都合により暫く休業いたします
一年のうち何度この張り紙を見ることだろう
今回は排煙の調子が悪く隣のビルからクレームがきてたから
何か対策を講じるんだろう
関西テレビの真ん前なある立ち呑みとり坊、焼鳥屋さん
最大で12人ほど入れるこの店は18時開店でいつもいっぱい
出遅れると一巡目には入れない人気店
しょっちゅう休むし、焼鳥は焦げてることも
写真撮影禁止で４人以上はおことわり
大将一人やから出てくるのもそれなりの時間がかかるし
勘定も微妙に高かったり安かったり
立ったまま飲み食いしないといけないし大将は無口
でもね
開店そうそう10人以上の注文を間違えなく焼きます
一人５本としても50本以上、紙にも書かず丸暗記
飲み物も洗い物もサイドメニューもすべて一人でこなす神業
大将が忙しいので皆一人でもくもくと飲んでいます
無駄口を叩かず己の食の世界に埋没しています
大将が忙しいので追加注文のタイミングが難しい
空気が読めないとこの店の客は務まらない
この店では塩で頼むひとよりタレを好むひとが多い気がする
よく焼けた皮にタレがジュってしみこむ
タレは表面にのっていても美味しくない、染み込まないと
染み込む為には良く焼けて、からっとしていないとダメなんだ
焼きの甘い店は塩を勧めるし、タレもとろみがあり纏わせるだけ
鶏の脂と甘辛い味は最高の相性
飲むのは島美人の水割り
こんなお店ではプレミアム焼酎は似合わない
焼酎の芋臭さが焼鳥の味を倍加させる
この店のスペシャリテはもも味噌
串に刺したももを味噌に漬け込み味噌ごと焼き上げる
こんなの食べたら焼酎がすぐ乾いてしまう
厚揚げも捨てがたい外はカリッと中はプルプル
一人で来てるおっさんの払いは強烈だ
6000円以上一人で払ってるおっさんを見たことあるし5000円ならザラだ
一串130～200程度なのに
最近は店の人とダラダラしゃべりながら飲む人が多いように感じるが
こちらのお店は硬派である
何も大将が怖いんではない、あまりに忙しそうだから誰も喋りかけない
この空気感が好きで通ってしまう
もう100回ぐらいになったろうか
ある日俺の横に女性が一人で立った
何か喋りたそうに横でタコ踊りをはじめやがった
普段ならそれなりに相手してやるのだがこの店には釣り合わない
俺の顔を覗き込みやがったので
自分のなかで最高に怖い顔をして睨みつけてやった
可哀想な気がしなくもないがこれが酒場の教育である
おかしなところに首を突っ込んでちょけても許してもらえないのである
口いっぱいにかしわを頬張り焼酎で流し込む
そして虚空を睨みつける、そんな酒場なんです
