今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・神室岳

2014年09月12日 | 山登りの記録 2014
平成26年9月7日(日)
 ハマグリ山1,145.4m、トンガリ山1,241m、山形神室岳1,344.2m、神室岳(仙台神室)1,356m

 夏山が未消化だ。7月に南アルプスに行った後、台風や天候不順で週末に一体何日晴れた日があったろうか?日中晴れ間があっても、曇ってきて大雨と言う日が多かった。そんな訳で、とうとう9月になってしまった。8月は一度も山に行けなかった。

 今週末も不安定なお天気に変わりはない。一応、南アルプスの予定は捨てていないが、天気が安定しないので日帰りで行けそうな、というより登りたい山の日帰り可能な山を幾つか準備してある。北アルプス方面や新潟方面の他、東北の山も幾つかストックしておいた。今週も関東甲信はダメのようで、とは言え1ヶ月ぶりの山だからそんなにきついのは無理だ。日曜は福島以北、北陸は晴れの予報だった。関東甲信は前線の影響で、雨や曇りに猛烈な雨にも注意との事…この夏はずっとこればっかりだ。

 この夏にアルプス以外で予定していたのは宮城県の山だ。その中から、今回選んだのは二口山塊の神室岳。紛らわしいのだが、東北には神室あるいはカムロと発音する名の山が幾つもある。昔から登ろうと思っていて未だに登っていない、秋田・山形県境の神室連峰の神室山を初め、山形・宮城県境の栗駒国定公園内の鬼首温泉近くにある禿岳(かむろだけ)、そして蔵王山塊と笹谷峠を挟んで分けている山形・宮城県境の二口山塊の神室岳だ。ここは更に、山形神室(最上神室)と仙台神室と2つのピークがあるので、いよいよややこしい。地元の人ならそんなことは気にもならない事だろうが、他所から行く者にとっては非常にややこしい。主峰の神室岳(仙台神室)は南東側に岩を巡らせて、ずんぐりとした特異な山容から「怪峰」とも呼ばれているそうだ。

 土曜は家内と図書館に行ったり買い物をしたりして過ごし、夕方家を出る。今日も明日も、こちらの天気は不安定で局地的には大雨という予報だ(その晩は本当に我が家の辺りが局地的な大雨になり、家内は一人で家に居て怖かったということだ)。夕飯を早めに食べて、5時には高速に乗れた。北関東道から東北道・山形道と繋いで、どこも渋滞無くすいすい。福島市付近で時間80mmの大雨があったというラジオの放送があったが、その福島も既に雨が上がっていて特に問題なく通過し、途中2ヶ所のPAで休んでも8時半には笹谷ICで高速を降りた。笹谷峠までは、ぐねぐねした旧道を上って夜9時には笹谷峠の駐車場に着いた。太平洋側から雲が蓋のように空を覆い、月が微かにそこにあるのが分かる程度に見えている。笹谷峠からは西に山形盆地が俯瞰でき山形市街の明かりが下に見えている。その山形盆地の上には目立った雲が見えない。向こう側は晴れている様だった。駐車場の隅、登山道入口付近に車を停めてシュラフに潜った。

 夜中に目が覚めるとザーザー雨が降っている。にわか雨だろうと思いながらまた眠ったが、5時半にセットしておいた携帯のアラームが鳴って目が覚めると、相変わらず車の屋根をたたく雨の音が大きい。直ぐそこのハマグリ山の山体や、雁戸山に向かう山は見えているが、そう簡単に止むような降り方ではない。ちょっと腐ってしまう。300km以上も遠くからやってきてこのお天気かあ…。シュラフに潜ってまた寝てしまった。再び目が覚めると隣に車が停まって、支度をしている人が見えた。駐車場の入口付近にあるトイレの脇にはマイクロバスが一台停まっているが、運転手だけで他に人の姿は見えない。この雨の中、もう山に向かって行ったのだろうか?

