悠々time・・・はなしの海     

大学院であまり役に立ちそうもない勉強をしたり、陶芸、歌舞伎・能、カメラ、ときどき八ヶ岳で畑仕事、60代最後半です。

坂田藤十郎襲名披露口上と出演者の系譜

2006-01-22 18:43:01 | 歌舞伎・能

東京・歌舞伎座での坂田藤十郎襲名披露「口上」は、夜の部の二番
目、「藤十郎の恋」の次に行われる。新聞報道によれば、皇太子殿
下も鑑賞された、という。「口上」は誰が襲名した場合でも、実に
楽しいものだ。





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<江戸時代の口上と現代>

江戸時代の「口上」は、開演前に演目や配役などを読み上げる
ことを専門に担当する名人(例えば、水島四郎兵衛)などがい
たようだが、現代では歌舞伎界の幹部や、一門の幹部、同僚、
後輩など、親しい役者が一同に並んでお祝いを述べるやり方が
一般的になっている。

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<京都南座の口上>

今回は上方歌舞伎の復権を目指して231年振りに坂田藤十郎
の大名跡を襲名するということもあって、上方歌舞伎に馴染みの
ある役者が中心になっているせいか、なんとなく暖かい雰囲気が
する。坂田藤十郎襲名披露は、12月の京都南座からスタートした
が、京都はそもそも初世坂田藤十郎縁りの地であり、そこに人気
の片岡仁左衛門や尾上菊五郎が加わり、襲名披露公演は熱気
に包まれた。

その南座の口上で、藤十郎の長男翫雀(かんじゃく)が「山城屋
(父、藤十郎)のよきライバルとなれるよう・・・」と述べた。
先行き、中村鴈治郎を襲名するであろう長男の決意の現われと思
われる。新藤十郎も嬉しかったに違いない。今後、安心して新坂田
藤十郎の役作りに専念できることだろう

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<歌舞伎座の口上>

京都を皮切りに、正月は東京・歌舞伎座だが、2月の博多座を含
めて3ヶ月連続で「披露口上」を取り仕切っているのは、85歳の
長老、中村雀右衛門である。雀右衛門は、「夕霧名残の正月」の
「夕霧」に出演するほか、口上を取り仕切る。健康に留意してもら
いたいと願わざるを得ない。

<中村雀右衛門>
現在、歌舞伎や新派、長唄、鳴物、義太夫、三曲、日本舞踊など
の保存、育成、支援活動などをしている社団法人「日本俳優協会」
の会長、「日本伝統歌舞伎保存会」の会長を務めている。高齢にも
かかわらず現役として活躍している。人間国宝、文化功労者、文化
勲章受賞者でもある。

坂田藤十郎<山城屋>の家紋「星梅鉢」

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<歌舞伎座の口上>出演者



  → → → → → ◎   ◎          →
 ↑                            ↓
  - ― ー ー ー      ← ← ← ← ←  

<口上の順序>

上記のとおりであるが、真ん中に、中村鴈治郎改め、坂田藤十郎
と中村雀右衛門が並び、左右の一番端には、向かって右に松本幸
四郎、左に中村吉右衛門が座る。

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<雀右衛門から幸四郎へ>
初めに、雀右衛門が襲名の披露を述べた後、向かって一番右端に
座る松本幸四郎に飛び、幸四郎が祝辞を述べた後、隣に並ぶ片岡
我當から順に中心に向かって、片岡東蔵、中村時蔵、中村歌昇、
中村歌六、中村魁春、中村梅玉と続く。

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<梅玉から吉右衛門へ>
ここから、一番左端に座る中村吉右衛門へ飛び、そこから中心に
向かって順次、右側の役者に引き継がれてゆく。片岡秀太郎、
市川段四郎、中村福助、中村壱太郎、中村扇雀、中村翫雀と進み、
初舞台の中村虎之助を飛び越えて、本命の新坂田藤十郎となる。
藤十郎が口上を述べた後に、藤十郎から初舞台の虎之助が紹介さ
れる手順である。





<口上の中身>

口上の中身は、各人の性格や、年齢・立場、それに坂田藤十郎と
の関係などによっていろいろである。皆さん、知恵を絞って話を
するのだが、今回は襲名する本人が歌舞伎界の既に大幹部なの
で、あまりふざけた話も出来ず苦労したのではないかと思われる。

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<口上の決まり文句>

その①
今回に限らず、歌舞伎の襲名披露において必ず出る文句
「このたび、松竹、永山会長のご承諾(お許し)を得まして・・」
今回であれば、雀右衛門、藤十郎の挨拶の中に出てくる文句。

その②
「いづれもさまにおかれましては、(今後とも、なにとぞご支援、
 ご鞭撻のほど・・・)」
各人の口上の中で、観客に対して、必ず「いづれもさま」という。

その③
「(・・・・御(おん)願い奉る)次第にござりまする。」
「(・・・・・お祝い申し上げる)次第にござりまする。」
各人の口上の一番最後の言葉。このときの両手の手のひらは
床にべたっと着けるのではなく、両手の三つ指か四つ指を床
に垂直に立てるような感じで頭を下げる。独特の言葉であり、
独特のポーズである。
ただし、雀右衛門や藤十郎は、両手を床に着けて深々と頭
(こうべ)を垂れる。

