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『シドニアの騎士』第1巻/弐瓶勉

2009-09-29 | 青年漫画
 
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あのハードSF『バイオメガ』を描いた、弐瓶勉のあまりにも前作と違う新作です。
結論から言うと…滅茶苦茶良かった素晴らしかった! 弐瓶勉はやはり天才だ、ただ者じゃない。本心からそう思います。
何がすごいって、これが完全に萌え系ロボットアニメのノリだという処! それもまだ「萌え」という言葉が今のような使われ方をしていなかった、1980年代のロボット物お色気OVAの。
80年代OVAの萌え要素を21世紀の今、漫画でそのまま描いたのであれば、通常なら全く受けないと思います。これまであんなに読者に対して不親切な作品を描いてきた弐瓶勉が、ロボットかっこいいぜ女の子カワイイぜオシッコ漏れちゃう、という「おたく受け」する漫画を連載で描いているんです。こんなに嬉しい漫画ってなかなかありません。下手くそな人が描いたら台無しになります。ものすごい才能の持ち主である弐瓶勉が描くから素晴らしいんです。

『超時空要塞マクロス』のTV・劇場版があって、その後ビデオデッキの普及に伴ってOVA『夢次元ハンター ファンドラ』や『戦え!! イクサー1』などの作品が培ってきたオタク向けアニメの路線って1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』の登場で潰されてしまった部分もあると思うんです。『エヴァ』を否定するわけでは決してありませんが、少なくともエヴァのせいで『機動戦艦ナデシコ』の注目度は相対的に下がりました。
弐瓶勉は私より3歳年上で、あの80年代のOVA黎明期をリアルタイムで体験してきた世代です。80年代おたく向けアニメへのオマージュが存分に感じられ、その上で「弐瓶勉の世界観」をしっかり見せつけてくれる、叩き付けてくる傑作です。大傑作です。私興奮してますねすみません。

奇居子(ガウナ)が登場しますが、『ABARA』との物語としての連続性はないと思われます。時は太陽系が奇居子に滅ぼされた千年後の未来、人類存続をかけて航行する恒星間宇宙船シドニアに居住する、食べる必要は必ずしもなく光合成する人々。主人公は衛人(モリト)というロボット(継衛)を駆る、光合成の出来ない青年、谷風長道(たにかぜながて)。

長年シドニアの最下層で暮らしていた長道は、空腹から米泥棒をして捕まってしまう。自分の身元引受人になるという人物が現れ、上層に行くと女子光合成室をうっかり覗いてしまい、下着の女子に蹴り飛ばされる。シドニアの艦長から衛人操縦士訓練生になれという申し出をされ、受諾。



訓練生達が競い合い、いがみ合い、男女のもつれもありながら、未知の敵と戦う。シドニアの艦内にはラーメン屋に蕎麦屋、800年の伝統のある重力祭りでは屋台。男でも女でもない性別のキャラ、浴衣で転べばフトモモが露出。生体尿道カテーテルで排尿しながら赤面する女子。艦長がプライベートでは眼鏡っ娘というトドメ。「シドニア(SIDONIA)」という言葉の響きまで計算され尽くしている。
【訂正】眼鏡っ娘は艦長じゃなくて保健室医

「おたく文化」という言い回しがよく聞かれますが、今の「オタク」という概念は「ファッション」と化してしまっている部分もあり、メイド喫茶で飲み食いし美少女の抱き枕が部屋にあるような人達を「オタク」と呼ぶのなら、マスメディアが本当の意味で「オタク」を理解しているとは言い難いのが現状です。ビデオデッキの普及に伴って醸成されてきた「おたく」の源流を今に伝えながらも、描きたいものが明確な、非の打ち所のない素晴らしい作品です。


お薦め度:★★★★★
私たちの世代なら、これはもう5つ星付けて手放しで絶賛という評価以外あり得ません。ただし、今20代の人達にはどこが魅力なのか理解できない部分もあると思います。33歳以上(1982年に小学1年生以上だった)じゃないと置いていかれてしまうんじゃないかな。あの80年代の低予算で創られた陳腐なOVAの面白さって今DVDで観ても伝わってこないんです。圧倒的な画力と表現力を持つ弐瓶勉が敢えてこういう世界を描いているのはすごいことです。弐瓶先生、意欲満々ですね。
震えました。間違いなく2009年に読んだ漫画ベスト10に入るであろう、最高最強無敵の面白さ。


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