今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

西上州、烏帽子岳

2006年01月24日 | 山登りの記録 2005
平成17年4月24日(日)

 今年になって初めての登山だ。この冬は寒くて雪が多く、例年なら冬場でも西上州の藪山に行けるところだが、西上州辺りでも積雪があるようで行きそびれているうちに春になってしまった。4月になっても桜の開花も遅く、一向に暖かくならない。暖かい日があっても、またすぐ冬に逆戻りしてしまうような日々だった。遅かった桜も終わり、周囲の山々も新緑が萌え出でる時期になって、ようやく山に行く心持ちになった。
 子供達も初めは二人とも行く気でいたが、残念ながら次男は風邪でダウン。長男もこのところ部活ばかりで気分一新山に行きたがっていた。去年の12月23日に御座山に登って以来、また長男と二人で山に行くことになった。

 6時に起きて出発。道路がそこそこ混んでいたこともあって、大仁田ダムの先の烏帽子岳駐車場に着いたのは、9時に近くなっていた。広い駐車場に10台以上の車が停まっていて、後から後からまた車がやってきた。直ぐ下の大仁田ダムの駐車場はすでに一杯で、アカヤシオの名所になっている三ツ岩岳に登る人たちは多いことが知れたが、烏帽子に登る人たちもかなりいるようだ。この時期この辺の山はどこもアカヤシオに頂上部を彩られて人気スポットになっている。
 
 そうそうに支度をして沢沿いの道を進む。後になり先になって中高年グループや家族連れと抜きつ抜かれつした。渓流沿いの上りは気持ちが良い、新緑が今萌え始めたばかりの道沿いには、叡山スミレやエンレイソウ、ネコノメソウなどの春の定番の花がかわいらしかった。見上げる斜面の岩場には、ピンクのアカヤシオが咲き出していた。去年、三ツ岩岳と大津に登ったのもほとんど同じ頃だが、山頂のアカヤシオは既に花期を過ぎて落ちてしまった花も多かった。去年はこの時期に諏訪山も登ったが、諏訪山でも沢山のアカヤシオが咲き競っていた。
 アカヤシオは頂上部の岩場に多く、岩場のない山には少ない、というより見られないようだ。以前はこの時期に余り山に登らなかったので、アカヤシオという名は良く聴いたが、こうして毎年この花に彩られた山に登ると、この花の独特の色気が魅力に感じる。確かに若い頃はあまり花なんかに興味は無かった、というよりツツジの仲間は総じて好みではなかったこともあえて花期にこの辺りに訪れなかった理由にもなる。バラを始め桜などのバラ科の花の上品で高貴な雰囲気と違って、ツツジ科の花は色が派手で余りに木を覆うがごとくに咲くので、場末のネオンや水商売の女を連想させて好きになれなかった。
 ところがアカヤシオという、地元で「ひとつ花」と呼ばれているこの花は雰囲気が違っていた。花色は紫に近い薄いピンクでやや濃い色のものもあるが、葉がまだ出ない枝先に文字通り、一つだけ大きめの花を咲かせるのですっきりとして色合いも上品で、何よりはにかんだ少女を連想させる清々しさがあった。あの多くのツツジ類に見られる安っぽさが全くなくて険しい岩場に固まって咲くその風情も好ましい印象を与えた。

 沢沿いの気持ちのいい道は次第に傾斜を増して、渓流は伏流になるとすぐに流れは消えた。郡界尾根に向けてすり鉢のへりの様な急斜面を登るようになった。ここで抜きつ抜かれつしていた連中とはおさらばで一気に稜線まで上った。稜線は藪っぽいので展望は利かない、蟻のように下の沢筋を登ってくる後続の人たちが見えている、南牧の集落の上に経塚山から鹿岳に連なる山並みが青く、その上に牛のように白黒まだらの浅間山が頭を出していた。今日は天気が良い上に、春にしては空気が澄み切って遠目が利く。長男はこの程度では疲れていない様なので、すぐに先のマルに向かって潅木の茂る尾根筋を辿った。
 
 行く手のマルと呼ばれる藪山の向こうにシラケ山と天狗岩が見えていた。マルまでは一登り、ここのほうが実は烏帽子岳よりも高くて藪を透かして下に人だかりがしている烏帽子の山頂が低く見えた。あの狭い山頂で沢山の人といっしょに居たくはないな。休むまもなく潅木の斜面を一下りで鞍部に出て、そこに沢に直接下っている道があった。登りの時に見落としたのか?これは下の沢から直接烏帽子に上る道だった。「帰りはこれを下ろう」この下は急な下りが予想された。登りに使う道では無い。鞍部から急な泥交じりの木の根が出た斜面を一登りで頂上の一角に出た。幸い途中でアカヤシオの写真を撮っていたら頂上にいたグループが降りてきたので、入れ替わりになり山頂は静かだった。

 春の霞もあまりなく、北アルプスの白馬から後立山連峰の白い山並みや、草津白根や上越国境の白い山並みまで見えている。山頂はほんとに狭く、畳にしたら7、8畳ほどしかない。久々の山頂の雰囲気を楽しむのも、しかしわずかな時間だった。一段降りた見晴らしのいい処で休んでいたら、下からぞろぞろと団体が上がってきて、間もなく山頂はその年配グループに占領されてしまった。それにしても30人近くもの団体でこんな山頂の狭い山にやってくるその無神経さには呆れるばかりだ。山頂は文字通り足の踏み場も無い。占拠した上に、グループのリーダーと思われる甲高い声の老人が「乾杯します」だの「なべが煮えた」だの大声で何度も言い回っている(この人頭がおかしいのだろうか?いったいここは誰の山なんだろう)。
 おむすびやおかしやいろいろ食べて、団体なんか気にしないで眺めを楽しんだ。去年登った大蛇倉山と蟻ケ峰が高く見えていた。小川山や甲武信や金峰山の一部も見えたし、おにいと前回登った御座山もシルエットになっていた。頂上の北側からは経塚山から立岩・毛無岩・鹿岳・四ツ又山の山並みの上に浅間山とその向こうにもずらりと山岳展望台だった。手前に三ツ岩岳・大津の岩峰は頂上部がアカヤシオのピンクに染まっていた。あそこも混んでるだろうな。その向こうに碧岩と大岩・双子岩とククリ岩が見えていた。山頂には1時間半くらい居て、まだ老人がわいわいやっているのを尻目に下った。山頂の直ぐ下にも小グループが見晴らしのいい岩角に鈴なりになっていた。ヤレヤレ…ご盛況です。
 
 下りはショートカットの急なくだりを滑り落ちるように沢に下りて、しばらく遡行し、後はゆるやかな沢沿いの道を下って無事登山口に下りてきた。長男も登り足りない感じはしたけど、「久しぶりの山で、足慣らしかな」と言っていた。
 
 大仁田ダムに立ち寄ってから帰った、それでも「村の駅オアシス南牧」に寄って味噌やこんにゃくを買ったり、磯辺の「恵みの湯」に寄っても、家に帰ったのは5時前だった。軽い足慣らしといった山行だった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