今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・王岳、三方分山

2014年01月17日 | 山登りの記録 2014

平成26年1月12日(日)
五湖山1,340m、横沢の頭1,430m、王岳1,623.3m、三方分山1,422山m、精進山1,409.0m

 毎年年初はお正月らしく富士山を見に山に登っている。今年の初登山は事情により地元の山で足馴ししたので、富士見登山には行けなかった。しかし、1月の第2週は3連休なので、遅ればせながら富士山を眺める山に出かけることにする。昨年は黒川鶏冠山から大菩薩嶺越しの富士山を遠くに眺めたが、今年はぜひ近くから大きな富士を仰ぎたい。富士周辺は昨年11月に竜ヶ岳と雨ヶ岳に登っている。近くからといえば、やはり御坂山地の山だろう。地図で検討し、3連休でも余り多くの人がやって来なそうな未登の山ということを考慮し、御坂山地の端の方にある王岳に決める。精進湖から女坂経由で王岳を往復すると、反対側の三方分山も一緒に登れそうだ。あわよくばパノラマ台まで行ければ良いが、日も短く雪もあることだしそこまでは無理だろう。11日の土曜の夕方に家を出て、佐久回りで山梨に向かった。

 正月以来今年最強の寒波が来ている。この寒波は来週まで居座るという。山梨の西南方面に行く場合は、佐久回りでも時間的に変わらないことが分かったので、最近は佐久から野辺山を経由して山梨入りするが、この寒波でさすがに夜の9時過ぎに野辺山を通過した時点で外気温が-12℃になっていたのにはびっくりした。車を停めて外に出ると凍て付く様な寒さだった。ちょっと外に出ただけで顔が痛くなった。甲府盆地に降りて-6℃、精進湖の県営駐車場に11時に着いたが、ここで-7℃だ。駐車場の周りを囲むようにホテルや民宿が並んでいるのだが、この駐車場はまるでそれらの施設のためにある様だ。黒々とした精進湖の湖水の向こうには、既に大きな富士山が塊になって存在感を示していた。直ぐにシュラフに潜って眠った。

 翌朝6時半に目覚めるが、余りに寒くてシュラフから出る気がしない。7時近くになって、駐車場が賑やかになってきたので起き上がる。外気温は-8℃だった。広い駐車場には数台の車がやって来ていたが、全ては富士山の日の出の写真を撮りに来ている人たちで、山に登りそうな人は見当たらない。三方分山からパノラマ台周回ならば、3連休だし、少しは人気があるのかなと思っていたが、山に登りそうな人を見かけないのは意外だった。この日、ぼくが出発した後のことは分からないが、王岳では多くの人に会ったものの、復路で女坂峠に向かう人が1人だけ、三方分山では誰にも会わなかった。戻ってきた駐車場もやはり森閑としていたので、真冬にこの辺りの山を登る人は少ないようだ。

 パンを食べ、トイレを済ませて7時28分に精進湖県営駐車場を出発する。道路から一段下の精進湖畔には沢山の車が停まり、テントまで張ってある。でも、これらの人たちは富士山を見るためだけに来た人とワカサギ釣りの人で、やはりハイカーは居ないようだった。ちょっと場違いな雰囲気で、クマ鈴をちんちん鳴らしながら精進湖畔を女坂峠の登山口に向かう。道端にある途中のホテルの窓から、朝風呂に入っている人がこちらを見ていた。精進という名前のバス停がある集落、角に青い建物の「かどや」という食堂がある。ここは旧中道往還の居村という宿場だったそうで一直線の道の両脇に古い家が立ち並んでいる。地図に名所旧跡の印がある『精進の大杉』が、集落の途中にある神社の境内にあった様だが、後で気づいたので見られなかった。古い家々は人の住んでいない廃屋も多く、観光用の説明看板にあるような雰囲気はこの旧宿場には既に無かった。山道に繋がる最後の家は壊れかけた藁葺きの廃屋だった。

 集落外れからそのまま堰堤がある沢になり、ジグザグに登っていく道になった。登るに連れて凍った雪が出てきた。精進湖周辺には全く雪も見えなかったが、パノラマ台辺りの山の北面には雪も見えたので、稜線は積雪もあるだろうと歩き出す時に用意してきたスノースパイク(6本爪アイゼン)を持ってきた。今回12本、8本、6本と3つアイゼンを持ってきたのだが、稜線を歩いた感じではこれで正解だった。今日は気温こそ低めながら、風も無いので陽が当たってくると暖かくなった。

