循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

東南アジアの環境政策

2009年08月26日 | 廃棄物政策
◆中国が環境ビジネスに進出?
 東京大学の宮田秀明教授がでアメリカと中国が環境ビジネスで競いあっている状況を以下のように報告している(前摂南大学の宮田教授と同姓同名だが、まったくの人違いである)。

《オバマ政権になって、米国の環境政策は一変した。京都議定書にサインしながら批准しなかったことを思えば、大した変身ぶりだ。そして今度は中国が変身を表明している。8月5日の日本経済新聞の報道によると、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電を中心とした再生可能エネルギー発電によって、2020年末には発電量の12%を賄うというのだ。「発展途上国にCO2削減を迫るのは、既に大量のCO2を放出して経済的繁栄を享受している先進国の身勝手な論理だ」と言っていたのが嘘のようだ(「日経ビジネス」8月24日号)》。

だが中国は環境で商売する前に解決すべき課題を山ほど抱えているのではないか。
「東京23区のごみ問題を考える」ブログが貴重な情報を提供してくれた。中国各地の実態が10例以上紹介されているが、とりあえず2本を同ブログから再掲させていただく。

☆中国のゴミ焼却場による汚染拡大、世界中に被害の恐れ(09/08/16)
 米ニューヨーク・タイムズ紙は8月12日「中国のゴミ焼却場が世界を脅かす」と題した記事を掲載し、中国のゴミ焼却場から発生するダイオキシンや水銀などの汚染物質が、ジェット気流に乗って米国を含む世界中に広がっていると伝えた。
 また、中国の多くのゴミ焼却場では、環境対策にバラつきがあることも問題になっている。極端な例では、広東省の深セン市宝安の焼却場では、ダイオキシンやその他の汚染物質は検出されていないが、一方、同市の龍崗にある焼却場からは、黒煙が吐き出され、異臭が充満し、住民からの苦情が殺到している。
 宝安の焼却場では、焼却コストが龍崗の10倍かかり、国や地方などでゴミ焼却場に関する基準があいまいなのが現状だ。
 焼却後に残る灰にも、ダイオキシンやその他の汚染物質が含まれている。それらの灰を埋め立てる場所は少なくなっており、灰はそのまま捨てられているという報告もある。【大紀元日本】(写真:北京の大気汚染=大紀元新聞より))

☆北京:ゴミ処理場悪臭問題で、官民衝突(08/10/30)
北京朝陽区万象新天小区在住する100人以上の住民は10月26日、高安屯ゴミ処理場の悪臭に耐えられず、街に出て抗議を行った。先月の抗議に次いで2度目。同日、100人余りの住民らは万象新天商業地区の噴水プール付近で、高安屯ゴミ処理場から出た悪臭等が住民の健康に危害をもたらし、不便をきたした内容のパネルを展示し抗議を行った。しかし、パネルを展示しようとしたときに、都市管理行政法律執行局の者らがそれを阻止した。目撃者によると、執行局の者は抗議する住民に対して体当たりをしたという。これに対して、不満を募った住民らは心穏やかでなくなり、互いに押し合いになったという。
 一方、抗議に参加した万象新天商業地区「家を保護執行組」グループは10月27日の取材に対して、当日の活動は科学普及の展示活動であるとし、執行局の者が活動を阻止したことは違法行為だと指摘した。      【大紀元日本】
   

注)大紀元(だいきげん)は、ニューヨークに本部を置き、主に中国語で新聞を出版しているメディア。2000年5月、アメリカのニューヨークで法輪功を支持する華僑たちによって設立された。 日本では東京都台東区に事務所を置き、中国語版を2001年、日本語版を2005年から発行。東京都の秋葉原駅周辺の路上で紙面の無料配布などの宣伝活動をしていることで知られる。同紙は中国政府のいかなる検閲をも受けていないことを強みとしており、中国共産党政府による中国国民や気功集団「法輪功」やチベット、ウイグル等の少数民族の人権弾圧に関する問題、中国国民の中国共産党からの脱党支援活動、中国共産党のスパイ活動、中国の民主化について盛んに報じるなど、反中国共産党政府の報道姿勢に立っている。
=Wikipedia

◆日本のメーカーが狙う中国市場だが
こうした惨状を絶好のビジネスチャンスと捉えているのはほかならぬ日本のプラントメーカーである。
 自治体の財政難や住民の環境意識、さらにはここ数年、談合裁判でメーカー側の敗訴がつづくなど、国内における焼却炉市場の狭隘化は想像以上に深刻化しており、どこのメーカーも生き残りに躍起になっている。環境部門の分社化、子会社化などもここ数年で確実に進んだ。
 金融系のコンサルタント企業・株式会社富士経済は次のように分析する。
「そこで各プラントメーカーは技術力で差別化を図る一方、PFIやアフターサービスなども含むソリューション型営業へ軸足を移している。特にリサイクルが困難な廃棄物を処理する技術において新規開拓が期待できる状況だ。都市ごみ処理装置は、技術供与などの形で中国や韓国、台湾などのアジア市場にも販路が拡大すると予想される」。
だが環境プラント業界にはひとつのトラウマがあった。それはマレーシア政府との契約寸前に破綻した荏原製作所のガス化溶融炉建設問題である。
2003年10月、荏原製作所は建設費約450億円、維持管理費年間約60億円、1日1500トンの都市ゴミを処理する流動床ガス化溶融炉の建設に取り掛かろうとしていた。完成すればマレーシアで最初というだけでなく、アジアは愚か、世界最大規模の焼却施設となる予定だった。
その成否がプラントメーカー全体の今後を左右する。業界関係者はその成り行きに固唾を呑んで見守っていた。

◆焼却炉輸出の前途
 しかし建設予定地のブロガと周辺地域の住民は、生命健康、環境、社会、財政問題から政府に計画の見直しを訴えつづけ、2年後、政府は白紙撤回を余儀なくされた。
もともと「ごみを燃やす」文化を持たぬ東南アジアに焼却炉の売り込みは厳しく、欧州のメーカーともシビアにぶつからざるを得ない。人の弱みに付け込むビジネスには常に限界がある。
当時、グリーンピース・ジャパンの有害物質問題担当者・佐藤潤一氏は次のようにマレーシア政府を批判していた。
「分別、リサイクルシステム、ゴミに対する意識改革を促す法令等のソフト面がまったく整備されないまま、450億円もの建設費を根本的にゴミ問題を解決できない応急処置である焼却炉に費やすことは本末転倒である。巨額な投資による施設への依存は、ごみ減量システムの構築を妨げゴミを減らすことができなくなることを意味し、マレーシアが本当に環境に良い政策を選択することが今後非常に難しくなる。日本の焼却炉メーカーは、日本の焼却炉市場の拡大が期待できないことから市場を東南アジアに向けているが、利益優先の大型焼却炉輸出が長期的にその国に与える環境的・財政的な影響を十分に考慮し、日本型の悪循環ごみ行政の輸出はやめるべきだ」。
 現地マレーシアでは、ガス化溶融炉建設の代替として、住民、政府、企業の協力による、地域主導のごみの発生抑制、減量、分別、リユース、リサイクル、堆肥化を進めるゼロ・ウェイストシステムの構築を模索している。


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