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<歌舞伎座襲名披露公演出演者系譜>

<関西の名門>
関西歌舞伎の名門は、中村鴈治郎家と片岡仁左衛門家である。
中村鴈治郎家は、中村歌右衛門家と密接な関係にある。

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<中村歌右衛門家>
故6代目歌右衛門系の長男梅玉、次男魁春、門弟筋の中村東蔵、
東蔵の長男玉太郎が出演。

故6代目歌右衛門の兄の故5代目中村福助系からは、当主芝翫が
病気のため欠場しているが、長男の当代福助と次男橋之介が出演。
(余談、福助と橋之介の姉は当代中村勘九郎の妻)

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<松本幸四郎家、中村吉右衛門家>
中村雀右衛門と姻戚関係にある松本幸四郎家からは、松本幸四郎
と弟の中村吉右衛門、それに幸四郎の長男染五郎が出演。今回の
口上では、幸四郎と吉右衛門の二人が東西の抑えとして座った。

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<中村雀右衛門家>
中村雀右衛門家は、雀右衛門と長男の大谷友右衛門が出演(今回
は出演していないが、次男に中村芝雀がいる。)。
中村雀右衛門は、中村歌右衛門系であるが、出身は大谷友右衛門
家であり、先代の市川団十郎、松本白鴎(先代松本幸四郎)、先々
代の尾上松録三兄弟の妹と結婚しており、姻戚である。

その中村雀右衛門家というのは、嘉永(1850年前後)年間の4代
目中村歌右衛門の門弟筋からでたが、当代まで血縁関係はない。
3代目までは大阪生まれで関西歌舞伎の名跡、昭和2年に没して
から昭和39年まで途絶えていたが、大谷友右衛門が映画界から
復帰して雀右衛門の名跡を継承した。

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<大谷友右衛門家>
大谷友右衛門家というのは、江戸時代の中期、享保年間に初代
大谷広右衛門が出て、その弟子筋から弟子へと受け継がれてきた
もので、7代目友右衛門(現4代目中村雀右衛門)は6代目の養子
である。8代目友右衛門は、現4代目中村雀右衛門の長男である。

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<中村歌六家>
中村歌六家は3代目中村歌右衛門の門弟筋であるが、家系の
名跡としては、家六のほか、時蔵、吉右衛門、もしほ、歌昇、芝
雀、獅童、映画俳優で萬屋(中村)錦之助、中村嘉葎雄などが
ある。今回は、中村吉右衛門、歌六、歌昇、時蔵が出演する。

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<関西の名門、片岡仁左衛門家>
8代目片岡仁左衛門は、江戸末期に初代中村歌六の娘を妻とし
ており、その子供の三男、四男系が交互に片岡仁左衛門の名跡
を継承して今日に至っている。従って、中村歌六、歌昇、時蔵など
とも血縁関係にある。

その片岡家からは、故13代片岡仁左衛門の長男我當、次男の
秀太郎、三男の15代仁左衛門(京都南座)と、我當の長男、
進之助が出演している。もう一方の故14代片岡仁左衛門系か
ら三男芦燕(ろえん)と次男市村吉五郎の長男市村家橘(かき
つ)が、また、門弟筋に当たる片岡市蔵が出演している。

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<尾上菊五郎家>
故12代片岡仁左衛門の次男が、市村羽左衛門家へ養子に行っ
て名乗ったのが市村吉五郎だが、市村羽左衛門家は尾上菊五郎
家と兄弟であり、尾上・市村家は、尾上梅幸、九朗右衛門、
菊之助、坂東彦三郎、亀三郎、市村家橘、萬次郎などの名跡を
用いる。尾上家は、当代尾上菊五郎が京都南座に出演している
(なお、尾上家は故6代目の娘の結婚によって、中村勘三郎一
家と姻戚関係にある。)

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<市川段四郎家>
市川団十郎の門弟筋の家系として市川段四郎家と市川右団次・
左団次家がある。段四郎家は猿之助、段四郎など、右団次、
左団次家は右之助、男女蔵、門之助、高麗蔵などであるが、
今回は、段四郎、右之助、高麗蔵が出演している。

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<江戸の坂東三津五郎家>
坂東三津五郎は代々、舞踊の家系である。親戚関係にある
守田勘弥は有名な江戸守田座の座元の家柄である。名跡と
しては、坂東玉三郎、吉弥、弥十郎、秀調などがあるが、
今回は秀調が出演している。

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<中村鴈治郎家>
中村鴈治郎家からは、長男の中村翫雀と翫雀の長男の壱太郎、
次男の中村扇雀と扇雀の長男、今回初舞台披露の虎之助が出演。
(余談だが、藤十郎の奥様は扇千景、藤十郎の妹は中村玉緒、
 藤十郎の叔母の亭主が映画俳優の故長谷川一夫)

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<坂田藤十郎>
現在、社団法人「日本俳優協会」には、会長に中村雀右衛門
副会長に中村芝翫(しかん)と坂田藤十郎がいる。芝翫は3月
で78歳、人間国宝である。藤十郎は74歳で、人間国宝、
文化功労者ある。


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初舞台「中村虎之介」

初舞台の「虎之介」は、初舞台とは思えないほど長時間に
わたり見事な演技を見せた。将来が楽しみである。おじい
ちゃんの坂田藤十郎襲名披露の舞台が、虎之介の初舞台
の披露となったことは本人にとってきっといい思い出になる
ことだろう。




虎之助君、ご苦労様でした。              (おわり)
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