今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

碧岩・大岩

2006年01月24日 | 山登りの記録 2005
平成17年4月30日(土)

 先日の烏帽子は長男と二人、今回は次男も快復して3人である意味念願の?碧岩と大岩だ。この前に行く予定にしていたのだが、次男もここには行きたいだろうからわざわざ取って置いたという訳だ。

 さて。西上州のたくさんの岩山も残すところ僅かになってきた。一般コースとなると、この碧岩・大岩が難易度から言っても白眉になると思う。子供たちとは、立岩を手始めに毛無岩・鹿岳などに登ってきたが、立岩の鎖場が一番?面白かった様で、一番怖かったのはやはり裏妙義のチムニーの下りだったとのこと。他にも鹿岳は少し岩場があって良かったけど、毛無岩にはがっかりだったようだ。だからこその碧岩と大岩だ。真打登場と言ったところか?ここと表妙義の縦走が二人にとって以前からの念願だったと思う。表妙義はもう少し取っておきますか。

 ゴールデンウィークの前半で道路も山も渋滞が予想されたが、それは覚悟して今回は山に向かった。前回同様6時に起きて、6時半を少し回って家を出た。道路は混んではいなかったが、仕事の車がずいぶん多いなという印象だった。高崎までスムースに過ぎ、安中と富岡の間の「コヒー・コーラ」の看板付近に開店したセーブオンで朝ごはんと昼ごはんとお菓子を調達し、その先も特に混むこともなく南牧入りした。碧岩・大岩は南牧でも長野寄りの一番深いあたりだからこの前より到着に少し時間がかかった。三段の滝遊歩道入り口の駐車場には、既に5台くらい停めてあって、あと1台の余裕しかなかった。もっともまだ周囲に停められるスペースはあるにはあるが…。停めた直ぐ後に熊谷ナンバーの軽自動車がやってきて、ご年配が2人降りてきた。結構な数の人が居るのかなあ?やや鼻白んだが今日はそういう日だから、まあそれも覚悟のこと。

 沢沿いの道は整備されて気持ちが良かった。新緑で身体が染まりそう、この前にも見たネコノメソウやエンレイソウもあったが、岩場のアカヤシオは丁度見頃といった感じ。
 小滝なども現れて気持ちの良い渓流を少し朽ちかかった桟橋で遡ると、大きな岩がごろごろした三又になり、間もなく三段の滝の下に出た。ここの手前にククリ岩・双子岩という看板があって、いかにもそこまで道があるかのような書き方だが、もちろんその先に道は無い。
 三段の滝は南牧で一番大きな滝だという、成る程ここから見上げる滝は三段どころか四段か五段にも見えるが、かなりスケールの大きな滝だった。水量が少ないのが惜しまれる。その滝の右側のおそろしく滑りやすい急斜面をジグザグに登って固定ロープなどもあり、滝の上部(最上部の滝の大きな滝つぼを見下ろすところ)に出た。この最上部の滝が全体で一番落差が大きく、一番垂直に近くて見事だった。

 三段の滝からは沢の詰め状となり、やがて尾根に続く急斜面が続き、藪の上に碧岩の岩峰が頭を出した。下の渓流を遡っていた時、上に見えていた岩山が幾つかあったのだが、最初のは台形で幅広の岩峰、多分チョキという変わった名前のやつだろう、次に左岸に聳え立っていたのは鷹ノ巣岩、そして三段の滝のあたりから圧するように木々の間から見えた高いずんぐりした岩峰がこれだったようだ。碧岩はここから見るとあまり木が生えていなくて岩の塊という雰囲気、その岩肌にアカヤシオのピンクを纏っていた。見上げた形が帳付に向かう稜線から見た天丸山に良く似ていた。大した距離ではなかったが、ここから稜線まではかなりの急登だ。
 
