今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

大ナゲシ、赤岩尾根 ②

2005年12月17日 | 山登りの記録 2005
①の続き

赤岩岳から稜線を辿り、さっき引き返したコブからは藪の急斜面を木に掴まりながら下った。赤テープはしっかり付いているが、赤岩岳までのコースに比べると踏み跡は薄かった。少し南の支尾根に迷い込みそうになったが、軌道修正、はっきりした踏み跡をまた見つけ下りきって鞍部に降り立った。そこから北側に少し巻いていくと1,583㍍峰前衛の小ピークの登りになるが、ここでいきなり崖のギャップになった。藪がちとはいえ、高度感のある、ややかぶり気味の岩を登らなくてはならない。取り付いてみるとお助けロープがあったので楽かと思ったが、却ってロープに頼ったら降られて危ない。ロープに頼るのは止めて左手の岩を直接攀じたら容易だった。その上はただの藪斜面で前衛峰に登り着いた。余り展望はないが、また縦走開始。
「豪快な岩稜縦走の赤岩尾根…」とかガイドブックには書いてあるが、ここまでの感じでは、ほぼ藪尾根縦走で岩場は余り無い。小さな上下で岩頭に出た。足場の余り良くない松の木が生えた岩頭で、ここからこの尾根の核心部だという1,583㍍峰の岩峰が姿を現した。成る程大きな岩壁が立ちはだかってこれを登るのかい?という感じ。北側は垂直な岩壁で到底不可能、中央にリッヂがあるがこれもかぶり気味で高度感もあり厳しそう、その右手のルンゼか或いは南側の岩壁を登るようだが、それとて簡単とはいえないようだ。過去のネット情報ではルンゼを登ったものが多い様だが、良く見ると南の岩壁中央に赤ペンキがぽつぽつ見え、真新しいロープがぶらんと下がっているのが見えた。

 岩壁の真下に立つと、そこから下は藪で隠れ気味とはいえ、ずっと急な岩混じりの斜面が下っている。上を見上げると岩壁というにはやや斜度が緩く傾斜のある岩場という雰囲気で、登れそうもないほどではない。しかし、そばで見るともろい岩の積み重なりで、崩れない様に注意する必要がありそうだ。ところどころに灌木が生えていて、これらの木や露出した根もホールドとして使えそうだ。
 取り付きは容易だったが、登り始めるとだんだん傾斜がきつくなってきた。足場は多いし掴まれる木や根も多くて難しくはないが、半分から上はかなりの斜度で高度感も結構あり緊張する。落ちたら多分相当なダメージを受けるだろう。下の小さく見える木々も却って高度感を募らせるから、あまり下は見ないようにした。でも、少し余裕で写真を撮ったりした。真新しい玉こぶの作ってあるトラロープや工事用のロープがぶら下がっているが、これはつい最近つけられたものの様だ。確かにこれがなかったらかなり難しいが、あるものは利用するという考えなので躊躇無くこれに掴まる。最上部はかぶりぎみでルートは左よりになっているが手がかりが遠くて難儀した。右に逃げようとしたらこちらはハングがきつくて無理。だましだまし、もろい岩場を何とか抜けて上の藪に達した。藪の中は普通の道で後は右寄りに回り込んでピークに出た。