 しばらくすると、雨が上がって幾らか明るくなってきた。どうにか登れそうな雰囲気になったので、シュラフから出てゆっくり支度を始める。パンを食べて6時40分に出発した。登山道入口には北蔵王登山道と書かれ、雁戸山の名前は見えるが、神室岳の文字は見えない。南は雁戸山、北は二口峠方面と書かれた方面標識があった。登山口の直ぐ上はススキが茂る原で石碑があって南側は高圧鉄塔が峠を越えている。雁戸山の前山の向こうには蔵王連峰の一部が高く、下に山形の市街地が薄暗く見えている。山形盆地の向こうには遠く薄っすらと月山が浮かんで見え、その上には青空も見えている。朝日連峰方面は厚い雲提に隠れて見えなかった。雁戸山と二口峠の三叉路から北に歩き出してハマグリ山の上りに掛かると、また雨がぱらぱらと降ってきた。登山道は笹が覆い被り、雨でなくても濡れてしまいそうなので、ザックからカッパを出して着た。幸い雨はハマグリ山の登りでジグザグを切る頃には止んで、少しずつ上空の雲が薄くなって行く様だった。

 ハマグリ山の登りは結構きつい。ネマガリダケが優勢だが、その周囲にはススキが穂を出して風にそよいでいる。秋の山らしい風情で、この辺りからハマグリ山・トンガリ山・山形神室までの草地の足元にはハギの赤い花や、つぼみのエゾオヤマリンドウ、シラヤマギク、カワラナデシコ、オヤマボグチ、アザミ、オクモミジハグマ、ヒヨドリバナ、ウメバチソウ、咲き残りのヨツバヒヨドリ、タテヤマウツボグサ、アキノキリンソウ、ゴマナ、イワインチンなど、差し詰め秋の山野草図鑑とでもいった感じで沢山の花が咲いている。でも、一番多かったのはリンドウで、帰りにはおちょぼ口の花が開いて青いリンドウの小径になっていた。それは見事な花の山だったが、引き換え雨が降ったばかりのせいもあるが、道はひどくぬかっていて泥田状態だ。靴もカッパのズボンもたちまち泥で真っ黒になってきた。幸い、覆いかぶさる笹や低木は登るにつれて大分良くなってきた。

 ハマグリ山の登りから振り返ると、峠の駐車場がどんどん下に小さくなっていくが、これが見えなくなるまで出発の時と車の台数は増えていなかった。笹谷峠のわだかまりの上に北蔵王の山並が並んで雁戸山の鋭角の山頂も見えるようになった。その上には蔵王連峰の更に高い山並がシルエットだ。山形県側は青空が広がり始め、山形市街のビルや街並が良く見えるが、反対側の宮城県側は薄黒い雲に覆われ、低い山々は雲海に沈んで、笹谷ICや山形道が間近に見下ろせる。反対側にも山形道が見え、そこを走る車の音がここまで聞こえてくる。国道のぐねぐね道も俯瞰できた。

 一段登り上げると笹尾根の稜線が続き、先に現れた名前のとおりのトンガリ山の手前に小さな高まりがあって、そこがハマグリ山の山頂だった。ハマグリ山の山頂にはハマグリを嵌め込んだ手作りのプレートがあった。ハマグリ山7時44分着、後から登ってきた単独の人がここで追いついた。山名プレートにはハマグリの貝殻が沢山張りつけてあったが、それがはがれて地面に散乱していた。追いついたおじさんはそれを見て楽しそうにけらけらと笑ったが、そんなにおかしいのかな?ハマグリ山という名前はこの山の形がハマグリの様に見えるからだろう。トンガリ山もその名のとおりで、あまりにも即物的な名前で何も言うことは無い。この辺りからトンガリ山の向こうに続くなだらかな山形神室、更に東には甲冑の兜を思わせるずんぐりと丸い高まりの神室岳(仙台神室)が見えるようになった。成る程、ただ丸くずんぐりしているばかりでなく、東に帯状に延びた岩壁と頂上から南には角の様に岩場も落ちているので、怪峰という雰囲気は充分だ。ここから見ても山形神室との鞍部からの稜線はかなり急峻であることが伺えた。

 ハマグリ山を降りるところは10m程階段状の岩場になってロープが垂れ下がっている。一旦下って少し進むとトンガリ山の登りになるが、これもかなり急な登りだ。
トンガリ山の山頂は木々に囲まれて眺めは無い。下った先は吊尾根状の草地が山形神室に続いている。この辺りは大きな花のリンドウが沢山見られた。山形盆地辺りには陽が当たっていて、この県境稜線の直ぐ西側まで青空が広がり始めていた。遠くに霞んでいる月山はまだ残雪斑が見られる。更にその北に霞んで見えるのは鳥海山のようだった。