 やがて支稜に飛び出したが、藪がひどくてあまり眺めは無い。痩せたこの支稜にはアカヤシオがかなり沢山あって今がその盛りになっていた。これまでのところ、下の沢道で午前の早い時間にもう下ってきた中高年ご夫婦と単独のご年配にすれ違った他は、すぐ前を先行しているやはり別のご年配二人くらいに会っただけ、それ程多くの入山者は無いようで少しほっとした。

 休む間もなく碧岩と大岩の分岐まで進む。碧岩の方から人の話し声がするからそちらに先行者がいるらしい。分岐からやや下り気味になる、でっぱりの上で休もうとしてザックを置いたら、おむすびころりんじゃないけどザックが枯葉の急斜面をころころ転がり落ちていったので、あわてて止めようとして追いかけた。木の葉に覆われた急斜面、落ちきっても10メートルそこそこで平坦になっている。ところが一度止め損なって足を滑らせ、二度目にザックを掴んだものの、潅木の枝に腕やひじを打ちつけて打撲と擦過傷を負ってしまった。子供たちは笑っていたけど痛い思いをして、少し戦意消失…。トホホ。笑うなコラ、イテー。

 小休止の後、碧岩に向けて尾根を辿る。小さな岩場の手前に色とりどりの沢山のザックが置いてあった。数えたら何と17個、そんなに沢山で来るなよ、こんな小さな山に、とつぶやく(3人とも…)。背骨のような岩場を巻いて進むと切り立った岩場に突き当たった。溝状の岩の上から玉こぶを作った古びたザイルがぶらさがっている。立ち木もあり、ホールドやスタンスも豊富だから取り付いたところでは子供たちもこのくらいはまだ朝飯前といったところ、でもここまで来て初めて姿を現した大岩は素晴らしいくらい鋭角にそそり立ってアカヤシオのベールを纏っている。大岩を望む東側は潅木が生えて藪っぽいとはいえ、下の谷まで一気に切れ落ちていて足元や手元に注意をしているから感じないが、ちょっと休んで振り返るとかなり高度感もあって気が抜けなかった。上にまだ登っている集団の声がするし、向こうの大岩にも人の姿らしきものが見えている。連休中だから、やはりそれなりに人も多いようだ。それにしても、狭い頂上で17人の集団といっしょになりたくはないな。

 最初の岩場は易しかったが、その上で泥混じりの岩場に出て、ここがこの日の一番ポイントだった。「面白そうなとこに来たよ!」と、子供に声を懸けたら上の方から「面白いよ、ここは」という声がして、見ると直ぐ上を登っているくだんのグループの「そのご老人」が最後尾だった。しかし、岩場は2本のロープが固定してあったもののかなり手ごわかった。子供たちにしても、取り合えず登りだから何とか行けたところだけど、「下りは怖そうだね」と言っていた。こっちも結構怖かった。岩場をまっすぐに登ってから泥混じりの滑りやすい急斜面をトラヴァースぎみに巻くのだけど、この角度が変わる辺りが結構な高度感もあって、緊張するのだ。兎に角、ロープはまあ頼りになりそうだからこれを支えにしっかり3点確保で登れば登りはほぼ問題なしだった。そこを抜けるともう問題のある箇所は無く、頂上の一部に出た。幸いなことに先行した団体さんはここで降りてきたので、入れ替わりになり、山頂では三人だけで静かに過ごせた。

 四周は春霞に包まれ景色はもうろうとしていた。ガイドブックやネットで紹介されていた所によると、碧岩は低木が茂って展望は良くないとあったが、碧岩のプレートがある山頂を少しはずれると、遡ってきた沢側に素晴らしく眺めの良い場所があった。そこで昼食にした。最初の予定ではここを下りて大岩に行ってから昼食と思っていたが、腹が減ったのと眺めが良いのでここでお昼にしたわけだ。南牧の山々にしても、少し離れた鹿岳あたりはもう霞んではっきりとは見えなかったし、それより遠い山にしたらまったく霞の向こうに姿を隠していた。それにしても今日も暑いくらいの陽が照りつけて、また夏のようだった。
 
