悠々time・・・はなしの海     

大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

書の至宝展<智永筆の真草千字文>

2006-02-06 22:00:01 | 文学・文芸・芸術

<「書の至宝ー日本と中国」展>

<真草千字文(しんそうせんじもん)>・・・智永(ちえい、陳ー隋時代)筆


        


          上記の文字は上から下へ、同じ文字を
          右側に楷書、左側に草書で書かれてある。
          識字、習字の教本と考えられる。


          閑 処 沈 黙 寂 寥 求 古 尋 論 
          散 慮 逍 遥 欣 奏 累 遣 感 謝



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

<智永(ちえい)>

王羲之(おうぎし)七世の孫と伝えられているが、陳ー隋時代とは南北
朝時代から隋(581-618年)によって統一(589年)された前後の557
年から618年あたりだから、王羲之の200年以上後の七世紀の時代の
人物ということになる。

彼は仏教の僧で、王羲之の書を学び、特に楷書、草書に優れていたと
いわれているが、30年間、お寺にこもって真草千字文を八百巻書写し、
浙東の諸寺に一巻ずつ納めたという。その一巻が日本にあるこの
<真草千字文>であるとされている。


"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
<真草千字文>・・・真とは楷書、草は草書の意

真草千字文とは、一字も重複のない文字を千文字選び、四字ずつを
一句として、二百五十句の韻文としたものである。内容は身の回りの
自然のことや生き方にまで及んでいるということであるが、もともとは
王羲之の書の中から文字を選んだということだから、習字や識字の
テキストとして作られたもののようである。

各頁は一行十文字を四行収め、標題を含めて全二百三行にわたると
いう。楷書(真)と草書で書いたので、真草千字文という。

"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
<日本への伝来>

奈良時代に王羲之の搨摸本(とうもほん)とともに将来され、聖武天
皇の遺愛品として東大寺に献納されたという。

*****************************************************

<この書から受ける印象>

はじめから目に止まった書であるが、楷書と草書が二行に並んで書い
てあり、柔らかい中にも安定感と重量感があり、確かな主張が感じら
れた。

自分の好きな文字を選んで練習するには良い教本になると感じた。
王羲之によく似た書体だが、今まで知っている王羲之の書体よりも少し
角が柔らかいような気がする。こころもち、王羲之の<妹至帖>や「九
月十七日・・・」で有名な<孔侍中帖>に比べると、楷書は本物より少し
柔らかく、草書はこれを書いた人物(智永)流のタッチが表れているので
はないか、という印象である。

私は<妹至帖>や<孔侍中帖>の王羲之の書体の方が好きだが、智
永の<真草千字文>も教本としてみれば親しみがあり、書きやすい書体
であると思われる。人それぞれ、好みの問題である。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

<参考>
 王羲之「孔侍中帖」・・・現代における臨書(大正九年)


          


******************************



以前の関連ページ(2005‐12‐27)はここをクリック→<王羲之と淳化閣帖>

以前の関連ページ(2005‐12‐26)はここをクリック→<書道博物館と王羲之>




******************************

最新の画像もっと見る

コメントを投稿