冬目景って素晴らしい! …という事に私がようやく気付いたのは2009年に『ACONY』を読んだ時です。
この第1巻は1999年初版。世の中は10年前に既に冬目景は素晴らしいと気付いていたんだ。
美味しいお酒を飲んで、心地よく酔った時というのは、こんな気持ちになるのかもしれない。
今日のような鬱陶しい雨の日に読むこの漫画は格別の味わいです。
物語の主人公は、大学を出ても就職せずにコンビニでバイトをしている魚住陸生(うおずみりくお)。学生時代から「やりたい事」が無かった彼は、店晒しになった弁当でカラスを餌付けしていて、足を悪くしたこのカラスだけが家族だと言う野中晴(ハル)という非常識な少女と出会う。
学生時代から秘かに想いを寄せていた森ノ目しな子(しなこ/「しな」は木へんに品)が東京に戻ってきて、リクオはハルが、しな子が非常勤の教師をしていた時に高校を中退した元生徒だったと知る。
ハルはリクオに付きまとい、レンアイは錯覚だと言い、それを聞いたリクオは錯覚に終止符を打とうと自分を追い込み、玉砕する。そしてバイト先の先輩から頼まれた自主版のCDジャケットのために、ハルではなく彼女が飼っているカラスを主役にした写真を撮る。
自分はウソつきだけど、それは気楽で、ウソつきが好きだというハルの言葉が印象的だ。
情熱がなければ続けられない漫画家という職業を志した冬目景が、後ろ向きな若者達の恋愛模様を描いている。自惚(うぬぼ)れは若さの特権なのに、登場人物たちは自分に自惚れることができない。しかしこのような物語は作者が自分自身を好きではないと描けないはずで(自分を好きではない人の気持ちは、「自分が好き」な比率が「自分が嫌い」な比率より高くないと描けない)、これは作品の雰囲気が伝える以上に、恐ろしく前向きな漫画なのだ(とオレは思う)。
世の中が卒業式を迎える頃、リクオをフッたしな子の高校に、彼女の幼なじみである浪(ろう)が転校してくる。髪を切ったしな子はリクオに言いかけた言葉を飲み込み、リクオは浪から、ハルはしな子から、「金沢での事」を聞かされる。リクオとしな子は「友達」という関係を解消し、ハルは「先生」に一方的に宣戦布告する。自分がしな子に対して抱いている想いと同じ意味の言葉を言うハルを、リクオは拒絶できず、「社会のはみ出し者」たちの日常は続く。
お薦め度:★★★★☆
冬目景の漫画は素晴らしい。←くどい(笑)
読みたい漫画がたくさんあるって本当に幸せなことだ。
未完のようだけど、これと『ACONY』は永遠に描き続けてほしい。(こら)
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【検索用】イエスタデイをうたって 冬目景 1
10年たつのにまだ終わってないですからねw
白冬目・黒冬目の両側面がいい具合にミックスされた作品です、これ。
じっくりと読んでいってあげてください。
完結してる作品のほうがすくないという困った事実。
堪能しました。
冬目景には不老不死になってもらって『ACONY』を永遠に描き続けてほしいです。
『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』レベルになると作者が亡くなっても続いてしまいますが。
名匠は未完を放置し続けても許されるんです!(笑)
今、読んでみたいのは『ももんち』です。