 女坂峠に8時35分に登り着く。首の無い地蔵が数体、読めない古い石碑、阿難峠(女坂峠)の説明看板と、三方分山・王岳を示す方面標識が立っている。ここで雪は5cmくらい。まだアイゼンは必要ない。女坂峠から東の五湖山に向かう。行く手に遠く王岳と思われる突き出したピークが手前の枯れ色の山の上に見えている。随分遠くに見えるが…。初めはササの生えたブナやカエデの林だったが、次第に岩場が出て岩頭を上下する痩せた稜線になった。雪は20cmくらいに増える。岩頭からは眺めが良く、真下の旧宿場集落の先には三分の一くらい凍っている精進湖を見下ろす。三方分山も全体が見えてきて、そこから続く稜線の向こうには竜ヶ岳や毛無山がシルエットになって浮かぶ。西には遠く白銀の南アルプス、北に甲府盆地の向こうには八ヶ岳、北東に奥秩父の山々が並んでいる。青空の下は既にパノラマが広がっていた。富士山は背後から陽を受けて神々しいばかりに巨大な塊になって聳えている。最近は雪が降っていないのか、意外に雪の見えない所もある。

 岩場が終わると急な登りで、アセビが多い樹林の中に登り上げる。間もなく9時25分に五湖山山頂に着いた。五湖山山頂には小さな標石と山名標識が立っていた。アセビなどの木々に囲まれ眺めは良くない。富士山側だけ小さく窓のように木が切られている。五湖山頂では休まず先に進む。五湖山を下ると、先に黒々とした中に北面の雪斑を見せる王岳が高く近づく。同じ様な高さの上り下りの稜線がそこに続いている。雪は30㎝を越えるところもあるが、しばらく前に降ったもので表面は固くなっているから比較的歩き易い。あまり多くの人が行き来したようなトレースではないから、この稜線を冬に歩く人は多くないのだろう。王岳までの稜線は小さなアップダウンの繰り返しで、ブナやアセビの樹林の中、意外に展望がある所は少ない。時々富士山側は眺めもあるが、北側の甲府盆地方面がすっきり見える所はほぼ無かった。横沢の頭を過ぎ、1465m標高点のピークでホンの少し休憩する。というより、近づいてきた王岳北面の急斜面が雪で真っ白になって見えるので、念のためここでアイゼンを付けるために休んだ。ついでにせんべいを食べて紅茶を飲む。王岳から西湖に落ちている尾根の途中に弁当箱みたいな四角い岩峰が見えている。横沢の頭を下り、王岳の真下までは緩い登り、王岳北面に回りこんで日の差さない急な雪の斜面登りになった。北面なので積雪量も多く40cm近くある所もあるが、凍って固く締まっているので歩き易い。トレースはあるが、余り多くの人のものではない。上部はかなりの傾斜で、木掴みで登るような所もある。凍結した岩場もあるのでスノースパイクを付けていて正解だった。肩まで登ると、西側の展望が開けた場所があり、かなり遠く低くなった三方分山の向こうには南アルプスの銀嶺が並んで見えていた。南アルプスが手前の山や木々に邪魔されずに見えたのは結局ここだけだった。

 急登にあえいで傾斜が緩むと西湖畔の根場からの登山道と合流する。そこには新しく立派な方面標識が立っていた。西湖からの道は雪に溝状のトレースもできて、歩く人が多いことを伺わせる。ここまで辿ってきた精進湖からのか細いトレースとは全く違っていた。直ぐ先が王岳山頂だった。王岳11時40分着。随分時間が掛かったものだ。王岳に着いたら、それまで誰にも会わなかった静かな山が一変する。山頂には7,8人のハイカーが既に休憩していたのだが、荷を置くまでもなく鍵掛方面から10人以上の東北なまりの団体さんが到着し、追いかけるように何組かのハイカーも相次いで到着して、余り広くない山頂は人で一杯になってしまった。これはスゴイ…こんなに人が多いのは想定外だ。山頂端の雪の上にシートを置いて湯を沸かし、リンゴとカップ蕎麦を食べる。ぼくの回りも人に囲まれてしまった(幼稚園の遠足みたいだ)。南正面に大きな富士山がどーんと見えているが、あまりに見事で美しいのでCGか作り物の様な感じもする。真下には西湖が、稜続きの東には角が出た鬼ヶ岳とその向こうには三ッ峠山が見えている。足和田の山並みなんかはずっと低くて目に留まらない。というか、正面の富士山以外は余りにスケールが違いすぎて霞んでしまうのだった。ここからは西や北の展望は得られなかった。王岳山頂には二等三角点標石と山名標識、の他に、南妙法蓮華経と彫られたまるで墓石の様な石碑があった

 12時14分に王岳山頂から引き返す。2組の団体の一方が先に出発して行った。帰りに団体さんと同じ方向は嫌だなと思っていたが、女坂峠方面に向かったのはあんなに沢山いた人々のうち、ぼく以外は1人だけだった。やはり冬場はここから女坂の間を歩く人は極端に少ない様だ。西湖に降りている道に、ボブスレーコースの様な溝状のトレースがあったのも。冬場に王岳に登るほとんどの人は、西湖から鍵掛経由で登ってここを下っているからなのだろう。