 三人だけの静かな山頂で昼食を食べて少しのんびりした。足元がスパッと切れ落ちている岩の上に子供たちは座ってお菓子を食べたり、やや霞んでいるとはいえ直ぐ下に見えるおもちゃのような南牧の集落やチョキとか鷹ノ巣岩とかの岩峰を見下ろして新緑の中に浮かび上がっているその景色を楽しんだ。
 ここから一番目を奪うのは、直ぐ北側に大きいククリ岩(名前と違って岩峰ではない、丸っこい藪山)と手前にぽこぽこ小さな岩峰がある双子岩だ、ここには残念ながら一般路は無い、西上州に残された数少ないバリエーションルートだった。こうして上から見た感じでは地形が複雑で、藪もかなりということだから結構難しそうだが、是非いつか登ってみたい。

 頂上はアカヤシオの花でいっぱいだった。今年はやや遅い開花のため、丁度今日辺りが一番の身頃だった。去年登った三ツ岩岳は頂上を帽子のようにアカヤシオが埋めていたが、ここもそれに劣らない、大津の西峰もやはり山頂をアカヤシオが埋めていた。大津の西峰は登る人も少ないだろうが、ここやとりわけ三ツ岩岳に至ってはこの花の開花期がハイシーズンの様だった。それもゴールデンウィーク中であるから、この三人だけの山頂は本当にラッキーだ。まだ、大岩もあるし何よりここの下りが今日一番の危険な所、あまり長くのんびりもしていられないから、一時間程で楽しい山頂を後にした。

 危険な上部の岩場で補助ロープを出そうかどうか?次男は使いたかったみたいだけど…高度感があるから怖いのは事実だ。登りの時と違って、下りは手でうまく支えられないから足を滑らせたら終わりの様な気がする。少し思案したが、固定ロープはしっかりしていて足元だけ注意すればそれ程難易度は高くない。
 子供たちを一人づつ、細かく指示しながら少しずつ降ろしていくことにした。少しびびっていたようだが、案外すんなり危なげなく降りた。長男は以前はかなりこういうところでびびったが、さすがに中二にもなると慎重さの中にも余裕が見える。次男はまだ大人と比べると身体が小さいので、手足を置く位置だけでも遠くてハンデがある。でも、二人とも久しぶりのわくわくする岩場で満足だった様だ。

 大岩に向かって辿ると、先ほどの団体はまだ分岐手前の大きな背骨のような岩の所でとぐろを巻いていた。てっきりこれで降りるのだろうと思っていたら、後で大岩に大挙してやってきて閉口した。大岩までのアプローチは、いわゆる西上州の藪山の尾根歩きだ。先週烏帽子岳に登った時はまだ早春の風情で山頂付近の木々は葉芽を開き始めた程度だったが、わずか5日程で頂上付近まで新緑に包まれている。やや気温が高めで霞んではいるが、木々の下にいると爽やかな風が気持ちいい。碧岩・大岩が繋がる稜線と、下降路に続く尾根との分岐の三叉路までは気楽なお散歩道だった。藪を抜け、見晴らしのいい岩頭に出た。そこから見た碧岩は鋭角にそそり立って、とてもあそこを登ったとは信じがたい、よく登ったもんだ。向かう大岩も岩稜がむきだしの頂稜が直ぐそこに見えてきて、子供たちも期待にわくわくしながらも、やはり緊張している。

