今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・八海山

2007年10月18日 | 山登りの記録 2007
平成19年10月14日(日)
八海山1,778m(最高点丸岳、別名入道岳)
 
 2週続けて遠くに出かけた。先々週は登山口で無念のリタイアだったけど。そうそう遠くにばかり行っていられない。一人で山ばかり登っていると、家族のひんしゅくを買う…ネットで毎週のように山に登っている方の記録を見るけど、みなさんご家庭は大丈夫なのでしょうか?(要らぬ心配…かな)とはいえ、ぼく的には少しは奥さんとコミュニケーションを取らなくてはいけないので、土曜日は夫婦で奥日光に紅葉見物に出かけた。久々のデートでした。

 ということで、日曜は日本海側が晴天らしいので、また小遠征だ。紅葉はどこが良いかな?と考えて、昔、真夏に越後三山縦走に出かけ、中ノ岳で丹後山方面にエスケープして、登れなかったままになっている八海山に行くことにした。この辺りなら一般道でも3時間以内で行けます。

 昔は無かったゴンドラ(ロープウェイ)が掛かって、紅葉シーズンは大層な人出かもしれない事も考慮したけれど、ロープウェイでやって来る人たちより早く頂上に着いてしまえば、時間差で混雑回避ができるであろうという?希望的観測で出発した。
 当然、だからロープウェイなんか使わずに、ちゃんと下から登るわけです。ロープウェイの始発は8時50分だから、9時に山頂部に着けば楽勝です。

 夜9時に家を出た。空いた国道17号を北に、三国峠を越え新潟入り。昨年の丁度同じ頃、次男と苗場山に行って以来の新潟の山だ。湯沢を過ぎて南魚沼市の六日町から八海山麓の山口に向かい、0時丁度に屏風道の登山口に着いた。登山口の林道脇の駐車場には、既に10台くらいの車が停まっていた。アラームを5時にセットしてシュラフに潜った。

 アラームで目覚めるが、寒いのと暗いのとで、少しぐだぐだしていた。5時半近くになってシュラフから出て支度をしていると、車がやってきて隣に停まった。やはり、結構登る人は多いようだ。おむすびを食べて5時46分に出発。まだ少し薄暗いが、ヘッドランプまでは要らない。他の車からも人が出て、支度をしている人や登り出す人が動いている。屏風道は八海山の幾つかある登山道で、最も急な道で、クサリだらけの急峻な道だ。
登山口には登山カード入れのポストがあった。何とか霊神、と刻まれた石碑が幾つも林立ちになっているところは、いかにも修験の山らしい。ここが二合目と言うことらしかった。

 直前に到着した隣の車の方は、女性で単独行の様だった。屏風道には入らずに先に進んでいったから、ぼくが下りに利用しようと思っている新開道から登るようだ。やや薄曇りで、晴れてはいないけれど、予報を信じて登ることにしよう。
杉の林から、雑草が生い茂った沢沿いの道を少し行って対岸に渡り、次第に傾斜が増してくる。ヒンヤリした空気が気持ちよく、汗をかかないから快適だ。

 行く手高く、のしかかるように乱杭歯の頂上部がシルエットになって見えてきた。そこまで、随分距離がありそうだ。八海山は標高こそ1,770mくらいで低めだけれど、登り口の標高が低いから標高差は1,300mくらいある。結構な登りなわけだ。6時12分に、丸い岩の下に「お犬様(きつねみたい)」が向かい合っている「三合目」を通過する。

 沢沿いをぐんぐん登るようになり、錦に彩られた岩壁を割って落ちる清滝が見えてくる。清滝を真上に仰ぐと猿田彦の祀られた五合目で、6時38分に通過。沢山の石碑と壊れ掛けたお堂が建っていた。ここから沢を離れ、屏風沢の由来か?屏風の様な岩を間近に見ながら、支稜を岩がらみに登るようになった。クサリが出始める。初めは要らない程度だったが、次第に気を入れて登らなければならないくらいのクサリ場になっていった。連続してクサリがあるので、高度をどんどん稼いで行きそうだが、その割に、のしかかるような乱杭歯はちっとも近づいてこない。

 八ッ峰の乱杭歯の岩峰付近は、紅葉が三分くらい、岩に赤や黄が映えて美しい。背後に魚沼丘陵と六日町辺りの町が低く層雲の下に見えていた。南西には巻機山がどっしりと大きい。頸城や上越の山々が、幾分高曇りな空の下に青紫に連なっていた。日本海は見えないが、米山がつんと尖っているのでその向こうに海があるはずだ。

