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毎日 楽しくったっていいんだよ
幸せを望むことは 罪じゃない
毎日 幸せだって
いいんだよ
(直哉から一子へ)
ときめいた!
…こんなテンションで書き殴ってしまうブログは、レビューでも感想でもないけれど、恥ずかしくて転げ回ってしまうほど、ときめかされた。だから、「こういうふうに面白かったです」などと、平静を装ってブログを書くのも困難だ。
前段でときめいたと連呼してしまったけれど、この漫画を読むと、「ときめく」という言葉を軽々しく使えなくなる。この漫画に、「至高のときめき」とも呼べる物が描かれているからだ。物語を収束させるために、やや駆け足で完結を迎えた感は否めないけれど、このときめきはそれを補って余りある。誰かを「好き」になる感情を、これほど深く暖かに描く高尾滋の力量に、脱帽。人を好きになって、ときめく。その想いを、恐ろしく克明に描いているから、読んでいて身悶えするほど恥ずかしい。そして、たまらなく幸せな気持ちになれる。
不幸であることをやめるのは、古白が母との関係のすべてを捨てたのと同じくらい、時間はかかっても簡単だ。ところが、自分が幸せであることを許すのは、時間をかけるだけでは受け入れられず、難しい。他人を傷つけたことのない人などいないので、人は大なり小なり、自分は幸せだと感じる度に、「自分のせいで不幸になった誰か」の存在が、脳裏をよぎる。「自分が幸せであること」と「自分以外の誰かが不幸であること」は、理屈の上では無関係なのに、感情ではそれに納得できない場合がある。
しかし実際には、古白が「自分を不幸だと認めること」で「古白の母が幸せ」にはならないし、一子が「自分は幸せだと感じる」ことで「一子の甥が不幸」にはならない。だから、個々人が「自分の幸せを望むこと」は、微塵(みじん)も罪ではない。
この漫画は、一子が、冒頭に引用した直哉の言葉に納得でき、古白の想いに応えた所で完結する。しかし、それを上回る見所は、古白が一子に対してときめく数々の場面とその描写だ。古白(と努)が、一子にときめく様を描くことに、作者は心血を注いだと言っても過言ではないかもしれない。もう、この最終巻には、開き直ったかのように、「ときめき」と「幸せ」しか描かれていない。この漫画の登場人物の中で最も美しい女性、谷春香を差し置いて、宇佐美一子を最も魅力的な存在に作者は高め、つくりあげた。そして、彼らが一子にときめく感情が、真に迫って生々しく、恥ずかしくて美しくて暖かい。
特にこの二つのセリフが、思い出すだけで赤面してしまうほど、私には秀逸に思えた。
「君が 俺の家ならいいのにな…」(努から一子へ)
「君に どっちが似合うかなぁって 考えてるだけで 十日でも 十年でも すごせそう…」(古白から一子へ)
極みは、努が、古白の一子に対する想いを形容する、(古白は いちこちゃんの胸に花を植えている)というモノローグ。「愛を捧げる」などという決まり文句では片付けられないほどの想いだ。
全6巻を読み返して、最初に抱く感情。
「恥ずかしくて死にそうだ!」
この一言に尽きる。
そして、登場人物だけでなく、現実の自分自身に対しても、「私は幸せで良いのだろうか」という問いかけをさせられる。もちろん、その問いへの答えは、直哉が代弁してくれているように、「良い」だ。
「幸せとは何か」というテーマをすっ飛ばして、「幸せであることは罪ではない」と断言するかのようなこの漫画に、私はこの上ない救いと喜びと幸せを感じる。そして、その幸せに満ちたときめきに、転げ回って狂喜してしまう。
もしも作家の使命が「読者を幸せにすること」だとしたら、私の中で高尾滋を超える少女漫画家はいないと、またも思わされた。
第31話カラー扉(花とゆめ平成23年15号)
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最終回カラー扉(23号)
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平成24年1号ふろく
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