 女坂に向かうハイカーはほぼ居ないから、復路も静かなスノーハイクには変わりがなかった。五湖山山頂で少しばかり休んで樹間から富士を眺めながらコロッケパンやチョコフレークを食べる。王岳から五湖山間はほぼ樹林で眺めが無いが、五湖山と女坂峠間は岩頭の上下になって眺めが良い。行きは逆光で見えづらかった南方向の山々や、精進湖周辺の様子も良く俯瞰できた。富士山も順光になり、より立体的に見えている。2時47分に女坂峠に戻ってきた。さて、大分時間も押してきたが、予定どおりここから三方分山に登って、更にパノラマ台まで欲張るのは無理そうだ。精進峠から精進湖に降りることにして三方分山を登っていく。大分陽が傾き、間もなく山に囲まれた精進湖には陽も差さなくなりそうだ。三方分山までの登りは痩せ尾根で、北面が切れ落ちている上に凍結した急斜面なので気が抜けない。ここばかりはアイゼン無しでは危なくて登れない。

 3時27分に三方分山山頂に着いた。ブナ等が茂る平坦で広い山頂だ。ここの山梨100名山の標柱も大分朽ちてきている(王岳のものはほぼ朽ち果てていた)。その他にも方面標識等がある。樹林の中で眺めは無いが、南側の木が切られ富士山だけが見えていた。ややバラ色になっている陽を受け、ここから見たものがこの日の富士山の中で一番キレイだった。大室山を前に配したいわゆる「子抱き富士」だ。木々が切られた斜面に腰掛け、そんな富士山を眺めながらせんべい等を摘んだ。

 重い腰を上げて、人の気配も無く、夕日を浴びるようになった三方分山山頂を後に、3時40分に樹林の中を緩く下って小山に登り返す。足元には表面がつるつるになり刻まれた文字も不明の三角点標石がぽつんとある。標石の様子から、おそらくは三等三角点と思われる。登山道傍らの盛り上がりに、おもちゃの様な銅製の小さな小さな祠があった。ここが精進山と名付けられた山頂らしいが、山名板の類は見当たらなかった。精進山からは木の根が出た急な下りになる。遠く七面山辺りと思われる山並みの向こうに、赤い太陽がかろうじて見えていた。精進峠までの下りも、大して雪は無いものの凍結している所ばかりで、ここもアイゼン無しでは危なくて歩けない。精進峠に降りて、パノラマ台への道と分かれ、そのまま精進湖に向けて下った。しばらく下ると雪も消えたのでスノースパイクを外したが、その先で沢筋から尾根の北側を絡む箇所がてかてかに凍っていた。ストックを突きながら、慎重におっかなびっくり降りる。やはりアイゼンの効果は絶大だ。降りきった所は山田屋ホテルの裏で、道に出ると県営駐車場は直ぐ隣だった。5時10分に車に戻った。すっかり陽も落ち、青黒く沈んでいく景色の中で、大きく聳える冷たい色の富士山も、また朝とも昼とも違って神々しいものだった。支度を済ませ、駐車場や周辺は人も疎らで、静かな夕暮れの湖畔を後にした。

 帰りは甲府市内の草津温泉(群馬で最も大きいあの草津温泉と同じ名前)に寄って入浴する。外観も、中の様子も、そのまま銭湯という感じだ。休日の夕方とあって、入浴客で一杯だった。源泉についての説明書きなどあるが、湯の感じなどあまり温泉らしさも無く、ネットでのクチコミも当てにはならないようだった。取り合えず身体だけは良く温まり、また野辺山から佐久回りで帰路に着いた。小雪が舞うものの、帰りの野辺山の気温は-4℃で、昨日の-12℃から比べればごく普通の寒さだった。


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2 コメント

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王岳山頂からの富士山は風呂屋の書き割りののような (ノラ)
2014-01-18 20:55:50
あさぎまだらさん こんばんは。随分長い歩きですね。王岳からの富士山は現実の景色のように見えませんね。
出発した精進湖の湖畔は凍っているように見えません。車がいっぱいいて釣りと富士山の写真撮る人ばかりというのも不思議な感じです。鍵掛峠は通ったことあるのでその時王岳への道標を見たので行ったことが有るような気がしていたんだと思います。
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CGの様な富士山 (あさぎまだら)
2014-01-19 01:29:38
ノラさんこんばんは。
相変わらずの寒さですね。今晩から明日にかけては平野部でも積雪があるということです。
確かに王岳からの富士山はあまりにも見事で雄大な眺めです。まるでCGの様な嘘っぽい景色でした。風呂屋の書割という感じもします。というか実際に富士山(多くは三保の松原からの富士山)が描いてある風呂屋というのもあまり多くは無いと思いますが…いわゆるイメージとしてですね。
そんな感じです。文句のないフジヤマでした。
精進湖は3分の1くらい凍結していました。ワカサギ釣りの人は船で釣っていたようです。
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