 次々にクサリ場を過ぎて、高い木々も少なくなり、周囲が見渡せる痩せた支尾根を登っていく。下から鈴の音が近づいてくる。ぼくが写真を撮っていたら、間もなく40代くらいの軽装のハイカーさんが、追いついて先行された。そんなに急ぐわけでもないし、景色を楽しみながらマイペースで登っていく。ゆっくりペースでも充分ロープウェイ組より早く頂上部に着けるから…直ぐ上が七合目で、展望台になっていた。
七合目摩利支天に8時丁度に到着。

 岩の台上に眼光鋭い役の行者?のブロンズ像を中心に、右に小石祠と左に釣り鐘があった。ここは八ッ峰の素晴らしい展望台だ。真上にずらっと八ッ峰が勢揃いして、三分の紅葉ながら、絶景と呼ぶべき景観だった。

 七合目から千本檜小屋に続く尾根に斜上するようになる。斜度のきついクサリ場が連続し、今までと違って高度感が出てくる。左側は屏風状の岩場で、この辺りから登ることが楽しくなってきた。八ッ峰の不動岳の岩峰上には人が立ち、ホラ貝の音が聞こえてくる。やはり、ここはそういう山なのだった。この景色にホラ貝の音が木霊して、八海山はますます素晴らしい劇場になった。

 岩混じりのクサリ場を幾つか越すと、尾根の上部に出た。もうそこに千本檜小屋の屋根が見えてきた。見下ろす尾根は正に錦秋の装い、直ぐそこに黒々と近づいてきた不動岳の岩峰も、赤や黄のステッチで飾られていた。屏風沢の上部は、磨かれたスラブが光っていた。千本檜小屋に9時5分着。

 千本檜小屋は今は無人の避難小屋だった。しーんとして人の気配もしない。小屋の間を抜けて稜線の東側に出ると、いきなり目の前に越後駒ヶ岳(魚沼駒)が姿を現した。雪こそすっかり消えてはいるが、谷筋は豪雪と雪崩に磨かれ、標高を感じさせない豪快な山容は圧倒的だ。尾根続きの中ノ岳も奥に見え、馬蹄形の越後三山はこうして見ると、三つで一揃いのまさに三山で一体というイメージだった。かつて登った駒も中ノ岳も、とにかくきつい山だったという想い出ぐらいしか浮かんでこないが、ここはやはり、この時期に登るべき山々だという気が今更ながらだった。暑くて虫が多い夏に登る山じゃないな…。

 千本檜小屋の前に八ッ峰のガイド看板があって、八つの峰全ての名前と絵地図が描かれていた。「八ッ峰は上級者コース」、その先の看板には「不動岳から先、大日岳までは上級者コースで危険です。落ちたら助かりません!」と書いてあった。ということで、ここからいよいよわくわくする八ッ峰コースになるのだった。

 まず、最初は地蔵岳と不動岳、この2つの岩峰の真ん中まで西側から一旦回り込み、クサリでちょっと登ると鞍部で容易。地蔵岳にはお地蔵さんが2つと石碑、真新しい御影石の「地蔵岳」の標柱があった。不動岳には石碑が沢山と不動明王がにらんでいた。再度危険を促す注意看板があり、ここまでが初心者コースということだ。「転落すれば助かりません…」の最後通告?成る程、この先を見ると丸い岩峰が幾つも連なって、それらにはほとんど木々は無く、つまり岩峰から岩峰へクサリで登攀しては下る事を繰り返して、一番向こうの高い大日岳までここから6つ上り下りするという事なのだ。

 全く遮るモノも無い岩峰から岩峰へ、四周は絶景で、こんな素晴らしく楽しい、少しコワイ、山登りは久々だった。不動岳で一休みし、この先の八ッ峰核心部、残る6峰に備えて腹ごしらえをした。先行していたハイカーさんが、先の七曜岳のてっぺんに立っているが、全くの岩の上で、立っているすぐ前は絶壁なのだった。見ているこちらが落ちそうでコワイです。

