tyokutaka

タイトルは、私の名前の音読みで、小さい頃、ある方が見事に間違って発音したところからいただきました。

パン屋さんの先見性

2006年04月10日 22時44分33秒 | Weblog
実家の近くを流れる富雄川。その中流の一角に神社がある。この神社はどこにでもある町中のお社と行った具合だが、毎年二月になると「粥占い」というのを行う。要は占いの方法として極めて簡単なのだが、粥を作って、その中に竹の中身をくりぬいたものを差し込む。上げてその竹を割り、中の小豆の数を調べてその年の作物の実り方を占うというものである。この伝統儀式は奈良県の重要無形文化財に指定されている。この神社の裏側一体が広大な山であり、その複雑な地形は本当に行き慣れないと迷う事になる(ここが以前書いたフィールドだ、DVC-Molilさん)

さて、この神社の由来をひもとくと、縄文時代の中期に初代神武天皇が白庭山遠征の際、立ち寄り陣営を築いた場所であるとされる。しかし、白庭山というのがよくわからない。

最近、交通の便が悪く、住宅地としては余りふるわなかったこの富雄川の上流に電車が開通した。けいはんな(京阪奈)線と呼ばれる線である。その駅の一つに、「白庭台(しろにわだい)」という駅がある。そう、神武天皇が攻め込んだ土地とは、この白庭台のことだったと私は考えている。しかし、山というには少し低いかも知れない。さて、この土地、奈良の富雄からバスに乗っても30分はかかる場所である。どちらかと言うと東生駒からバスに乗る方が良いのだが、それにしたって、遠い場所であった事は確かだ。

さて、妹は兄と違い中高大の一貫校(私立)通った。そこで出来た友達の一人がここに住んでいると聞いて尋ねていった。もうだいぶん前の話だ。その頃、その友達のお父さんはリーガロイヤル(ホテル)でパンを焼く職人だったそうだが、そこを退職し店を出したのがこの白庭台だったわけだ。勿論当時は家が数えるだけしかなかった。そのお父さんは曰く

「あそこの角を曲がったところに駅が出来るんですよ」と。

聞いた当時は、とても遠い未来の話に思えたものだが、開通してしまうと、あっという間だったと思う。

さて、その駅を妹と母がドライブがてら見に行ってきて、そのパン屋さんに寄ったそうだ。なんか買おうと思うと品数が少ない。しかし食パンだけはずらりと並んでいる。買えるのかと聞くと、すべて客の注文品だそうだ、そしてまた朝から売り出したパンの大部分はほとんどが完売という状態に近かったそうだ。

何も無いくらいの場所に土地を買って、パン屋を出したのだが、今回の鉄道開通に伴い、乗降客が増えた結果、この店を訪れる客が増えたのだろう。

しかし、味が悪くては、鉄道が開通する今日まで店を続ける事は難しかったと思う。そう考えると少ない人口の街でもそれなりに喜ばれて店を続けるという実力があったことは確かだ。実際、その店は何度か、タウン誌などの取材を受ける事もあったくらいの有名な店だとも妹が話していた。

商売人にとってどこに店を構えるのかは重要な判断の一つである。いわば先見性が試されるのだ。そしてまた、そこで活かす腕の高さも重要なのだろう。