『360°マテリアル』第1巻/南塔子

　

2010年から始まった南塔子さんの新連載。初の連載のようです。
なんだかすごく良い！　別マ2009年3月号で『悩みのタネ』を読んだ時にこの人の漫画を気に入りました。
この作品は既に雑誌で連載を読んでいて、一冊にまとまったからといって新たな発見があるわけではないんですが、気に入っているので購入してしまいました。

帯を見て気が付いたことといえば、「ゆるかわ」というのは美桜ちゃんを中心とした作品全体の雰囲気のことだと私は思っていたんですが、編集部としては滝くんのことだったという…。

やはり第1話が秀逸。
美女に話しかけられても反応が薄い、とらえどころのない滝くんからふとしたきっかけで飛行機雲のウンチクを聞かされた大高美桜(おおたかみお)は、彼も笑うのだと知り、車から助けてくれた腕の力でやはり男のコなのだと思う。メアドを知りたいという同中の女子の言葉に深い意味はなかったとわかりホッとしたのも、息が止まりそうになったのも全部、新しく生まれた気持ちだったのだと気付く。
大嫌いな数学から解放され、窓越しに見た広い空。まっすぐに、胸の中に消えずに残った無垢なライン。
これから天気が悪くなると今は知っている美桜が傘を持って翌朝登校すると、滝くんも自分と同じように傘を持っていた仲秋の候(ちゅうしゅうのこう)。

そして美桜は飛行機雲の画像をもらうついでに思いもよらず滝くんのメアドを手に入れてしまう。スキな人がいるだけで景色は輝き、優しい気持ちになれる。同中の男子、丸井と必死で板書を書き写していた美桜のノートを覗き込む滝くん。女子に送信するのと同じノリで間違えて本人に送ってしまったメールを楽しかったと笑ってもらえ、相手は誰なのかと期待してしまいそうな質問をされる。

赤点回避のために丸井と一緒に滝くんに数学をみてもらえることになる美桜。滝くんを「ナオ」と呼ぶ、隣の家の美少女の出現。
0.9999……(無限)が1と同じなのだと、手品のように証明してしまい、丸井のモチベーションまであげてしまう滝くんを見て、喉の奥が熱くなり、こみあげてくる涙。帰り際、呼びとめられたような気がして美桜はとっさに電車から降りてしまい、今も泣いている自分の涙は悲しいからではないと、胸の内を打ち明ける。


あの時の滝くんの返事に大喜びで答えていた美桜が、期末が終わって安心した途端、実は肝心なことを聞いていなかったと思い出す。滝くんのお隣の茜から聞かされる、滝くんに以前彼女がいたという話が胸をざわつかせ、自分は「好き」と言われていないと気付いてしまう。しかし丸井の一言で球技大会でムキになった滝くんが、飛んできたボールに気付かずに保健室に担ぎ込まれ、ただの寝不足だからと皆が姿を消し、二人きりになった時の滝くんの寝言で、美桜はそれまでの悩みが一瞬でふきとんでしまう。


#01カラー扉(『別冊 マーガレット』2010年2月号)


#04カラー扉(5月号)



お薦め度：★★★☆☆
第2巻も買います。
他愛のないと言ってしまえばそれまでですが、恋をして世界や物の見方が変わる様を優しく描いた、なだらかさを楽しめる漫画です。
別マ7月号の続きを読むのが楽しみです。


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