 一休み後、見た目程の事もない丸いなだらかな岩をクサリでするすると降り、鞍部に降り立つ。鞍部からは東側に回り込み、岩を斜めにトラヴァースする。フリクションが良く利く岩で快適だが、もし滑り落ちれば確かに少なくとも数十㍍の滑落は必至だろう。七曜岳頂上に上がる所は高度感も抜群です。七曜岳には御影石の標柱しかなかった。
 また下って、白河岳・釈迦岳と通過、同じようにキレット状に下ってクサリで上り返す。先に進むに連れて下りが結構シビアになってきた。特に白河岳の下りは切り立った西側の絶壁をそのまま長いクサリで下降するので、空中を降りていく感じだ。釈迦岳を下ると、月の池・日の池という小さな池塘がある八ッ峰中腹のトラヴァース道に下る道がある。岩に黄のカエデ類と草もみじ、赤のナナカマドがちりばめられて、この辺りは美しい錦秋の絶景だった。

 釈迦岳から見た先は、一塊りの突き立った岩峰に見えたが、そこも三峰に分かれている。手前の摩利支天はチムニーを3段のアルミはしごで登って、次の剣が峰は深く切れ込んだ鞍部からクサリで上り返すが、この下りも結構な高度感があるクサリ場。そして最後の八ッ峰最高峰の大日岳は、東側からほぼ垂直の岩をハシゴとクサリで登攀して登り切るが、ここの登りが一番シビアだった。落ちたら終わりだよね…ここは。

 大日岳の頂上には、意地の悪そうな顔をしたビリケンみたいな神様が剣を持って立っていた。八海山大神のプレートがある(この神様がおおみかみかしら…)。そして、今まさに、ここで白装束の行者さんが般若心経を大きな声で唱えてから、ホラ貝を吹き鳴らしていたのだった。この方が、ぼくが屏風道を登っていた時に、上でホラ貝を吹いていた人です。本当にこういう人が山駆けの行を今でもしている所がこの山らしくて凄いところです。大日岳に10時19分着。

 修行の邪魔をしてはいけないので、大日岳は直ぐに降りてこれで八ッ峰の岩峰めぐりは終了した。大日岳の下りも厳しいクサリ場だけど、すっかりクサリ場も慣れたから、もうどうと言うこともなかった。

 大日岳の下には新開道から登ってきたらしい人が休んでいた。この先はがらっと雰囲気が変わり、紅葉に彩られた丸くてなだらかな八海山最高点の丸岳(ガイドブックなどでは入道岳)へのんびり登って、10時44分に丸岳に着いた。少しずつハイカーが増えてきた。丸岳山頂にも後から続々と人がやってくる。中ノ岳方面から縦走してくる人もぽつぽつ到着。ここから中ノ岳へ続く稜線は、最低鞍部のオカメノゾキに深く下って急峻に上り返している(ここは、昔真夏にぼくがリタイアした所だったな)。こんな季節なら、快適に縦走できそうだ。

 丸岳山頂から八ッ峰方面を見ると、ロープウェイで到着したらしい人たちが、その岩峰の上に立っていて蟻みたいに見えた。こうなると、クサリ場は「待ち渋滞」になりますね。早めに下から登ってきて正解だ。

 パンやお菓子を食べて、11時13分に丸岳を後にする。大日岳鞍部までもう少しの縦走路脇で、八ッ峰を上り下りする人が良く眺められるのが面白くて、また休憩してカップうどんを食べた。ぼくと前後して、ほぼ同じ様に屏風道から登ってきた静岡から来たというハイカーさんも、ぼくに付き合って休憩し、楽しくおしゃべり。お互いのホームグランドの山情報を交換した。この方も相当沢山登っておられる様です。

 12時丁度に大日岳鞍部から新開道に下った。この道を下る人も矢張り少ないようで、ぼくが下に降りるまで誰にも会わなかった。新開道も途中まではクサリやハシゴが続くが、一段下った辺りからは、紅葉の八ッ峰を仰ぐのんびりした普通の登山道になった。見上げる八ッ峰は、何度も書くがまさに絶景の感がある。

 2時27分に登山口の駐車場に降りた。朝より沢山の車が停まっていた。地元のナンバーはほとんどなくて、みんな結構遠くからやってくるようだ。
八海山を後に帰路につく。振り返る八海山は屏風のように立つ、立派な山容で、本当に越後の名山という貫禄だった。お酒を飲まないぼくは「八海山」には縁が無いけど…。

 六日町の農協でおみやげを買って、湯沢の日帰り温泉「駒子の湯」で汗を流して家路についた。駒子の湯はちょっと狭くて、露天もないから△でした。
紅葉の八海山の美しさと八ッ峰めぐりの楽しさは、ずっと記憶に残りそうな、最高の秋山だった。

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