「八幡平の蒸の湯で馬小屋のように見すぼらしい宿舎に泊り、乞食の境涯に落ちぶれたような、世の中から見捨てられたような気持ちになり、奥深い安心感を覚えた。このとき以来ボロ宿に惹かれるようになったが、それが自己否定に通底し、自己からの解放を意味するものであることはずっと後まで理解が及ばなかった。蒸の湯で湯当りしたため、黒湯、泥湯へ行く予定を断念し、角館、小安温泉、米沢に泊り、ややもち直し、会津の湯野上、岩瀬湯本、二岐温泉を訪ねる。」(『つげ義春資料集成』北冬書房より)
「つげ義春 幻想紀行」権藤晋 立風書房 1998年
富翁
「つげ義春 幻想紀行」権藤晋 立風書房 1998年
富翁