければ、次への戦いの気力になりますから」と話した。
素直な気持ちを表現しているだけなのかもしれないが、さっそく褒め殺し作戦、心理戦が始まったともとらえることができるコメントだった。
1年生の夏からマウンドに上がる岸潤一郎投手がエースの明徳義塾。試合は大会4日目の第3試合、午後2時試合開始とあり、馬淵監督はほっとした様子だった。岸は低血圧でできれば朝一番の試合は「投げさせたくなかったんです」と胸の内を明かすと、高嶋監督は「春は雨が多いからねぇ……。(中止になって次の日の)朝になることだってあるかもしれないよ」とチクリ。2人は顔を見合わせて笑っていた。
会話の呼吸もなんだか合っている。頻繁に食事にいく間柄でも、戦いとなれば別。褒め合っているが、本心は、選手のためにも、どんな作戦を使っても勝ち上がることだろう。初戦から好カードがある今センバツ大会。ベテラン監督の対戦は、高校野球ファンも目が離せない一戦となる。
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