<「書の至宝ー日本と中国」展>
<真草千字文(しんそうせんじもん)>・・・智永(ちえい、陳ー隋時代)筆
上記の文字は上から下へ、同じ文字を
右側に楷書、左側に草書で書かれてある。
識字、習字の教本と考えられる。
閑 処 沈 黙 寂 寥 求 古 尋 論
散 慮 逍 遥 欣 奏 累 遣 感 謝
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<智永(ちえい)>
王羲之(おうぎし)七世の孫と伝えられているが、陳ー隋時代とは南北
朝時代から隋(581-618年)によって統一(589年)された前後の557
年から618年あたりだから、王羲之の200年以上後の七世紀の時代の
人物ということになる。
彼は仏教の僧で、王羲之の書を学び、特に楷書、草書に優れていたと
いわれているが、30年間、お寺にこもって真草千字文を八百巻書写し、
浙東の諸寺に一巻ずつ納めたという。その一巻が日本にあるこの
<真草千字文>であるとされている。
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<真草千字文>・・・真とは楷書、草は草書の意
真草千字文とは、一字も重複のない文字を千文字選び、四字ずつを
一句として、二百五十句の韻文としたものである。内容は身の回りの
自然のことや生き方にまで及んでいるということであるが、もともとは
王羲之の書の中から文字を選んだということだから、習字や識字の
テキストとして作られたもののようである。
各頁は一行十文字を四行収め、標題を含めて全二百三行にわたると
いう。楷書(真)と草書で書いたので、真草千字文という。
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<日本への伝来>
奈良時代に王羲之の搨摸本(とうもほん)とともに将来され、聖武天
皇の遺愛品として東大寺に献納されたという。
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<この書から受ける印象>
はじめから目に止まった書であるが、楷書と草書が二行に並んで書い
てあり、柔らかい中にも安定感と重量感があり、確かな主張が感じら
れた。
自分の好きな文字を選んで練習するには良い教本になると感じた。
王羲之によく似た書体だが、今まで知っている王羲之の書体よりも少し
角が柔らかいような気がする。こころもち、王羲之の<妹至帖>や「九
月十七日・・・」で有名な<孔侍中帖>に比べると、楷書は本物より少し
柔らかく、草書はこれを書いた人物(智永)流のタッチが表れているので
はないか、という印象である。
私は<妹至帖>や<孔侍中帖>の王羲之の書体の方が好きだが、智
永の<真草千字文>も教本としてみれば親しみがあり、書きやすい書体
であると思われる。人それぞれ、好みの問題である。
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<参考>
王羲之「孔侍中帖」・・・現代における臨書(大正九年)
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