今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・松岩山

2008年11月16日 | 山登りの記録 2008
平成20年11月11日(火)
松岩山1,512.1m

 11・12日の2日間は、この時期恒例の人間ドックだ。いつもは町の中の病院で受けていた。そこは、近くのホテルが宿泊場所に指定されていて、ホテルのレストランでフランス料理か中華料理が食べられる。でも、ちょっと飽きた…。
 ぼく的にはフランス料理なんかより、温泉に入れて山が見られる(できれば登れる?)所の方が、ずっと嗜好に合っている。ということだったから、今年は六合村にある六合温泉医療センターという山奥の施設を希望した。一泊二日ドックといっても、検査なんかがあるのは午前中だけで、午後はほぼ自由時間だから…あわよくば近くの山に登ろうと、もくろんでいた。六合村に向かうぼくの車には、だから当然山登りの支度一式と、未登であった松岩山他の地図や資料も載せていた。

 松岩山という名前はずっと前から知っていたが、今まで登ろうと思ったことは無かった。六合村と中之条町の町村界を作る山並みには高間山・松岩山・相の倉山・木戸山という山が地図に名前がある。どの山も薮山で、あまりハッキリした道のない山だから、ぼく的には気になる山域だ。しかし、吾妻方面の低山は意外に登っていない。その向こうの、県境方面は登ってるんだけど…何となく今まで足が向かなかった。その松岩山は、数年前にルート整備をして、今では2時間程のハイキングコースになっているという。だからこそ、今回は一番の本命だった。

 11日の午前中は、採血や検尿・眼底検査・レントゲン撮影・超音波診断・胃カメラなんかの検査一式があった。検査後は温泉に入り、お昼を食べて(かなりの量の食事でお腹一杯だ)解放された。時刻は12時半。あいにくのお天気で、朝は晴れ間も見えたが、午後はすっかり曇っている。でも、雨は降らなそうな気配だ。

 医療センターから林道で小山を越せば、松岩山の登山口までは15分くらい。さっそく支度をして、車で松岩山登山口の世立集落にある『ふるさと活性化センター・よってがねえ館』を目指す。周囲は素晴らしい紅葉で、特に林道から世立までは落葉松の黄葉が素敵だ。ふるさとセンターから先、暮坂峠に向かう道を少し行くと『松岩山登山口』と薄れた文字で書かれた看板が立つ林道入口に出た。ゲートは開いていたからそのまま進み、林道終点の伐採地(開墾地)の畑に着いた。電柵で囲まれた中に、ほうれん草や大根・白菜など数種類の野菜が見られた。一册ごとに作物が違うから、家庭菜園みたいだった。多分、売るために作っているのでは無いようだ。

 さて、開墾地から上に向かう細い林道があるが、看板などの類は見あたらない。地図を見て、参考に持ってきたガイドブックなんかを照らし合わせて、車を坂道下の待避帯に置き、13時8分にその林道を進むことにした。ミズナラを中心にした雑木の尾根を巻くように林道は先に進む。しばらくは緩くだらだらと続いていた。この辺まで来ると、あらかたの木々は葉を既に落として、冬枯れの様相だった。でも、落葉松やモミジには色鮮やかな葉が残っている。下草は低い笹に覆われ、ミズナラ・ブナ・カエデなどが美しい林だった。南に蛇行するように尾根を進むと鞍部状の所に着いた。『またぎ平』と書かれた小さな看板が木に付いていた。更に進むと再び鞍部状の所に出て、林道は尾根の向こうに伸びていたが、そこに『松岩山』の看板が目に留まった。

 13時43分、林道から別れて松岩山の登山道に入る。しばらくは笹に覆われた不明瞭な踏跡だったが、次第に登山道らしくなってきた。とはいえ、一般向けハイキングコースというにはちょっと無理がある。数年前に、地元で指導標類を付け、薮を刈って整備したようだが、その後の手入れは余りされていないようで、このままだと、またいずれ薮山に戻ってしまいそうだった。登る人も余り多くはないのだろうか?テープを拾いながら歩く、薮山初心者用くらいの山だ。

 尾根を緩く巻き気味に踏跡は付いている。葉が残っているもみじの紅葉が彩り、しばらくはナラの感じの良い疎林を辿ると、平坦な鞍部状の所に出た。ミヤコザサに覆われ、シラカバが混じるここは、時間の余裕があればしばらくぼーっとしていたいような場所だった。細いリョウブの幹に『天狗の踊り場』と書かれた看板が付いていた。天狗がこんな所で踊るのかどうかはともかく、良くある地名だが誰がそんな風に名付けたのだろうか?この小さな木製の看板はあちこちに付いていた。

 踏跡は正面のピーク(横田氏の著書『私が登った群馬300山』にある1390m峰・松岩のピーク)に直接登らず、東側の窪を奥まで進んで、そこから巻き込む様に斜面を登って『東の肩(横田氏の著書にある地名)』に出る。そこは、松岩山手前の1440m峰との鞍部になっていて、ここに『天狗岩』というくだんの木製看板が付いていた。この天狗岩というのが、いわゆる『松岩』なのかは不明だ。天狗岩とやらは帰りに寄ることにして、先に進む。

