断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

黒田さんの講演を読んでいて、ちょっと思ったこと。(講演内容とは関係ない)

2014-03-25 23:06:24 | 日銀ウオッチ
黒田さんが3/20に商工会議所で講演をしている。
「なぜ「2%」の物価上昇率を目指すのか」
とのタイトルである。


講演では、冒頭、
デフレがなぜ悪いのかが論じられる。
日銀がインフレ目標を2%においている点について

「この点については、「物価が上がると生活が苦しくなるのではないか」とか、
「物価だけが上がって賃金が上がらないのではないか」といった声も聞かれるところです。
また、企業にとっては、「物価上昇により仕入価格が上昇した分を販売価格に
転嫁できないのではないか」という懸念もあるかもしれません。」

と、デフレの問題点を説明するところから始まる。
デフレの下では、製品やサービスの価格を引き上げることができず、
売上や収益は伸びない、だから人件費や設備投資をできるだけ抑制する、
家計では、賃金が上がらないから、消費を抑えようとする、家計が
消費を抑えるから、企業は消費を取り込むため、製品・サービス価格を引き下げる。
また、デフレは企業の投資判断にも影響する、設備投資判断に重要なのは
名目ではなく実質金利だ、デフレ期待が定着すると、実質金利は高止まりする、
だから、云々、、、、

そして、日本が「デフレ均衡」に陥った、ということが
具体的な数値を挙げて説明されている。

ところが、その次の言葉が、やや変だ。
4ページ目になると、
「この間、消費者物価はどの程度下落したかご存知でしょうか。」
と、なり、そして、
「実は、98年から12年まで、平均してマイナス0.3%にすぎません」
と続き、「消費者物価でみて変化率がほぼゼロ%であっても、実際にはデフレである、
ということを意味しています」と、続く。そしてその次、
「企業の実感という意味でも、この15年間、短観調査で、製品・サービスの販売価格が
下落している、と答えた企業の割合は、上昇している、と答えた企業の割合を
ほぼ一貫して上回ってきました」と続くのだが。。。
その点に嘘はないと思う。でも、実際には、これはあんまりあてになるものではない。
と、いうのは、同じ時期、日銀短観を見る限り、
かなりの回数、「仕入れ価格」に関しては、「上昇」-「下落」が
プラスになっているのである。(実際には、マイナスが続いている時ですら。)


かくいう当のおいら自身、
回答するときには、だいたいいつも
販売価格は下落、
仕入価格は上昇、と、書いてしまっている。

本当のことを言えば、もともと、日銀短観アンケートに回答するような立場の人間、
つまり、総務畑や財務畑の人間は
普段からそう考えるように訓練されているし、
要するに、「保守的に」物事を考えるように
癖がついているのである。
まあ、会社によっていろいろ違いがあるだろうが、
営業部の人間が回答する会社が多ければ
この回答も、ずいぶん違ったものになるはずである。

それなら、販売価格予想と仕入れ価格予想を足して2で割るとか、
そうすれば、いいようなものだが
そんなことはしない。「販売価格予想バイアス」をそのままにして
つまりご自分に都合のいいところだけを切り出して、
「消費者物価の変化率がゼロであるというのは、
実はデフレなのだ」と、やっているのである。
それにしたって、日銀短観あるいは概要だけでも見ていれば
「販売価格の予想」のすぐ下に
「仕入価格の予想」があり、そして、しばしば(というか
頻繁に)両者が矛盾した傾向を示している、ということは
誰でも気が付くことである。
なんだって、こんなつまらないところで
恣意的な資料選択をするのだろう。
ご都合主義にも、程があるのでは、と感じる。

小さな話にすぎないが、
こういうところが、今の安倍さんによって指名された諸要人たちは
みんな共通しているような気がするのだ。
つまり、原理原則なんかないのである。
ただ、自分に都合がいいことを言ってさえいればいい、と
そういう風に見えてしまう。
NHKしかり、内閣法制局しかり、、、


さて、安倍さんの話はともかくとして、
大体、
なぜ、企業は、物価水準が安定しているときに、
販売価格は低下、仕入価格は上昇、
という予想をしがちになるのだろうか。

一つには、すでに述べたとおり
普段からそういう考え方をする人たちが
回答者になっているからだ、ということがあげられる。
これが多分最大の原因だろう。
ただそれでも、そういう傾向が強く出るときと
それほど強くないときとがある。
これがどうしてか、考えてみると、

一つの可能性としては
これは要するに、企業(の担当者)の心理状況を
表現しているものだ、ととらえることができるのではないだろうか。

誰でもそうだと思うけれど、
自分の状況が不安になると、何事も悪い方へ悪い方へと
予想をするものである。
仕入価格が上昇する一方で、販売価格は低下する。
その企業にとっては非常に困ったことが起こることを予想する人が多い、
ということは、
実は、それだけ企業の担当者の心理が不安で、自身がない(将来について
確信が持てない)状態になっていることを意味しているのではないだろうか。

「確信の状態」というのは、まあ、ケインズ派に
よく出てくる考え方だ。
単に、将来起こることことの確率を予想して、それがいいか悪いかだけではなく、
そうした確率予想そのものに対してどれだけ信頼を置くことができると考えているかが
企業の投資水準を決めるうえで
大いに影響がある。投資収益に対する予想スケジュールが崩壊する状態とは、
この不安が極端に大きくなる状態のことを指す。
だから販売価格予想とか仕入れ価格予想というのは、
企業が合理的に将来を予想した上で出されている数字、というよりは
その乖離が、企業の担当者の精神的状態を表している、ととれるのではないだろうか。
販売価格下落を予想する企業の数が多く、
仕入価格の上昇を予想する企業の数が多い、という状態は
それだけ、企業の担当者が、将来に自信を持てなくなっている表れと
みなすことができる、と思う。
単に、販売価格下落予想が上昇予想を一貫して上回っている、ということだけで
「消費者物価が安定している状態、というのは
デフレなのだ」と、いうべきではないのではないかな、
なぞと思ったりもしたわけだ。

講演内容と全然関係なくって、ごめんなさいね。


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