乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

『天馬』展  太古の東西交流物語る  奈良国立博物館

2008-05-30 | 美術・文様・展示物

 

   奈良国立博物館『天馬』展

 

 

 先日、奈良国立博物館『天馬』展に行った。

 『天馬』展といった漠然とした展覧会の名前。

 本当なら、みのがしてしまうところだったが、親切な方に教えていただいて、内容を知り、見ることができた。

 感謝の気持ちは大きい。ありがとうございます。

 

 家族も次回の『法隆寺展』と混乱していた。

 内容を伝えると、今回は家族もみたいものがあるという。

 私とて、同様。

 二人つれだって行くことにした。

 

 会場は平日 昼ということもあってかがらがら。

 しかしゆっくりと見て回り、三時間もすると、会場はいっぱいになった。

 

 今回のテーマは、太古の東西交流物語る 奈良国立博物館『天馬』展 、とのこと。

 ことごとく 『天馬』をテーマに世界の美術品を集めた事は、会場を進むに当たり明白。

 

 会場内の展示物で気に入った者に一部を記録しておこう。

 

 

<四騎獅子狩文様錦(奈良・法隆寺)>

 私は高校生の頃から、獅子狩文様が好きだ。

 歌舞伎の荒事のようで、かっこいいではないかと、ひとり、悦に浸っていた事を思い出す。

 

 全体に緑ベースの四騎獅子狩文様錦は、興味深かった。

 保存状態も極めてよい。

 イランと中国の接点が顕著で、馬の尻には『吉』の字が記されている。

 全体はイランの文様であるが、空部分は葡萄や葉っぱなどのイラン的植物文様ではなく、中国の吉祥とされる桃の絵柄が描かれていた。

 よく見ないと見落としてしまうかも知れないが、まさに今、騎士に矢でいられようとしている中央の獅子。しっぽや獅子の躰部分で、種子を表わしている。

 この種子を含めた植物文様もイランではよく見られる柄の一つ。

 一旦切れた種子の絵には真上に向かって茎が伸び、葉が出て、空(上)部分では桃がたわわに実っている。

 こういった種子が伸びていく文様は、イランの文様の中でも非常にポピュラーなもののひとつといえる。

 騎士(王)が獅子を射るといった文様は、古代からイランでは非常に多い図である。

 変形文様も加えると、ペルセポリスなども含めて、数え切れないだろう。

 これは一説によると、王権交代を意味しているともいわれている。

 なるほど、そういう風に考えると、よくある獅子が射られる図と、ペルセポリスの牛を噛む獅子(ライオンのような架空動物)との絵の矛盾点にも説明がつく。

 文様は面白い。

 

<有翼人面形鏡板付・イラン・岡山オリエント美術館>

 これも馴染みの形を示す聖獣。

 テヘランでは考古学博物館に二度ばかり足を運んだが、ここでもこういった形の青銅具をいくつか見た。

 私はこの形が好きである。

 エスファハーンのバザールに行くと、パーフェクト・コピーを取り扱った店が一軒。こういった青銅製の聖獣や、陶器製の聖獣、壺などがある。

 コピーとはいえ店主は胸を張って、

「パーフェクト・コピー。バット、ベリー ビュティフル。」

を連発。

 お値段はコピーだが、驚くばかりに高く、おみやげの域は超えている。

 

<獅子グリフィン形飾金具・イラン・中近東文化センター>

 これも足が特徴的。

 前足は写実で甲も高い。

 後ろ足に至っては長方形で表わし、形を単純化している。

 全体に見て、美しい。

 

<緑釉双口ランプ・中近東文化センター>

 重厚な暗緑釉。

 美しくて、欲しかった・・・・・・。

 ため息がでる。

 

<イタリアの壺類>

 色彩豊か、文様も独自で、見入ってしまう。

 だが、道脇で売られている土産品を思い出すと、気持ちは萎える。

 

<西大寺(同市)の日天・月天像(国宝)とギリシャ陶器の赤像式クラテル(混酒器)>

 馬や馬車に乗る仏神が描かれており、構図の類似性が東西文化の接点を物語っている。

 こういった絵柄は、イランの浮き彫りにも認められる。

 

<竜首水瓶・中国・東京国立博物館>

 イランの花瓶と思って近づくと、中国の物だった。

 形や聖獣の顔文様が似すぎている。

 ここでもイランと中国の交わりが感じられる。

 

<石山寺縁起 第7巻・石山寺>

 この縁起絵巻は岩波新書で読んでいて、一度見てみたかったもの。話の臨場感もあり、感激した。

 

 

 続日本記には走馬は人事に使われたと説明が記されていた。

 なるほど、日本ばかりでなく、諸外国のものを見ても祭事や墓にも使われた物も多い。

 中国をはじめ世界でも白馬や白蛇など、白と吉祥をあわせる事により、一層縁起が良いとされている。

 会場には6割方、白馬が目についた。

 

 他にも好きな展示物がいっぱいで、楽しい時間を過ごすことができた。

 長くなるので、このあたりで止めておくことにする。

 

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『女ひとりドケチ旅』 中国・パキスタン・イラン・トルコ・東欧へ

2008-05-30 | 読書全般(古典など以外の一般書)

 

(イランのシーラーズにある、エラム庭園。昨年の9月16日に訪れた。秋バラには少し時季がはやく、残念。イラン、そして中でもエラム庭園のバラは、有名。

写真はエラム庭園のセラミック製のタイル画。現在のイランでは想像がつかないくらいに刺激的な模様(画)であり、興味深い。)

 

 記録だけ  2008年度 51冊目   

 

  『女ひとりドケチ旅』

   中国・パキスタン・イラン・トルコ・東欧へ

 

 

 辻 みゆき 著         

 BOC出版社    

 1997年4月15日 第1版発行

 214ページ 1500円+税

 

  5月29日、 『女ひとりドケチ旅』中国・パキスタン・イラン・トルコ・東欧へ  を読む。

 面白くて、つい声を立てて笑ってしまった。

 今日は私以外に 家族が二人いたからたまらない。

 自分の世界に入り込み、面白おかしすぎて、とんだ恥をかいてしまった。

 

 この著者、相当の才女。

 ただ、ひとり旅と行っても、いつも誰かとつれだって行動しておられた様子。

 男女を問わず、時には外人、時には日本人。

 果ては終点の留学先でドイツ人学生と、ハッピーエンド。

 幸運な旅で、一件落着。

 読み終えて、安心を胸に、ほっとした。

  

 著者は40日間のシルクロードの旅で、かなり長い間熱を出したり風邪をひいておられたようだ。

 この本を教訓に、次回 機会があるならば、子供にアスピリンなどを多めに持たせてやりたいと感じた。

 ささやかな、親心といったところか。

 

 本書の写真を見ると、著者の 辻みゆきさんは、私から見て、非常に好感の持てる 知性的で行動的な美人であった。

 そんな素敵な女性がゆえに、親の立場で はらはらしながら読んでしまう。

 時にははらはら、時にはどきどき。

 楽しい時間を過ごせる一冊。

 

 

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