 1440m峰に登る付近は、落葉松の残り葉がやや枯れ色になっては居たが、金色の黄葉の名残を見せている。尾根には薄れて読みにくくなった『やせ尾根』の看板がある。松岩のピーク(天狗岩?)と繋がった1,315m派生ピーク(岩が目立つ)には、まだ残った葉が多いのかここだけ鮮やかに紅葉している。やせ尾根と言うには広い尾根だが、段々傾斜がきつくなってきた。直ぐ目の前に三角形のシルエットが立ちはだかる。これが松岩山らしい。登り始めの林道辺りから見えた松岩山らしい山体は、松岩のピークと1,440m峰だった様だ。松岩山はここまで登ってこないと手前のこれらの山に隠れて見えない。

 1,440m峰からもう一つ松岩山の手前に小さなコブがある。このコブとの鞍部に、昭和40年の日付が書かれた農林省(当時)による歩道新設標識が立っていた。これには『岩松山』と書かれているから、或いは松岩山は岩松山とも言うのかも知れない。低い笹に隠れ気味な道の急な登りに汗ばんで、上り詰めた先は笹に覆われ樹木が伐採された松岩山の山頂だった。

 松岩山山頂に14時32分着。開墾地から1時間20分程で登ってしまった。大した上りもなくて、午後の腹ごなしには丁度良い程度の山だった。横田氏の著書が書かれた以後、山頂の木々を伐採したのか、南側を除いて他の3方向はほぼ展望がある。残念ながら、今日のこの天気では景色は良く見えないが…。登り始めに開墾地から見えていた白根山も、すっかり雲が被り、その下の草津温泉の温泉街はどうにか見える。高間山と思われる山が南東に低く、その右手に四阿山が頭だけ雲の上にかろうじて出しているのが見えた。八間山等北の県境方面は低く垂れ込めた雲に隠れていた。見下ろす六合村は集落も見えないが、落葉松などの黄葉で彩られている低い山並みは美しかった。
 下の方でチェーンソウの音が聞こえる。笹に覆われた山頂の真ん中、切られたシラカバの木に『松岩山1512m』の大きめな達筆名板?が付いていた。その上にも、県内あちこちの薮山でよく見かける小さなプラ名板と小さな金属製名板が付いている。足元には笹に埋もれた二等三角点があった。

 南の方からどんどん雲が押し寄せてくる。松岩山の向こう(暮坂峠方面)から霧が波のようにこちらに向かってくる。そちら側には高い落葉松が一列並んで目隠しをしていた。余り展望も良くないし、午後も日が短いから、一通り写真を撮ると14時51分に山頂を後にした。

 帰りは松岩(天狗岩)のピークに寄っていく。松岩に15時13分に到着。ここは西に向かって岩が突き出したピークで、足元には板状の岩が積み重なって広く展望があった。枯れた松の木が一本あるから、これを目印に松岩と呼んだものか?ここでも、雲が低くなってきて眺めは良くなかった。下ってきた松岩山は、霧に隠れ気味になっていた。15時29分に松岩を下る。

 来た道を、残りの紅葉と静かで感じの良い笹尾根を楽しんで、坦々と下った。やや薄暗くなってきて、16時15分に伐採地に戻った。往復正味3時間の軽い腹ごなしだった。お昼を沢山食べたので、まだそれでもお腹が空かなかったのだが…。

 温泉医療センターに戻り、誰も居ない貸し切り状態の温泉に浸かる。何だか、命の洗濯のような今年の人間ドックだった。どういう訳か、今回一泊二日ドックだったのはぼくだけで、一日に4名程ドックを受け入れるこの施設だが、他の3名はみな日帰りドックだったので、おかげで上げ膳据え膳、お医者さんも看護師さんも付ききり、温泉も貸し切りの『お殿様状態』だったのだ。ははは…イイ気分です。

 翌日もお昼頃まで検査があって、放免。残念ながら霧雨のお天気で、観光客も疎らな紅葉まっさかりの六合村を後に家路についた。道の駅「六合」で、ここの特産である花豆(花インゲン)の新豆をおみやげに買いました。

 暮坂峠にある若山牧水の歌碑と牧水のブロンズ像を霧雨に見上げる。日本的な心を大事にした牧水の生き様は共感できるなあ。このブロンズ像の装束もいいなあ…。

 沢渡温泉付近や、下りきった中之条辺りも、雑木山と田畑の風景が日本的な感性を刺激するのだった。秋の光景は特に日本的?という風情を醸すのは、四季のある日本の季節の中でも、特に秋の彩りが一層様々な色合いと、湿潤した水蒸気を感じる日本画的な光景として映るからだろうか?色合いが単一で乾燥した欧米の秋の、さわやかだけど、ややドライでクールな印象とは対極にあるものが日本を感じるのだろうと思う。日本の秋は日本画の色合い、欧米はやはり、油絵的なんだろうな。そんな取り留めもない事を思いながら、帰路についたのだった。

