断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

『最近の電子マネーの動向について(2012年)』を、読んだけど。。。

2012-11-25 12:18:34 | 日銀ウオッチ
「日本銀行決済機構局」のレポートで
『最近の電子マネーの動向について(2012年)』
というのが、発表された。

「電子マネー」という言葉で何をイメージするのかは、
人それぞれだろう。
このレポートの中で、電子マネーをどのように定義しているのかは
注の1と2、およびBox1(枠内コラム)に、記されている。
いろいろ書かれているが、結局、対象として集計に含まれているのは
具体的には、
「楽天Edy」「ICOCA」「 Kitaca」「 PASMO」「 SUGOCA」「Suica」
「nanaco」「WAON」の8つということである。
いずれも、プリペイド式の、つまり、信用創造されることはない、
手許で使うタイプの、つまり、インターネットで操作する、いわゆる
ネットバンキングではないものである。注2にあるとおり、ポストペイ式の
ものは含まれていないし、クレジット機能があるものも、
とりあえず含まれていない、ということなので、
本当に、決済の便宜のために導入されたシステム、というだけのことで、
取り立てて「電子マネー」というほどのものでも
ないのではないかな、という気もしないではない。もちろん、
プリペイド式であっても、小口の売買に際して
現金が銀行から引き出されることが少なくなれば
それだけ信用乗数は大きくなるわけで、
その意味で、プリペイド式であっても、
(一定のベースマネーの下で)マネーストックの増加要因には
なるわけだ。といっても、これだけ過剰準備を銀行が
積み上げている状態で、信用乗数の引き上げも糸瓜もないんだが。。。
ついでに言っておけば、ここにはポストペイ式の、
要するに1回払いのクレジットカード決済は含まれていないわけで、
その点も、なんか、こう、しっくりこないんだなあ。。。
電子マネーの普及が問題になるのは、
経済全体としての信用決済状況に影響を与えるからであって、
つまり、現金通貨を介さない決済の金額が増えることが、
経済全体にどのような影響を与えることになるのか、
その点が問題になるんじゃないのか、と感じているわけで、
その点では、プリペイド式もポストペイ式も、あまり
違いがないんじゃないのか、と、思うんだよねえ。。。
特に、最近は、クレジットカードの署名が、少額の場合は
不要になったりして、少額決済における使い勝手が
格段に良くなっている。単に使い勝手というだけであれば、
電子マネーとそん色ないんじゃないのか、と感じるほどだ。
これを電子マネーから排除して計数を取るというのは、
おかしくないか?
確かに、
ポストペイ式だと、一定の信用創造機能(売主が、買い手に
信用を与えある)が生じてしまうわけで、同一に論じることは
できないわけだけど。。。

なんか、釈然とせん。
まあ、こういう言い方をしてしまうのも、
おいらの「貨幣観」というものが反映されているのかなあ。
要するに、おいら的には、
貨幣とは信用システムであり、わざわざ「電子マネー」というからには、
単に、現時点で存在しているマネーを代替するだけのことではなく、
電子的な手続きによって、新たに
「創造される」部分についてだけ、他の貨幣とは区別される
マネーとして、「電子マネー」と定義づけたいわけだ。
まあ、こんなところで、おいらの願望を言っててもしょうがないんだが。。。。

さて、話をレポートに戻して、

実際の近年の推移をみると、
発行枚数(同機能を備えた携帯電話の台数)、
決済金額、決済件数、ともに、歩をそろえて
増加している。なお、
レポートでは、実際の発行枚数にかかわらず
実際にはほとんど使用されないものも少なからず
含まれていることが示唆されているが、
実際の発行枚数・端末台数の増加と
決済件数・決済金額の増加とを見比べても、
それがここでの結論に大きな影響を与えるような要素を
含んでいるようには思えない。また、件数・金額については
交通系の企業(要するに、JRその他だな)が発行し、
交通機関の利用のために行われた決済については
統計に含んでいないんだそうである。これは要するに、
定期券の代替手段としての位置づけであるから
そのような扱いになっているのだそうなのだが、
おいら的には、これも違和感ある扱いだ。というのは、
会計的に言えば
定期券は、支払う側から見れば前払費用、
受け取る側から見れば前受収益で、
つまり、前払(前受)利息や前払(前受)賃借料と同じで、
継続的に利用されるものを前払いしているとみなされるのに対し、

SUICAに前払いしたとしても、それは実際に乗車賃として
支払われるかどうか、まだ決まったわけではない、
あくまでも、預け金(預かり金)の状態であるわけで、
支払う側から見れば、一種の前払金、受け取る側から見れば
前受金ではないか、そう思えるんだよねえ。。。
前者は、明確に期限が確定した債権債務、
後者は、期限も使途も不明確なわけで
(そして、それこそが、まさに貨幣の貨幣たる由縁であるはずで)、
いくら、プリペイドしたうちの一定金額が
明らかに乗車料金として支払われることが自明であるとしても
払った時点ではいまだ確定していない、
つまりいまだ「貨幣」なんだから、
やっぱり定期券の代替物だから、除外します、
というわけには、いかないと思うんだよなあ。。。
そうじゃなくて、やっぱり、定期券、というものの利用が減って、
電子マネーによって代替されている、と、
そう考えるべきじゃないのかなあ。。

