2011年度
大阪松竹座 團菊祭五月大歌舞伎
團菊祭五月大歌舞伎夜の部を楽しむ。
夜の部、昼の部と記録する予定ですが、かなりずれ込み、気にかかっている。
歌舞伎記録としては前回の『蘭平物狂』に続き、今回は『弁天娘女男白浪』を記録したい。
菊五郎さんの弁天小僧において、受話器を通して友人から次のような話しを聞いた。(^^)
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菊五郎さんの弁天小僧は何度も見たが、みる度に傷を付ける時間が長くなる。
昔は耳の後ろに紅を付けておき後ろを向いてちょんと三日月に描いた傷。
近年、立体的な傷を春つけておられる。
お顔の大きさのせいか、鬘(かつら)で額の大部分を隠しておられ、傷は鬘の藤額(ふじびたい 前髪)に半分乗っかっている。
花道での坊主持ちに至る前の、ほおずきのお化けに対しての南郷力丸の台詞、
「しかし俺のだから、大きさが合うかなぁ(要約)」
は、本来弁天小僧の方は小さくて華奢なはずだが、観客のわたしは
『羽織は小さいから、弁天、お前の大きな体に入るかなぁ?』
と聞こえてしまう。
弁天小僧菊之助は本来ぴちぴちとしたユニセックス的なかわい嵯峨ある方が、みている方は落ち着く。
体の大きさや年齢を感じさせぬよう演技でカバーしていただければ良いのだが、最近の菊五郎さんの『弁天娘女男白浪』はみていてつらいものがある。
その点ご子息の菊之助丈は力もありかわいらしく弁天小僧にはぴったりなので、そろそろ代変わりしても良いのではないか?
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友人の話しはこんな感じなのである。(^^)
加えて、辛口御免の彼女の話し。
團十郎さんの日本駄右衛門はアクセントに欠けた。
まあこんなものかと、電話越しに笑っていた。
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時蔵丈演じる赤星十三郎は良かった。
赤星十三郎は白波の仲間だが、気品が無くてはならない。
その点において時蔵丈のお顔立ちと仕草と言い回しはぴったりだった。
わたしはどの演目でもこなされる時蔵丈の演じ方が好きだ。
おつきあい下さいまして、感謝しています。
菊五郎さんと團十郎さんの感想は友人のものです。
失礼な点がございましたら、お許し下さい。
ありがとうございました。
今回は夜の部の『弁天娘女男白浪』のみにて失礼申し上げます。
夜の部 蘭平物狂 弁天娘女男白浪 春興鏡獅子
昼の部 女暫 汐汲 極付幡随長兵衛
夜の部 松竹株式会社 歌舞伎美人より▼
一、倭仮名在原系図
蘭平物狂(らんぺいものぐるい)
奴蘭平実は伴義雄 松 緑
女房おりく実は音人妻明石 菊之助
水無瀬御前 梅 枝
壬生与茂作実は大江音人 團 蔵
在原行平 翫 雀
二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
浜松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場
弁天小僧菊之助 菊五郎
南郷力丸 左團次
赤星十三郎 時 蔵
忠信利平 権十郎
浜松屋伜宗之助 尾上右 近
鳶頭清次 團 蔵
浜松屋幸兵衛 彦三郎
日本駄右衛門 團十郎
三、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生/獅子の精 菊之助
夜の部 松竹株式会社 歌舞伎美人より▼
一、倭仮名在原系図
蘭平物狂(らんぺいものぐるい)
奴の蘭平は、須磨で別れた松風を忘れられない主人在原行平のために、松風と瓜二つのおりくを引き合わせます。何も知らない行平はおりくを松風と信じ、機嫌も直ったところへ、捕えていた賊が逃亡したとの知らせ。行平は、刀を見ると乱心する奇病を持つ蘭平ではなく、蘭平の子の繁蔵に追手を命じます。実は蘭平は、行平に討たれた伴実澄の遺児義雄で、行平の命を狙って在原家に奉公しながら、行平を油断させるために奇病を装っていたのでした。その企みがついに露見し、捕手に囲まれた蘭平はついにわが子繁蔵の縄にかかります。
蘭平が刀を見て乱心する前半の物狂いと後半の歌舞伎狂言の中でも屈指の大立ち廻りなど、様式的にも洗練され、大勢の捕手が大活躍する大がかりな技がふんだんに盛り込まれた作品です。
二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
鎌倉雪の下の浜松屋へ美しい武家の娘が供の侍を連れてやって来ます。婚礼の品物を選びに来たと言う娘でしたが、万引きを見た番頭は、娘を責めるうち額に傷を負わせてしまいます。ところが娘の懐から出てきたのは他の店の品。慌てて店の者が詫びてもおさまらず、店の主人は供の侍に百両を渡します。そこへ奥から玉島逸当という侍が現れ、娘が男であることを見破ります。実は美しい娘と見えたのは世間で評判の盗賊、白浪五人男の弁天小僧菊之助だったのでした。
「知らざあ言ってきかせやしょう」から始まる名台詞でも有名な「浜松屋見世先」と、揃いの小袖を着て勢揃いした五人男の名乗りが聴きどころの〈動く錦絵〉と呼ばれる「稲瀬川勢揃い」の二幕です。大当りを取った文久二(一八六二)年の初演時、弁天小僧菊之助を演じたのは五代目尾上菊五郎でした。音羽屋の家の芸として受け継がれる河竹黙阿弥の傑作です。
三、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
江戸城の年中行事である鏡曳きが行われるのに際し、その余興のために小姓の弥生が将軍の前へと引き出されます。弥生は様々な踊りを見せますが、獅子頭を手に踊っているうちに、突然獅子の精が弥生に乗り移り、いずくともなく消えたかと思うと、文殊菩薩の霊獣である獅子の精が出現し、牡丹や胡蝶に戯れ、やがて勇壮な獅子の狂いを見せるのでした。
新歌舞伎十八番の一つで明治二十六(一八九三)年に九代目團十郎によって初演されました。前半の可憐な小姓の弥生と、後半の勇壮な獅子の精の踊り分けが見どころの歌舞伎舞踊を代表する大曲の一つです