循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

めまぐるしく動く時局

2012年12月02日 | 廃棄物政策
 2年前に罹った腰部脊柱管狭窄症がさらに悪化し、家の周囲を50歩ぐらい歩くと立っていることすら苦痛になる。辛いのは取材に出られないことだ。特に東北への体験取材ができない中で原発問題を論ずることの空虚さを痛感し、昨年秋からブログを中断した。だがいよいよ政治状況が油断できないところまで来てしまい、日々、そして時々刻々と局面が変わる。生命の残り時間が極度に少なくなったいま、心の備忘録として折りにふれ発言だけはしておきたい。

◆原発を否定したら国力が衰退する
 「国力を衰退させる『脱原発』を政治目標に掲げる政党に日本の未来を託せるのだろうか」。先月末(11月29日)の読売社説、冒頭の書き出しである。
 《民自公vs維新の会》という構図で政治の対立地図を描くつもりの大手メディアにとって嘉田新党(日本未来の党)は巨大な狭雑物の出現であった。読売社説の狼狽ぶりとネチネチと憎悪をむき出しにした論調は長くメディア史に残ることになろう。
 さらに読み進むと、例によって「小沢が嘉田由紀子滋賀県知事を『表の顔』に担ぎ出した」とか「空疎なスローガンと生き残りのために右往左往する前衆院議員たちの姿には政治家の劣化を痛感せざるを得ない」など、未来の党も乱立する群小政党のひとつであることをことさら印象づけている。大手メディア自身が感じる不安の裏返しであり、この傾向はさらに強まってゆくに違いない。
 だが未来の党という結集軸ができたことで「脱原発・反増税・反TPP」が明確な争点になったことは事実である。そうなることを最も恐れたのはほかならぬ民自公とタカ派自民党の補完勢力に成り下がった維新の会であった。
 これから投票日までに彼ら(民自公や維新の会)を背後から支える大手メディアは何としても“悪役小沢”を再登板させ、あの手この手で未来の党のイメージをズタズタにしてゆくことだろう。
 それにしても「脱原発が国力の衰退を招く」とはよくぞホザいたものである。

◆「大飯を止めない」仕掛け
 やや旧聞に属するが本年11月21日の「NHKクローズアップ現代」が大飯原発の活断層問題を取り上げていた。そして12月1~2日、原子力規制委員会(以下規制委)が日本原子力発電敦賀原発の現地調査に入った。
 大飯の場合、関西電力(関電)は活断層の存在を否定。これに対し規制委(委員長・田中俊一)の専門家グループは「(活断層が存在する)可能性あり」と指摘した。
 委員会は関電の調査結果が不備だとして追加調査を要請し、「活断層の存在ありと判断したらただちに原発の運転停止を求める」方針を明示した。国も原発施設の真下で活断層が動けば大事故になりかねないと全国6か所の原発について再調査するよう求めた。もんじゅ、敦賀、美浜、大飯、志賀および東通の6か所である。再稼働への準備作業であることは間違いない。
 規制委が大飯原発(3、4号機)の現地調査に入ったのは11月2日のことである。地面を掘り下げ、地層の断面を見る、いわゆるトレンチ調査であった。掘る場所は2個所。いずれもF6という断層が通っているとおぼしき地点である。 
調査を終えてどんな結論が出たのか。前述の「クローズアップ現代」でNHK解説委員は次のように述べた。
 「規制委は現段階で大飯の運転停止を求める考えはない。田中委員長は専門家グループの結論がまとまっていないことから(停止を)判断するのはまだ早いと考えている。つまり追加調査の結論が出るまで運転停止を求めない。一方関電側は『追加調査には時間がかかる』といっている。これに対し規制委側は『期限を設けて長引かないようにする必要がある』と付言した」。

◆官僚によって仕切られる組織
なんで規制委の腰が引けているのか。この状況を元経産省職員の古賀茂明氏はある雑誌で次のように指摘している。
「今、原子力規制委員会は官僚によって仕切られる組織になりつつある。その兆候は今年の夏、委員長候補だった田中俊一氏が国会で所信表明する場面に表れていた。大飯原発再稼働について田中氏は『活断層があれば止める』という趣旨の発言をした。一見前向きに見えるがこのいい方では活断層の存在が証明されなければ動かしてよいということになる。私は、最初から官僚にうまく嵌められたな、と思った。本来は『活断層がないことがはっきりわからない限り止める』というべきだった。安全のためには「クロ」の場合はもちろん「グレー」の場合も止めるべきだからだ。おそらく、官僚は、『止める』という言葉を入れることによって、田中氏をうまく誘導して上記の発言をさせたのではないか。こうして一度間違った方針を設定してしまったので、これを撤回することは難しくなった」(週刊現代2012年12月1日号)。
 さらに古賀氏は次のように続ける。
「また、霞が関には、『スケジュールを制するものが勝者』という鉄則がある。今回の調査にもそれが当てはまる。調査の段取りは事務方の原子力規制庁が仕切る。調査を日帰りとすることで、東京から遠い大飯原発では十分時間がなく、関西電力が掘った溝を1~2時間でざっと見るということにしてしまった」。

◆活断層の有無を争ってどうする
 こうなると「活断層の有無」だけが安全の目安という流れが如何に危険かが分かる。規制委の専門家グループも全員が批判派ではない。絶妙な“官僚人選”の成果であり、その意味で田中俊一氏がなぜ委員長なのかについても見ておく必要がある。
 田中氏の略歴は以下の通り。
「1945年、福島市生まれ。東北大学工学部原子核工学科を卒業後、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構=JAEA)に入所。2007年1月から2009年まで原子力委員会の委員(委員長代理)を務めた。2012年9月5日時点では高度情報科学技術研究機構顧問。いわゆる「原子力ムラ」の関係者と考える向きは多い」(Wikipedia)。
 こんな仕掛けの中で活断層の有無を論じてどうするのか。問われているのは危険性である。原発の多いアメリカでも地震の多いカリフォルニアには1か所しかなく、ヨーロッパには活断層の上にある原発はひとつもない。日本で活断層の疑いのない原発は玄海原発ただ1基であり、去年の福島第1原発事故は活断層が原因ではなかった。
 南海トラフの存在など、日本全土が地震の活動期に直面しているいま、規制委内部で意見が割れたのなら、その事実をもってただちに運転不適、再稼働不可とすべきである。
 「原発が安い」はとっくに破たんした。それでもなお原発再稼働や新規着工を民自公など右傾化勢力が焦るのはアメリカの意向に逆らえないからであり、活断層調査はそれをアリバイにした時間稼ぎに過ぎない。
 3・11以後、政府と経済団体は常に強引な二項対立を設定し、反原発運動を恫喝してきた。たとえば《再停電か原発再稼働か》《原発でCO2削減か、化石燃料でそれを増やすか》などである。だが去年の夏も今年も原発なしで大過なく終わった。
 原発はCO2を排出しないという定説だが、CO2 は規制可能なリスクである。現にj-power の北村雅良社長は石炭火力からのCO2 排出を最大限抑制する技術開発を推進している(ただしそのj-powerが初めて大間に原発を建設しているのだが、それについては後日検証してみたい)。
 問題は福島第1原発事故で大量発生した放射性物質はとても規制可能なリスクとは呼べないことである。 以下次回

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