 なだらかな尾根を一段登り上げて8時44分に山形神室に着いた。三等三角点標石と山形神室の山頂名板がある。この山頂も木々囲まれて眺めは良くない。西側の一角だけ視界が開けて山形盆地が見えていた。ここで少しだけ休む。雨の心配も無くなってまだ着ていたカッパをここで脱いだ。ズボンは道が相変わらず泥田の様なので履いていることにした。次第に晴れの領域が広がってきて、もう間もなくこの稜線の上にも青空が広がるだろう。タマゴサンドパンを食べて 時に出発する。しきりに時間を気にして、速度を増してトンガリ山から先に進んでいったハマグリ山で笑ったおじさんが、ぼくが出発の用意をしていたら、ニヤニヤしながら引き返してきてそのまま素通りして戻っていった。幾らなんでもこんなに早く仙台神室を往復できないだろうから?あの方はここからお帰りの様だ。行きに会った人はこの人きりで、今日の半分はとても静かな山だった。

 山形神室からは、しばらくは鯨の背のような眺めの良い稜線を緩く下っていく。向かいに鉄兜の様な神室岳(仙台神室)が近づいてきた。ここから一旦鞍部のダンゴ平まで急激に下ってから、今度はあの急峻な稜線を登る事になる。神室岳の向こうには二口山塊最高峰の大東岳が同じ様な、でも神室岳より幾分なだらかな、洗面器を逆さにしたような山容で見えていた。身の丈を越えるネマガリダケの急な斜面を下っていく。この下りも道に水が貯まっているところが多く、泥田状態だ。降りるにしたがって仙台神室はどんどん高くなってきた。最低鞍部付近はダンゴ平と呼ばれている様だが、平と呼べるほど平らな所がある訳ではない。降り切ったところから右手に薮道が下っているが、これが分県ガイドに紹介されている仙人沢コースらしい。余り人が歩かないのか薮に埋もれている感じだ。最低鞍部から見上げる神室岳はそそり立って居る様で、これを登り返すのはきつい。途中まではごく普通の急な登りだったが、山頂間際はロープもあってよじ登るほどの急登になった。

 最後に眺めの良いところからちょっと奥に入る感じで、低木に囲まれた山頂は思ったほど展望が良くない。東側の行き止まりの薮の前に仙台神室岳の標識が立っていた。ここに三角点は無い。神室岳に10時3分に着いた。山名標識が立つ奥の薮の方がここより少し高いようだ。良く見ると、ネマガリ薮の中には薄っすらと踏み跡が伸びている。止せばいいのに、奥にネマガリを掻き分けて進んだが、5mも進むと2m近いネマガリ薮は直ぐに下り気味になって踏み跡も終わった。薮越しに下の山が見えている。なんだ終わりか…で、引き返そうとしたら、首の後ろにいきなりチクッと痛みを感じた。大した痛みではないが、どうも首筋をハチに刺された様だ。ハチの姿も見ないし、巣があったのかどうかも分からなかった。結局その後も大した痛みは無かったのだが、次の日に500円玉程の大きさにもっこり腫れて、その後は痒くなった。何というハチに刺されたのかな?今も、もっこりシコリになっていて痒いです。以前クロスズメバチと思われるハチに刺されて、猛烈な痛みと、その後は指が人に笑われる程腫れてしまったことがあった(南アの塩見岳に塩見新道経由で登った時だ)。

 誰もいない静かな山頂の一角で石の上に腰掛けて休む。座ってしまうと余計に眺めは無くなる。山頂の少し下の方がずっと眺めが良かった。大東岳は山形神室の下り辺りで良く見えていたが、今は山頂に雲が被っていた。神室岳山頂からは南や西の眺めは悪く、北と東に限られる。東に、これは奥羽山脈沿いという訳だが、二口山塊の余り高くない山並みがぽこぽことずっと続いていた、なじみが無いので特徴ある大東岳以外は良く分からなかったが、地図で確認すると大東岳の左手奥に見えるのが面白山の様だった。面白山という名前がそれこそ面白いので昔から気になっていた山だ。

 リンゴ(黄王という品種)と栗ペーストとチョコの付いたドーナツのようなパイのようなパン(ヤマザキの新商品)を食べる。パンはお世辞にも美味しくない、この手の季節商品で美味しいモノは非常に少ない…と思う。休んでいた間も誰もやって来なかったので山頂は独り占めだった。10時35分に仙台神室を降りる。もの凄い急斜面を落っこちるように下って鞍部のダンゴ平まで降りてきたら、中高年の4人程のグループに会う。山形神室からの下りが余りにぐちゃぐちゃなので、仙台神室の登りはどうか?と聞くので、ぬかり具合はずっとマシですよと答えた。4人組はここから見上げる余りに急な登りに少しためらっていて聞いてきたようだ。

