平成26年11月8日(土)
長須ヶ玉山1,913.8m
11月になって高い山は皆雪を被った。そうなると、そろそろ会津かな。会津の紅葉は事の外素晴らしい。もっとも紅葉よりも黄葉が美しいところではある。会津方面の登っていない山はほぼ道の無い薮山だ。1.2.3の3連休を利用して思う存分ハシゴ登山をしようかと考え、他の方面は余り芳しくない天気予報ながら、会津は晴れや曇りという予報を信じて会津に向かったのが先週。見事な空振り三振の予報で雨になって残念な結果となった。雨に濡れた黄葉を眺めながら、帰りに道の駅湯西川で入浴しただけで帰路に着いた。
さて、その借りを返すべく?2週続けて会津に向かう。ノラさんやしぼれさんが数年前に登っている長須ヶ玉山をまず1日目に、2日目はその他南会津の幾つかの山の地図やデータを持って金曜の夜、仕事を終えた足で出かけた。今回は、土曜は晴れだが日曜は曇りとの事、しかし関東は日曜日の午後は雨になるとの予報もあるから、最悪、長須ヶ玉山一山で終わりという事もあり得るかも知れない…。
日光から鬼怒川と先週とは違って空いた道を走ってきた。『道の駅たじま』で小休止する。先週はこの辺りが素晴らしい黄葉だった。3連休前ということもあってか、道の駅の駐車場は車上泊の車が沢山停まっていた。しかし、今日は大形トラックが2台休んでいるが、そこに乗用車は1台も無かった。冬型が強くなったので、外気温が0℃まで下がっている。今年一番の寒さだそうだ。車外に出たらダウンジャケットを着ていても余りの寒さに震える程だった。桧枝岐から舟岐林道に入り、舗装路が終わった地点が長須ヶ玉山登山口の佐惣沢入口だった。左岸側に車一台分のスペースがあり、そこに車を停めた。明日は晴れるが日曜は曇り(この時点では…)ということだが、空は星がまたたいて冷え込んでいた。直ぐに冬用のシュラフに潜って眠った。
翌朝6時に目覚める。明るくなって、今のところ良く晴れているようだ。支度をしてパンを食べ、GPSをセットして6時35分に出発する。林道の奥に大中子山らしいこんもりした山が見えている。佐惣沢に掛かる橋の向こう側、右岸は笹が身を没する程に茂っているが、そこにはっきりとした踏跡がある。この奥の植林を手入れするための仕事道だと思われるが、沢の流れから10~20m程の所に沿ってずっと道が続いていた。しばらくは杉林の中を歩いていく。この辺りは良く手入れされた杉林で、足元には枝打ちされた杉の枝が沢山あって、その上を落ち葉が覆っていた。植林の枝打ち作業の途中といった感じで、道具がそのままに放置されている。紅葉も終わって、わずかに落葉松の黄葉だけが向かいの山の斜面に見られる。植林が終わるとすっかり葉を落とした雑木の森になって、道沿いには白いビニールひもが張ってある。そこに山菜を採らない様にと書かれた札が下がっていた。
尚も歩いていくと、ササや羊歯に埋もれて踏跡が段々怪しくなってきた。振り返ると会津駒が冠雪して白い山頂部を見せていた。やや沢沿いが広まった地形になると、やがて道型も薄くなり、ついには沢の流れに消えた。この辺りで高度計と地形図から標高1300mくらいと判断する。立ち木に赤ペンキ、その他に黄色いテープがこの先点々と見られた。気持ちの良い穏やかな沢が奥に続いている。流れの幅も狭いので両岸をあちこち、歩き易い所を伝いながら遡上していく。水で濡れた岩は今朝の冷え込みで凍っているので、岩をぴょんぴょん飛ぶわけにも行かない。なので、慎重に歩いていく。しかし、こんな感じで佐惣沢の本流は滝も無く周りの薮も薄いので順調に高度を稼ぐ。沢が広くなって、岩がちの急な尾根が左手長須ヶ玉山北尾根から落ち込んでいる地点に出る。この辺りで標高1400m程か、先渉者のみなさんの記録からすると、そろそろ本流を離れて支流に入るか、左手の尾根に取り付く所だと思う。沢が大分狭まってきて、傾斜もきつくなってきた。相変わらず滝も無く、沢を右に左に渡り歩くといった感じは同じで、沢登りというものではなく『沢歩き』だ。
しぼれさんの記録にあった右岸から流入する支沢の分岐に出る。この辺りになると佐惣沢本流の水量も減り流れも小さくなってきた。先には大きな岩がごろごろしているのが見える。ここが標高約1500m付近だ。ここからしぼれさんが辿った支沢に入ると、直ぐに支沢本流は水もわずかで急な傾斜になり、右手から細く狭まった急な沢が落ちている。こちらの方がむしろ水量が多い。これもしぼれさんの記録どおりで、この流れを詰めることにする。小さな岩溝といった様な沢で、5m程の滝(ほぼ水は無い)や岩場を攀じる所もあるが、どこも左右に巻ける。水がある所は凍っているのでうっかり歩けない。登るに連れて水も無くなり、振り返ると会津駒から続く山並みが正面に見える。丁度真正面が大津岐峠付近だろう。