まあ、それはそれとして、、、、

それにしても、
発行枚数が、12年3月で1.8億枚にたどり着いている、というのは
ちょっと驚いてしまった。
日本の人口が、ま、1億人だとすると、
平均すると、一人2枚近く持っている、という話になる。
(上で触れたとおり、そのうち何枚が実際に使われているのか、
というのは、ともかく、ですよ。)
さらにそれとは別に、電子マネー機能を備えた携帯電話が
2000万台を超えているわけで。。。
もっとも、この、携帯電話の台数については
電子マネーの発行枚数以上に、あてにならない。というか、
どれほど意味があるのか、わからない。
だって、これは、携帯電話を買いかえれば、機能だけは
自然とついてきてしまうわけだから、、、
ちなみに、おいらの携帯電話にも
ついているようです。(よくわからない。。。使ったことないし。。)

他方で、電子マネーの「残高」である。
これは、まあ、最初から電子マネーを「プリペイド式」に
限定しているのだから、
その定義も明確である。要するに、
前払いされ、いまだに決済に用いられていないものが
「残高」ということになる。要するに、
銀行預金から払戻しを受け、
財布に入っているお金の残高、と同じイメージであるわけだが、
こうなってくると、ますます
ここで用いられている「電子マネー」という言葉の意味が、
明瞭になってくる。ここで問題にしているのは、
本当に、「プリペイド式のカード」(電子マネーというより)によって、
どれだけ、決済に際して、「お札」の利用が節約されたか、
というだけのことである。
残高の回転数が、一定のリズムを刻みながら趨勢としては
増加しているが、これは、全体としての残高が増加する一方で
個別の利用者は、むしろ残高を減らし、
こまめにチャージするようになっていることを示唆している。

第2章の「リテール決済の手段に関するサーベイ分析」では、
比較的少額の決済金額帯を中心として
普及が進んでいる、という調査結果が紹介されているが、
これは、もともと、SUICAにせよ、Edyにせよ、コンセプトが
そういうものだから、当然、というのもあろう。
金額が大きくなればクレジットカードのほうが多く利用される、
というのは、ここで言っている電子マネーというものが
定義でプリペイド式に限定している以上、当たり前というのか、
自明の結果で、わざわざレポートする必要があるのかどうか。
(まあ、何事でも、世の中には「予想外の結果」ということが
ありうるわけだから、「予想通りでした」という報告にも
意味がない、とは言わないが。。。これが「電子マネーに
たとえばiDealも、含みます」と、なれば、
いっぺんに結果が逆転しかねない。どうせ調査するなら、
そちらを調査してほしい。)

さて、最終的な結論は3つにまとめられているが、
これが、脱力物の自明の結論である。
①比較的少額の支払金額タイを中心に普及が進んでいる
②1000円以下の金額帯では、地域による利用環境の違いがうかがわれる
③シニア層の利用が少ない

もちろん、どれほど素晴らしい研究成果であっても、
その背後には、無数の、地道な研究が隠れている。
だから、こうした地道なレポートを、その結論が
地味であるがゆえに、研究価値のないもの、とみなすような
下司な態度はとりたくない。けれど、
このレポートの結論は、対象を恣意的に絞り込んだ結果、
自明の結論が導き出されてしまった、としか
思えないのである。
ということで、
決して、現在あるいは今後問題になりうる
電子マネーの本質に迫るようなものではない、と感じられてしまうのだ。
これはちょっといただけない。
電子マネーの普及にかかわる問題は、
当然、将来の決済手段全般に対する問題をはらんでいる。
そんなことは、誰よりも日銀決済機構局の本人たちが
一番よく知っているはずだ。だからこそ、
現時点では、こういう穏当なレポートしか出せない、というのであれば、
それも致し方ないのかもしれないが
(特に、このレポートは、個人の名前じゃなくて、
「日銀決済機構局」名だからねえ。あんまり無責任なことを
書くわけにはいかない、というのは、
そりゃそうなんだろうけど、、、)、
もうちょっと、読み手の好奇心にこたえる
「サービス精神」というものを求めたいものである。


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1 コメント

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Unknown (tetos)
2016-05-11 20:59:00
こんばんは。^ - ^

私鋳貨幣と言えばビットコインがまず連想されますね。それらと通常の政府中銀が発行する貨幣との差は、やはり強制徴税力を含む資産的な信用の度合いなのではないでしょうか?
名目・不換貨幣は実体・兌換貨幣と比べて裸の王様だと思っています。みんなが価値があると信じているから、成立する。しかし、その王様にどれだけの資産や権力があるのか、すなわち信用があるのか、その差だと思うのです。
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