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6 コメント

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松岩山の名板はGさんのでは (ノラ)
2008-11-16 11:17:59
あさぎまだらさん こんにちは。松岩山はいい雰囲気のようですね。私も行きたいな。でも遠いな。素晴らしい人間ドックですね。こういうの受けたいなと思うのは私だけじゃないはず。ところで,松岩山の山頂名板はたぶん重鎮さんたちはGさん名板と言われてますよ。
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今週末もお天気悪いですね (あさぎまだら)
2008-11-16 13:16:32
ノラさんこんにちは。
今週末もお天気悪くて、2週続けて山に行けないのでしょうか?
人間ドックですが、ぼくも今年初めてこの施設にして最高でしたね。でも、実はここは競争率が高くてなかなか希望しても受けられないんですよ。一応、来年もここの希望を出しましたが…。
Gさん名板ですか。良く見ますね、これ。一部では達筆と混同されているようです。大きめなのと、新しいものが多いので、最近付けて回っているのでしょうか?
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昔から結構群馬の山にはあるんです (ノラ)
2008-11-16 17:54:48

あさぎまだらさん こんばんは。今日はあいにくの雨降りだったですね。Gさん名板は私が群馬の山に行っていたころずいぶん見ました。そのころ撮っていた写真をまとめて紹介してますから見てください。古くからの現在進行形の名板なんだと思います。達筆と同じでマイナーな山で見ました。でも今や西上州の大ナゲシってメジャーな山かもしれませんが。
下記のリンクですhttp://73422uzawa.at.webry.info/200612/article_7.html
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そうなんですか (あさぎまだら)
2008-11-16 20:36:29
ノラさんありがとうございます。
大ナゲシ・高反山・山急山・大萱山・丸岩岳・勝雲山
黒檜山(これは黒桧岳のまちがいでしょうね…黒檜山は赤城の一峰ですから)みな登っていますが、大ナゲシは、現在は無いと思います。高反山と山急山ではぼくも見ました。大萱山と丸岩岳のも、今は無いと思います。
勝雲山は記憶ないです?黒檜山(黒桧岳)も無いと思います(去年はありませんでした)。

どうも山名板を設置する人がいるように、撤去する人も居るようですね。人それぞれ考え方は違いますが、あまり競って幾つも付けられている山は、ぼくも止めた方がいいなあと思う事もありますね。

同じようにテープ類も、今は付けすぎているように思います。うるさいほど付いていると、ちょっと閉口します。先日登った高薙山も、随分沢山付いていました。
ぼくは、薮山に行くときはテープ類は付けても帰りになるべく回収する主義です。
本来ちゃんとした所に一つあればイイと思います。
若木にきつく巻かれたテープ等は、木の生長を阻害して、木がかわいそうです。そのために枯れているものを見ることも多いし。付けすぎるのはエゴだと思いますね。世の中には過剰にお節介な人もいるものです。道のない山には、ルートファインディングの楽しみもあります。難しい面もありますが、基本は、『山は、登らせてもらっている』という、謙虚な態度が必要なんじゃないでしょうか?

山名板もテープ類も、そういう謙虚さを逸脱しないという気持が大切だと思いますが、どうでしょうか?

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テープは私も殆どつけませんつけても2つぐらい (ノラ)
2008-11-16 21:14:36
確かにテープがいっぱいついていると興ざめの感はあります。でも少しなら安心っていうことも。回収できればいいのですが、藪山のテープは同じところを戻れるか難しいですね。よって私もほとんどつけません。黒滝股山は2つつけてしまいました。山名板は山頂に一つはあってもいいな。登って山名板ないとなんか寂しいです。南会津は殆どついてないですね。道のある山にしかないです。
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程度問題ですけどね (あさぎまだら)
2008-11-16 22:39:28
そうですね。ぼくも個人的には山部さんの山名板とか味があって好きです。確かに何もないとさびしいし、有りすぎると…何だか競っているようで浅ましい感じもします。否定はしませんが、2つもあれば、それ以上は余計だと思いますよね。

テープを付けるのは、当然自分の為でしょう。できれば全て回収したいけど、できないときもありますね。
先日の丸山には3つ残してきました。2つは故意に、目印として最小限必要かな?という、多分に親切心から、激薮を避ける所で有効かな?と思った所と、三角点の真上の2カ所…1つは回収できなかった(どこだか判らなくなった)のです。

全く何のマーキングもない薮山は不安もあります。
見つけた時は、それが本当に正しいルートかどうかは別として、何となく人が付けた、そこを歩いた人がいたんだという安心感はありますね。

だから、全て程度問題ということでしょうね。
丸山も、そのうちだれか山名板を付ける人がいるかなあ…。
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