 潅木の上に出るとそこからが岩稜帯だった。傾斜は30度くらい、ホールドもスタンスも十分にあり、特に登るには問題は無いが、背骨の様な岩稜の4,5メートル下からは低木が生えているものの、基本的には両側はすっぱりと切れてやや幅の広いナイフリッジになっている。まあ、アルプスの稜線歩き程度だね、と思っていたら南牧川側に巻き気味になり、ホールドも無い足元は不安定で落っこちそうだ。もちろん落っこちたら下まで転がり落ちてしまいそう…。また岩稜に戻り、右手に一度回ってから今度は忠実に頂稜を登る。下りはかなりやばそう、確保が必要かな?そこを抜けると後は左に回りこみぎみに登って、南牧の山にはどこにでもある例の「大岩1,133m」と書かれたプレートのある山頂についた。
 振り返ると、ガイドブックなどに良く出ている姿のいい碧岩がやや逆光に浮かび上がって見事だ。やはり向こうから大岩を見たときと同じで、アカヤシオが岩峰を彩っていた。碧岩・大岩はあまりアカヤシオについては触れられていないけれど、こうして来て見ると三ツ岩や大津などに負けないくらいこの樹が多いように思う。アカヤシオの有名な山は沢山あるけれど、共通の欠点はこの時期やたらと人が多いこと。ここは思ったほど人が多くは無かった。やはり岩場があって、上級とか経験者向きとか塾達者向きとかのランク分けのせいだと思う、アカヤシオだけが目当てならやや敷居が高い山だからか?

 山頂まで来ると、後続の団体が見晴らしのいい中間の岩頭の上に蟻のようにたかっていた。あれがそのうちここにやってくるのか。辿り着いた大岩山頂は碧岩方面を除いては、ガイドブックに書いてあるような展望は無かった。低木に囲まれて眺めは余り良くない、大岩と碧岩の記述が展望に関しては逆だった。踏み跡がずっと先に続いているのでそちらにしばらく辿ると東端にぶつかり、一段下に岩棚状の展望のよさそうな所があったのでそこで休むことにした。そこは周りをアカヤシオに囲まれたとても気持ちのいい展望台で、西側が開けていた。とは言うものの、霞の向こうはもうろうとして見えない事に変わりはない。鹿岳と四ッ又山までが限界で、北は荒船山の経塚山から毛無岩に繋がる稜線(下仁田と南牧の境)は何とか見えていた。直ぐそこにある三ッ岩岳と大津でさえも薄く霞んでいて、その向こうの烏帽子はもうろうとしている。下に見える山に白く見えているところは山桜が咲いているのだろう、かなり山中に山桜があることが分かる。岩場を持つ山の頂上付近は、アカヤシオのピンクがまばらに見えるのだった。

 眺めの良いここでゆっくりする事にした。取り合えず団体さんはここまでやって来なかった。お菓子を食べたり、双眼鏡であっちこっち眺めたりしてしばらくしたら、団体の一人が斥候にやってきて様子を伺い、最悪なことにこの四畳半程しかないスペースに残りの全員がやってきたのだった。この最悪の事態は10分程で終わり、彼らは上に戻っていったのだが。それにしても、先週の烏帽子といいなんで彼らは徒党を組んでこんな狭い山頂の山に団体でやってくるのか?やはりその神経を疑うばかりだ。行く山を選んで欲しいものです。

 時刻も2時に近くなったので1時間程ゆっくりした大岩山頂を辞し、下りに掛かる。下りは頂上直下リッヂ状の段差がある岩場で、少し怖かったが(子供達は見下ろす高度感に「補助ロープを出そうよ」と言った)実際に下りてみると大したことはなかった。でも、少し怖かったけどね…。後は難しい所もなく、集団を追い越してずんずん下った。下りきった沢の源頭でカップそばを食べてまた少しのんびりしたのだった。
 三段の滝で団体を再度追い越して、あとは遊歩道の道をたんたんと戻り、無事に駐車場まで帰ってきた。子供達は念願の碧岩・大岩に登れて満足だったようだ。今回に限っては、結構スリルがあったようで、ブーイングは無かった。また、いつものように恵みの湯に寄って帰路についた。ゴールデンウィーク中にしては道路も混まずにスムースに帰れたのだった。

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