 振り返ると赤岩岳はやや離れ、遠くに大ナゲシが低く見えた。奥秩父の高峰は下がってきている雲に隠れがち。アカヤシオがここにも沢山あった。南にはやや高く両神山が大分近くなって、頂上の木々も本数が数えられるくらいに見える。天気はやや悪くなってきた感じだが、雨が降るようなものではなさそう。
 行く手にはまだ幾つもの岩コブが見えている。越えて行かなくてはならないそれらのピークは、しかし木々がびっしりと生えて、岩峰という感じはあまりしなかった。
 ここから最低鞍部まで下り、藪の踏み跡を忠実に辿った。先の方で時々話し声がしたが、先行したグループもそう遠く離れていないようだ。鞍部は薄暗くて結構長かった。この先登ったり降りたりを繰り返したが、P4からP3まではどれがどれだか良くわからない。ピークの上に立っても標識も何も無かった。P4とP3の間にあるキレットはごく小さなもので簡単にまたいで通過。藪道を尚も辿るとまた再び岩峰の登りになって岩稜を攀じて藪ぎみのピークに立った。ここにはP2のプレートがあった。ということは、正面に見える鋭い岩峰がP1で、越えるべきは後一つというところか。下の方で先行したグループの声がしている。どうにか核心部も通過して、やっと赤岩尾根の縦走も終盤になった。ここまで赤岩岳を出てからほとんど休まずに辿ってきた。さすがに少し疲れてきたので、ここで小休止。おかしや大福を食べて座るにも落ち着かない岩の上でくつろいだ。
 今日は大ナゲシと赤岩岳のピストンだったはずが、思いもかけずこうして赤岩尾根の縦走まで完遂しようとしているのだが、意外に満足感は少ない。思っていたほど難しいものでなかったせいもある、赤テープは多いしお助けロープは要所要所にあって、確かに★一つ減らした方がいいかなと思う程だから。やや上級の一般ルートという程度ではないかと思うのだ。
 P2の下りはかなりヤバイ岩場があったが、これもお助けロープがあって難なくクリア、もし、このロープがなかったら、持参した補助ロープを使うのだから同じか?最後のP1は規模の大きな岩峰、1,583㍍峰と良い勝負の尖峰だった。中央を大きなリッヂが頂上に向かって登っていた、その上で先行グループの声がしている。
 ここが最後のピークだが踏み跡どおりに辿っていったら南側を巻いて通過してしまった。別にここの頂上を踏まなくても良かったから、そのまま八丁峠に向かってしまったが、帰ってきてからガイドブックやネット情報を読んだらこの山頂は赤岩尾根随一の展望台だということだった。ちょっと残念。ここから来し方を振り返った方が良かったかなあ。あの時、先行したグループがこの頂上に居なかったら、たぶん巻き道からもう一度登り返したろう。
 小さな上り下りをして、だんだん道が歩きやすくなり立派な指道標等が現れ始めた。
 旧八丁峠には、古い祠が壊れかけたトタン屋根を懸けていた。行く手に見えるはずの両神山はガスが掛かって頂上部を隠していた。関東平野から押し寄せてくる冷たい湿った空気が、この山の東の岩壁にぶつかりこうして雲を作っているのだ。まだ、時間はやっとお昼を回ったばかり、行こうと思えば両神山まで行けそうだが、展望が期待できないのではその気にもならなかった。八丁峠にはご年配が二人休んでいた。下ってきた道を遮るように、「この先は危険ですから一般登山者は入らないで下さい…」という真新しい看板が建っていた。ここでも休まず、一気に落合橋に向けて下った。赤岩尾根とは比べものにならないくらい歩きよくて整備された道だった。振り返ると緩やかな八丁峠の弧の下に、新緑が萌え始めたナラやイヌブナの根元をまたもやコバイケイソウがぽこぽことかわいらしい若葉を出していた。
 ジグザグに斜面を下りきると沢に降り立ち、落合橋が直ぐ下に見える渓流のほとりでカップそばを食べた。この沢は砥石の様な岩の上を穿った溝に沿って水が流れてくる、この近くにある狩倉岳に至る登路として利用される石舟沢という沢もこんな岩が作った奇妙な造形があるそうだ。ああ、やっぱり山はイイナあと、この時やっと満足感が湧き上がってくるのだった。

 落合橋から小倉沢までは退屈な林道歩きだったけれど、晴れてきて新緑の山々は瑞々しく何とも爽快な気分だった。去年、御神楽岳を下ってきての林道歩きの時もこんな気分だったな、あの時はタニウツギの花がきれいだったなあと思い出していた。廃墟になった石灰採掘場等を過ぎ、また小倉沢の鉱山住宅駐車場に無事戻ってきた。時間は3時を少し回ったくらい。ほぼ、予定通りに着いたことになる。ここから帰ろうとする頃、遅ればせながら到着した相模ナンバーの一団は、予想に反してかなり若い3人グループだった。
 八丁トンネルを抜けると、またどんよりとした曇り空が待っていたが、長い林道を志賀坂トンネルまで戻り、振り返る両神山は頂上を雲に隠していた。志賀坂トンネルを抜けて群馬県側は薄日が差していた。上野村の真新しいせせらぎ荘とかいう国民宿舎の沸かし湯温泉に入ってから帰路についた。

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