沢が尽きると笹薮の斜面になった。そこにぽっかりと根上がりした穴が目立つコメツガが立っていた。これもしぼれさんの記録どおりで、今回は完全にしぼれさんの後追いになった。直登はややネマガリダケが高くて煩わしいので長須ヶ玉山寄りに少しトラバースして薮で見通しが悪いので、ほぼ20mおき位に赤テープでマーキングしていく。ネマガリの薄い所を縫って登り、9時35分に長須ヶ玉山から北に落ちる尾根に登り上げた。長須ヶ玉山北尾根はシラビソの太い木が多く、尾根をほぼ埋め尽くすネマガリの丈は胸を越える所も多い。密な箇所はネマガリばかりでなくツルや潅木も絡んでうっかり踏み込めない。思ったよりも薮が深い感じだが、幸いにも明瞭なシカ道が走っていてこれを縫いながら登っていく。尾根の所々から東に舟岐川を挟んだ大中子山や帝釈山が見えているが、残念ながら木々が邪魔をしてスッキリとした眺めは無かった。桧枝岐の集落や会津駒山塊の向こう、霞んだ遥か彼方に白い山も見えている。飯豊辺りだろうか?この辺りで標高1,870m、もう頂上も近い。
シラビソの大木が茂る尾根も傾斜が緩んで、藪の無い平地が現れてくる。シカのヌタ場と思われる小さな凍った水溜りが見られる。ネマガリ藪が無くなり、大きな平坦地に出る。方角が見極められなくなる恐れがあるので、この辺りでまた赤テープを頻繁に付ける。地図とGPSから平坦なシラビソ林の南の方に山頂があると思われ、その方に進むと周囲よりも一段高い所があり、低い笹藪の中に苔むした二等三角点がぽつんとあった。長須ヶ玉山山頂に10時37分に着いた。林道の佐惣沢出合を登りだしてから丁度4時間だった。周囲を見渡すと、ネットの記録のとおりシラビソの木の3m程の高さの所に長須ヶ玉山と彫られた木製のプレートが1つ見られた。その他には何もなかった。このプレートは残雪期に付けたと思われるが、容易に手が届く所に付けたのだろうから、少なくとも1.5mは雪が積もっていたと想像できる。
薮っぽくて座る場所もなく、やや閉鎖的な山頂の小山を降り。下の平たん地で倒木に腰かけて湯を沸かし、カップラーメンやリンゴを食べた。山頂の平たん地は笹もほとんどなく、下草の無い薄暗いシラビソの森になっている。昨年登った南アルプス深南部の大根沢山山頂に似ているが、長須ヶ玉山山頂のシラビソは直径20㎝程で巨木は少なかった。11時16分に腰を上げ、山頂を後にする。赤テープを全て回収しながら北尾根の下降点に戻り、再びシカ道を探りながら深いネマガリ藪を回避して降りる。この尾根には古い赤テープのマーキングが少し見られた。急な下りから、ゆるい傾斜の尾根に繋がると、後は登りに付けた支沢への下降点の赤テープを見つけ、身を超す程のネマガリ藪を一気に降りる。下降点付近がこの尾根で一番眺めが良いが、木々が全く邪魔しないような展望は得られない。大中子山や帝釈山が木々越しに見られる程度だった。ネマガリ藪をやや縫いながら根上がりのコメツガに12時2分に無事到着。木々のすき間から斑に雪を付けた燧ヶ岳が見えていた。ここが標高1,700m辺り、あとは一気に急な枝沢を下り1,550mの支沢分岐まで降りてここで小休止した。
佐惣沢本流に出ると、朝は苔むした石が凍っていた沢も、帰りは融けて気を遣うことも無くどんどん下っていく。向うに見える会津駒の山並の雪も疎らになっている。昼を周ると全天に雲が広がって、すっかり曇り空になってしまった。沢を離れて笹の深い道を辿り、2時10分に林道に降りた。支度をして桧枝岐に下り、3度目になる燧の湯に寄っていく。ここは何度来ても良いロケーションで、その上人も少なく泉質も良いので満足感も高い日帰り温泉だ。桧枝岐もシーズンが終わったのか、人も少なくひっそりとしていた。残念ながら、どんどんお天気は悪くなる方向に向かっている。予報が変わって明日は雨が降るということ。先週からお天気には振り回されている。2週続けて会津に来て結局長須ヶ玉山1山だけで帰ることになった。
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お疲れ様でした。もう4年も経ったのかとあらためて見直しました。Pさんは未踏でも再訪予定はなしですが、初めて沢を詰めたので記憶に残るお山でした。
もう会津方面は撤収、お山は太平洋側、関東以南へ移動することにしました。
沢までの道に山菜を取るななんて場所無かったような気がしますが4年前だからまだ栽培してなかったかもしれません。昨日栃木の高い山に行きましたが,もう雪でした。会津の山もかなり白かったです。長須ゲ玉山ももう真っ白だと思います。いい時に行かれたようです。
地味な藪山で年間を通じて登る人は少ないのでしょう。今回はしぼれさんのレポを参考にさせていただきました。登り易いルートだと思います。ありがとうございました。
関東以南に方面転換ですか…ぼく的にはもう少し北の方に今週末行こうかと思っています。
佐惣沢沿いの道は林業関係者や地元の山菜採り、サンショウウオ取りの人たちの仕事道みたいですね。道が尽きる辺りまではかなり人が入っている感じです。おそらく町場から来る人も、釣り人も含めてこの道を利用するのでしょう。山菜採りは山人の重要な収入源ですから、今回見たような看板を立てたのではと思います。
ぼくが登った時は山頂の窪地に雪がありました。先週末の寒波で本格的に積もったのでしょうか?土日は家内と草津に行っていましたが、草津白根も雪でした。
燧の湯はそんなに熱いですか?ぼくは熱い湯が好きなのでちょうど良い感じでした。