アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『ホムンクルス』第12集/山本英夫

2010-03-14 | 青年漫画
 
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ホムンクルスが見えなくなり、酒をあおる名越。同じ夢から目覚め、二日酔いの頭を抱えて起きると、立入禁止の札が立てられテントを撤去され、公園からホームレス達が姿を消していた。公園とホテルの挟間の道を男と歩く、特定の女だけが、片目で見ると自分が遊んできた女達に見える。
穴が小さいせいだと言う名越に、プラシーボ(思い込み)による現象だと言い返す伊藤。プラシーボなら自分が思い込めばそうなると言い争っていて目に留まる、自分で頭蓋骨を削る「セルフ トレパネーション」の資料。伊藤が逃げ出した隙に、材料一式を無断で持ち出す名越。

穴を大きくする以外に穴を増やす方法もあると、レポートを読んで知った名越が公衆便所の中で全裸になってドリルで頭蓋骨に二つ目の穴を開けるシーンは圧巻。
脳も心臓のように鼓動していると知る名越。車の前をまた同じ女が面(ツラ)を変えながら通りがかる。貧血で倒れた名越に駆け寄ってきた、牧村ゆきと名乗ったその女の嘘を聞き、彼はそんなふうに嘘をつく女がいたと思い出す。
夢の中に出てくる女の名は、ななこ。

視界にホムンクルスが戻ってきた名越は、人混みの中で「元に戻った…」と狂人のような笑みを浮かべ、ホームレスのテントが撤去され一般人(伊藤の言い方をすれば「常識人」)が遊ぶようになった公園の光景を楽しそうに眺めながら寒さとダルさから眠ってしまう。
目覚めた名越の前に現れた牧村ゆきは、嘘を繰り返し、おまえにも嘘をつかれたと目を覗き込む。顔をなくしたその女がななこだと、片目で見て名越は確信し、いやらしく口付けながら名を呼ぶと彼女は名越を拒絶する。
女にはねつけられた名越がベンチに後頭部を打ち付け、再び顔を近付けると何かの反動で今度は女のほうが跳ね飛ばされる。鼻血を流しながら走り去る女と伊藤がすれ違い、伊藤がベンチに座り込む名越の顔を覗き込むと、彼は意識を失っていた。昔の夢から目覚めた名越が思い出した、女の友達の女の名前はななみ。
衰弱していた名越に女を跳ね飛ばす力は残っていなかったと思うので、あの力はサイコキネシスのような物かもしれない。
ホムンクルスに怯えてそれを否定したい伊藤と、それを実感だと信じ込むようになった名越。「女を物理的に跳ね飛ばした」という事実を巡って二人がまた口論になるような気がする。公園からホームレス達のテントが撤去されたことで、「ホームレスが集まる公園と常識人の集う一流ホテルの狭間にいる」という名越の「価値」にも変化が訪れたことになる。


お薦め度:★★★☆☆
世界が自分にはどう見えるかという「認識」の部分に踏み込んできたので、相当な難題に挑んでいる作品だと思います。
自己と他者との価値観には絶対的に相容れない部分があり、その場合は何が「正解」なのか人には断言できないのだから。
「人間を知りたい」という伊藤の問いにはそもそも答えは無くて、「もともと人間に興味がねえんだ」という名越の言葉は嘘かもしれない。ヒトの(脳の)見える=認識するということがそもそも曖昧で、それが信じられる根拠が希薄だということでしょうか。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Jing*3)
2010-03-14 15:52:35
最後のほうの段落、深い!
私と同じマンガを読んでいてなぜこうも考えることがWrlzさんは違うのか(笑
返信する
人間 (Wrlz)
2010-03-14 20:06:08
>Jing*3様

深読みしてるっぽいけど私が正しいという保証はないですよ(笑)
読む人の数だけ解釈が生まれそうな漫画ですね。
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