アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『週漫スペシャル』11月号

2009-09-30 | 青年漫画
 
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表紙。今月号は見た目も可愛らしく良い方ですね。いきなり変わると店頭で「これが週漫スペシャル」と分からなくなるけど、徐々に変えていけばいいんじゃないかなあ。普段から漫画を読んでいる人は「表紙と内容は無関係」と承知していても、表紙の絵から中味がある程度推察できる物が好ましいですよ。モデルやらグラビアアイドルやらの写真をトレスしたような(実際にトレースなのかどうかは知りません)CGっぽく、というのは官能劇画誌の十数年間の伝統である部分もあるとは思いますが。若造が意見してすいません(笑)


『嘘』lie.1/ももなり高・沙川聖。巻頭カラー。
女の「嘘」を描く新シリーズ。原作と作画の相性が絶妙。「これぞ正に週漫スペシャル」という感じの。
不倫する夫、その相手も人妻。淫らな女が巧みな嘘で「幸せ」という名の虚像を求める姿を目の当たりにして、男は自分の貞淑な妻相手にも疑惑を抱く。周囲からの言葉がその疑惑に拍車をかける。「疑う」ということは哀しい。


『沿線不倫恥図』〜乱れた社内関係/北野信・小田はるか
今月号は「草食系」ネタが2本あります。その一作目。同僚の話を聞いて「オーーシッ! 俺も絶対に不倫するぞーーッ」というオヤジのほうが確かにたくましい(笑)
狙い目は例えばファザコン。勢いで喰ってしまった女の子が、実は取引先の部長の愛人。次に目を付けた子も役員の愛人。つまりいいオンナはすでに誰かの愛人。この子なら大丈夫と下調べした子は妻の友達。ああ世間は狭いなあ(笑)


『罠(trap)』/北弓佳・葛城ゆう
三部作の2作目。重役のコネで入社した主人公は、仕事ができなくてもクビにしない社の方針にあぐらをかいて、休まず働かずを心がけ、せめて会社に迷惑をかけないようにと日々パチンコに興じる。飲み屋で見覚えのある女性が隣にいて、きちんと出社していれば毎日顔を合わせていると厳しい言葉を浴びせる派遣の子。

産業スパイの片棒を担ぎ、大金を手にして人生リセットのハズが…。
「老後の安心」をカネで買いたいという思いは多かれ少なかれ、人は持っていると思います。私も持ってますよ(笑) 欲深いとろくな事にならない。


『恋文』〜今どきの男/成沢功・大川功
残業していた課長、財布と定期を落としたと金を借りに社に戻ってくる女子社員。数日後、その女子社員は再び残業している課長のいる夜のオフィスにやってきて、この間の「落とした」というのはラブレターだったのに、課長は本当にお金を貸して自分を追い返した、自分は本気だったのにと言う。
淫らな夢を半分くらい現実にした課長は、ある日彼女が恋人と破局したと知る。妻との離婚を迫られるのかと思いきや、彼女の「勘違いしないでくださいね」という言葉は、課長とはセックスだけの関係だという意味。
これも「草食系」がどうこうというお話なんですが、どこか「『草食系』という流行りの言葉を使ってみました」という部分がひっかかりますね。そんなにセックスばかりしなくていいし彼女も要らないし、という意味なら私も草食系なんでしょうが、草食系=仕事もできないという課長の言い方はちょっと気にくわない。この課長、男としては魅力的でも上司としては最低だ(笑)


『ラブルーム』room.16「ガラスの天井」/間宮聖士・狩野あづさ
体を使って取引先のオヤジ相手に営業する女性主任。「結局 女は便所ですよ」という上司の言葉は、大企業の重役クラス連中の本音なんだろうなあ。こういう社会的地位に蔓延する「腐った」部分って漫画や小説のネタとしては残って欲しい「文化」。天下り根絶しますという民主党政権で私が気に入らない部分って、政官の癒着とか権力者が弱者を踏みにじる構図というのは戦前からの何十年もの日本社会の悪しき伝統で、それを題材に数え切れないほどの貸本漫画からの暗鬱な物語やプロレタリア文学のような作品が生まれてきました。そういう「汚い」部分を全部なくして、格差も貧困もないユートピアみたいな世の中にしますというのは確かに国民を幸せにするかもしれない。国民全員が幸せになれるのは素晴らしいことだけど、物書きの創作意欲は削ぎますね(笑)
読み手としても、もし自分が何不自由なく、何の不満もない満ち足りた生活を送っていたら本を読んでもあまり面白くなくなると思う。


『壁に耳あり…』part.3「監視者には刺激を」/作麻正明・鷲津俊
陵辱、盗聴、盗撮。貯金が趣味の女は男にとってATM。

利用していたのはどちらなのか。私は作麻正明先生の作品が好きなんですが、『週漫スペシャル』の執筆陣ってプロフィールの分からない人ばかり。せめて年齢と簡単な経歴くらいは紹介して欲しい。欲を言えば巻末にちょっとしたコーナーを作って、全作家さんからの「今月の一言」みたいな物があるといいですね。「歌舞伎町に資料写真を撮りに行きました」とか「テレカのために新作イラストを描きました」とか他愛のない一言でいいんです。


『愛を売る女』love.5/藍沢翔
リリコの現実味のない女ぶりっていいです。まるでインターネット上のバーチャルな存在のよう。それが今回、HN「カサノバ」の恋人気取りの女と生で対話します。リリコが出張サービスに来たのが社内にメールで流され、屋上から飛び降りようとする女、泣きながら必死に止める男。
物陰から一部始終を覗くだけで、人ごとのように微笑むリリコ。


『ハートパートナー』scene.3「コンプレックス」/大葉康雄・久住遼
結婚相談所での出会いを描いた、始まって3回目のシリーズ。今までハズレが一回もなくて好調です。
妻に先立たれた中年のタクシー運転手と、実の娘より年下のお付き合い相手。本人にしか分からないコンプレックス、祝福はされない結婚。

時間がかかっても最後には幸せを見付けられるというのが好きです。


『破戒坊・源界みだれ行脚』其の二<前編>秘め吐淫/ケン月影
女体のリアルさもですが、この光悦の表情はすごい。

血吸いの湯、年貢の取り立て、生活苦で首を吊る民。こんな見事な作品に私ごときが意見を述べるなどという失礼はできません。後編も必読。


『風俗記者・どぶねずみ』#49/佐々木久・武守仁
不景気で閑古鳥の鳴いている歌舞伎町。キャバ嬢と黒服が言い争う場に居合わせる鮎原。
「太客」の足が遠のいていた本当の理由は恐喝。誰とでも寝る「特攻隊」、彼女達はくノ一とも呼ばれる。「アヘアヘ恐喝」の手口のあまりのお粗末さに仰天。人って後ろ暗い処があるとこんなに簡単に騙されるんだね。

口止め料を含めて倍返しで戻ってくる金。命の値段と思えば高くない。


次号、『毒の華』『女ふたり桃色事件簿』再開、蝦名いくお、美和剛先生再登場。


↓満足だ、そして来月も楽しみだ
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【検索用】週漫スペシャル 芳文社 11

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