先日、萩の台から矢田丘陵を歩き、平群の方向に降りてきました。
今回は私が歩いた逆まわりになりますが、近鉄平群駅の近くの 安明寺叶堂跡「叶堂」を記録したいと思います。
←ココ;奈良県生駒郡平群町三里 安明寺叶堂跡「叶堂」(図 平群町教育委員会 参考)
以下 安明寺叶堂跡「叶堂」を叶堂
近鉄平群疫の近くには 次のように掘られた常夜灯があります。
叶堂道
東へ三一?
まずは叶堂に行ってみましょう…。
叶堂には木の板で作った鳥居があります。
私はこういった形の鳥居は、大阪の民族博物館などを含む博物館の他では見かけたことがありません。
素朴な鳥居に、村人の厚い信仰真を感じるのでした。
鳥居には消えかかった叶堂と言う文字が書かれています。
鳥居を挟んだ建物は比較的あたらしいようですが、中にはたいそう立派な観音様がいらっしゃるそうです。
この日は多くの村の女性が集まっておられ、観音様を見て下さいと何度もおっしゃって下さったのです。
しかしハイキングのほこりと汗で汚してはいけないと思い、ご辞退申し上げました。
次々の村人が集まってこられます。
その日は「じゅうしちや」のお参りだったそうです。
時計を見ますとお昼の二時過ぎ。お昼まっただ中です。
私が、
「じゅうしちや は十七夜と書くのですか?」
と尋ねますと、夜でよいそうです。
毎月17日には叶堂に集まり。ご住職さんに来ていただき、手を合わせるのだそうです。
大辞泉によると じゅうしち‐や【十七夜】とは次のように出てきます。
1 陰暦17日の夜。
2 陰暦8月17日の月。立ち待ち月。
また、日本国語大辞典では次のようにあります。
1 じゅうしち‐や[ジフシチ:]【十七夜】-日本国語大辞典
〔名〕陰暦の毎月一七日の夜。陰暦八月一七日の月。
立待月(たちまちづき)。
《季・秋》*俳諧・犬子集〔1633〕九・秋「立て見居て見待は苦しき 十七夜十八夜とて月遅み〈重頼〉」
2 じゅうしちや‐だいまち[ジフシチヤ:]【十七夜代待】-日本国語大辞典
〔名〕陰暦十七夜の月待ちの時に、米銭をもらって神社に代参する山伏、行者。
また、のちには一種の乞食をいった。
*家忠日記‐天正一九年〔1591〕五月一七日「十七夜代待のけん蔵主」*浮世草子・好色五人女
3 じゅうしちや‐まち[ジフシチヤ:]【十七夜待】-日本国語大辞典
〔名〕陰暦八月一七日の夜、月の出を待って祈願すること。
*俳諧・滑稽雑談〔1713〕八月
「和俗、又月待を行ふ、先は三箇月待初光を拝し、次に十三夜待、扨は十七夜待より廿三夜までを、七夜待と称し、是を七観音という
わたくしがお話を聴かせていただいた女性は 90歳だそうですが、お若くいらしてどのように見ても70代のお元気な方でした。
昔は学校の先生をされていたらしく、まじめで気丈な印象を受ける方です。
仮にYさんとでも呼ばせていただきましょう。
Yさんは三里と白畑谷村にある小学校のとを結ぶ山道や平群だにのお話を聞かせて下さいました。
昔は小学生の通学路だったと言う険しい山道はちょうどこの日、私たち夫婦がゴロゴロと岩が道をはばかり、倒木が道を塞ぐ坂道。蜂に追われながら、下山した道でした。
今は小学校が増え、この道は使わなくなったことを、眼を潤ませながらなつかしそうに教えて下さいました。
叶堂は古くから疫病の神として、地域に信仰されてきたと教えていただきました。
Yさんは
「観音様がいらっしゃるので、疫病も流行らず、こうして無事に生活できるのです。信仰することは大切です。毎日手を合わせています。」
などとおっしゃっていました。
民俗学関係の本には疫病や牛頭天皇(ごず)や朱色で描いた鍾馗さまの話が度々出てきますが、そんなこまごまとしたことは関係ないのでしょう。
叶堂に立派な観音様がいらっしゃって、毎月の十七夜と日々感謝の心を持って拝まれているのでしょう。
素晴らしいお心と信仰心だと感じました。
先ほどから見ていただいていますように、叶堂には多くの石仏や灯籠や石が置かれています。
そして写真上の用に、古い石段もあります。
上には柱跡らしいものがあり、縄で囲んで神域をあらわされています。
Yさんに尋ねますと、火事跡のようです。
そして、火事が起ったようすを色々と教えて下さいました。
ただ、いつ頃の話かは、抜け落ちていました。
お堂は焼け落ちてしまいましたが、地域の方に愛され親しまれている観音様はご健在だと喜んでおられました。
叶堂は独特の雰囲気を持った信仰心の厚い方々に大切にされている神域で舌。
写真上は下山してすぐに目のあたりにする神秘的にさえ感じる叶堂です。
独自の時の流れを持つのではないかと思わせる素晴らしい叶堂でしたが、それと同じくらい魅力的なYさんが貴重な話の数々を教えて下さり、楽しいひとときを過ごすことができました。
Yさんは出会いを喜んで下さり、家や名も告げ、何度も何度も別れを惜しんで下さいました。
ありがとうございました☆いつまでもいつまでもお元気で健やかにお暮らし下さいと心から祈願しております。