 山形神室の登り返しも結構きつかった。登っていく途中で10人程の団体、山形神室山頂の手前で4,5人のハイカーとすれ違う。この辺りの山は気軽なハイキングコースとあってか、余り早い時間から登る人が少ないようで、お昼近いこの時間になって人が多くなってきた。山頂間近で高校生らしい大団体(30人くらい)とすれ違う。こんな団体と一緒じゃなくて良かった!山形神室の山頂にも5人程の人が休んでいた。そのまま山形神室山頂はパスして眺めの良い尾根を下っていく。トンガリ山の周辺も人が多かったが、それでも山頂以外の人は少なく、やはり関東近辺の山から比べたら格段に静かという印象だった。このコースで特に気持ちが良いのは、トンガリ山からハマグリ山までの稜線だろう。低木は多少あるが、笹と草地の伸びやかな稜線は眺めが良いのはもちろん、幾つあるのか数えるのも大変なほど多くの花が咲いているのが魅力だ。

 まだお昼を少し回ったばかりだが、久々の山で結構疲れた事もあり、今日はこれから向かいの雁戸山まで欲張らずに、この山だけで終わりにすることにした。ハマグリ山の山頂には小さな子供連れの家族が楽しそうにおむすびを食べていた。かつて、子供達を連れて山に登ったことを思い出す。特に子供が小さかった頃はおむすびをこんな風に山頂でみんなで食べたなあと懐かしい。

 1時16分に駐車場に戻ってくる。駐車場は全部で20台くらい車が停まっていた。マイクロバスもあったが、これは高校生の団体のだろうか。駐車場に入りきれなくて峠の周辺の道路にも5台くらい車が停まっていたが、反対側の雁戸山に登っている人もいるハズだから、休日としてはそんなに多い方ではないのだろう。すっかり晴れ渡り、陽射しも暑く感じる。支度をして笹谷峠を後にした。

 帰りは蔵王山麓の蔵王町にある遠刈田温泉『神の湯』という共同浴場に寄って行く。遠刈田温泉には他にも壽の湯などの共同浴場があるが、この神の湯が一番大きい。檜造りの建物もなかなかで、建物の前には足湯があって沢山の観光客が足を浸けていた。神の湯の駐車場も一杯だし、周辺には沢山人が居たが、なぜか浴場は余り人が居なくて空いていた。ゆったり浸かってとても気分が良かった。浴場内はほんのりと檜の匂いがしている。湯はやや乳白色をして特に臭いも無い温泉だ。さっぱりとして気分良く浴場を出ると、何と脱衣所が人で一杯になっている。丁度運良く人が少ない時間に入れたという事だった様だ。共同浴場周辺は温泉街のお土産物屋等が沢山ある。お土産を買って駐車場に戻ったら、そこで農家のおばちゃんが梨を売っていたのでそれも買った。高速のICに向かう途中で、盛大に『梨まつり』のイベントをやっていた。蔵王町は梨やリンゴの産地で道端には果樹園が沢山ある。どこも直売の店を出して、あちこちに梨やリンゴの絵が描かれた賑やかな幟がひらめいていた。村田ICから高速に乗って帰路に着く。高速も特に渋滞も無く順調に走って、途中で食事をしても夜の9時には家に着いた。

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2 コメント

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確かに東北地方には神室て名の付く山多いです (ノラ)
2014-09-14 10:00:11
あさぎまだらさん おはようございます。今日は快晴ですね。どこかへ行かれたかな?持っている東北百名山の本で見てみたら確かに3つのってました。ここは蔵王に近いんですね。カムロって野菜のカブって意味だと書いてありました。私は冑かと思ってました。なかなか面白い形です。刺されたのはハチじゃなくてアブじゃないんですか?アブも後で腫れて猛烈に痒くなります。
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カブですか (あさぎまだら)
2014-09-15 11:23:19
ノラさんこんにちは。
昨日は富山の毛勝山に行っていました。道がある山ですが、標高差1700mと日帰りピストンとしては限界です。かつては道のない山として有名でしたが…登り手がありました疲れました。
神室岳のカムロってカブのことなんですか。なるほどカブみたいにも見えますね。
アブにしては痛かったんですが、もう治りました。
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