今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・朝日連峰 その1(竜門山、寒江山)

2012年08月02日 | 山登りの記録 2012
平成24年7月26日(金)
清太岩山1,464.6m、ユーフン山1,565m、竜門山1,688m、寒江山1,695.4m

 朝日連峰には今まで行ったことがない。随分遠いから、登りたいと思いながら具体的には登る計画も今まで立てたことはなかった。そればかりか、福島以外の東北のめぼしい山には若い頃登ったきりだ。今年は東北の山へも久々に遠征しようと思い、まずは朝日連峰のエアリアを購入して、具体的にどこに登ろうかと考え始めた。夏山の第一弾はそんなことから、まずは朝日連峰として、26日に休暇をとって3連休で出かけることにした。

 今回の計画は、日暮沢口から竜門山・大朝日岳・小朝日岳を経由して、また日暮沢に下る2日行程とした。狐穴小屋まで足を延ばすか、あるいは竜門山から寒江山をピストンするかは流動的だが、寒江山と竜門山の間は花が多いということなので、寒江山までは行ってみたいと思っていた。25日に仕事を終えたその足で、そのまま東北へ向かった。東北道から山形道に入り、西川町にある月山ICが終点で、そのまま登山口の大井沢を経由して、日暮沢林道を進む。この林道が工事中で途中までしか車で入れないという情報をネットで得ていたが、そのとおり、日暮沢小屋2km手前のダムから先は工事中で、車両通行止になっていた。夜の11時、車止め手前の退避帯に車を停めて仮眠する。標高が低いこともあり、車の中は暑くて寝苦しい。窓を開ければ虫が入ってくるので、ホンの少しだけ窓を開けて眠った。
 
 26日(金)晴れ
 目が覚めると、4時のアラームが間もなく鳴った。少し前と違って、4時ではまだ薄暗い。起き上がってパンを食べていると、林道を奥へ進んでいく車が2台程通過していった。4時半に車を後に歩き出すと、車止めの所で軽トラックが停まっていて、おじさんが「乗りますか?」と声を掛けてくる。この方は日暮沢小屋の管理人さんということ、これから小屋に水を汲みにいくのだという。お言葉に甘え、荷台に乗せてもらって林道を進むが、1kmも行かないうちに林道崩壊工事現場になり、道の真ん中をパワーショベルが塞いでいて通れない。結局ここから歩くことになる。途中でぼくと同じくトラックに乗せてもらった赤毛のジモティーらしいおばさん単独行の方と、管理人さんの3人で日暮沢小屋まで歩く。ジモティーおばさんは足が速くて引き離される。20分程で森の中に建つ3階建ての日暮沢小屋に着いた。日暮沢小屋は1階部分がコンクリート製で頑丈そうな新しい小屋だ。2階と3階にも外ドアが付いているから、あるいは2階部分まで雪に埋まることがあるのだろうか?雪が4m積もれば、3階から出入りしなければならないのだろう。豪雪地らしい造りだ。

 ジモティーおばさんは狐穴小屋までと言って、さっさと登山口を進んでいった(でも、この方は結局その晩、同じ竜門小屋に泊まっていました)。小屋の前の流水を汲んで、荷をまとめ直し、5時丁度に日暮沢小屋を後にする。小屋の管理人さんが「お気をつけて」と見送ってくれた。落葉松と雑木が高い平坦な道を少し行くと、左に尾根に取り付く。朝からエゾハルゼミの蝉時雨が森にこだまする。5時を少し回ったばかりなのに、もう既に空気はむっとする感じだ。小屋の所に標高620mと書いてあったから、平地とそう変わらない所からの登り出しだ。

 尾根に取り付くと、いきなり木の根が露出した一直線の鉄砲上りになる。多少の緩みもあるが、ほぼ急角度の谷川の西黒尾根みたいな登りが延々と続く。直ぐに汗でびっしょり。日が差してくると、背中をあぶられる様になり、朝なのに信じられないくらい暑い。蝉時雨の中を、もう汗でびっしょりになりながら、登りに登る。ブナの巨木が出てくると少し傾斜が緩んで一段落し、樹間から残雪が見える大朝日岳が望まれる様になる。すっきりと晴れて夏空が広がっている。

 再び傾斜がきつくなって、また延々と鉄砲上り…暑いなあ。頭から水を浴びたようになって、6時45分にようやく『ゴロビツの水場』に着いた。小屋で汲んだ水に溶いたスポーツドリンクを一気に500ml飲む、暑さに弱いぼくは、もう既にグロッキー。水場のちょろちょろの流れで、顔を洗ってタオルを濡らし首に巻くと、少しヒートダウン。ウグイスのさえずりが気分を紛らわす。ゴロビツから先も、まだきつい登りが続くが、尾根上部まで出ると樹林が低くなり、遠くに月山や周囲の山並が見えてくるようになる。トンボが沢山飛び交っているので、刺す虫には心配無さそうだ。上にようやく清太岩山が見えてくる。

 周囲の景観が開けて、大朝日岳から竜門山の稜線が一望できるようになった。遭難碑を過ぎ、やっと8時4分に清太岩山の頂上に着いた。小屋から3時間、ほぼコースタイムどおりだが、この暑さの中喘いだにしては早かったかな?とはいえ、ここから先のユーフン山、竜門山への道が手に取るように見えるが、先行したジモティーおばさんはどこにも姿が無かった。清太岩山の頂上には、ひっくり返りそうに傾いた三等三角点があるだけで、他には何も無い。もうこの山頂からは大パノラマが広がっている。登ってきた方角には遠く月山が浮かび、その向こうに薄っすらと鳥海山が見える。南は良く晴れているが、北や東はやや霞んでいる。行く手の朝日連峰主稜線は、大朝日から竜門山までは雲も無く見えるが、その先の寒江山や以東岳には雲の蓋が載っていた。竜門山の下の鞍部には避難小屋がぽつんと見えている。

 主稜線の三方境から、遠くにピラミダルなピークを見せる障子ヶ岳に続く稜線に食い込む沢には、長大な雪渓が残っている。さらに、ずっと標高の低い下流の沢にも雪渓が見えるから、冬の膨大な積雪量が想像される。この時期に1,000m以下の所に雪が残っているのだった。蝉時雨は山の下の方で微かに聞こえるが、もうこの辺りでは鳥や蝉の声も聞こえなくなって、涼やかな風の吹く草付きのプロムナードとなった。足元からカエルがぴょこぴょこ飛び出してくる。ここから竜門山にかけてはヒキガエルが多かった。のろのろと逃げようとするが、うっかり足で踏まないように注意。

 8時21分に清太岩山から、行く手にこんもりと丸く盛り上がっているユーフン山へ向かう。思いの外、この間のアップダウンは大きい。一旦樹林まで下って、再び草付きまで上り返す。振り返ると、清太岩山南面の鞍部に下る道の両脇に、目の様に雪が窪みに残っていた。やや風化した丸い花崗岩が稜線に出てくる、その岩の周辺には真っ白く星をばら撒いた様なヤマハハコの株状の群落や、やや緑がかった白いノリウツギの花、そしてやけに丈が低く矮化した様な青紫のタカネマツムシソウが、ハイマツや笹の混じる低い植生の中に見られた。登り上げると8時56分にユーフン山の頂上に着いた。

 周囲は遮るものも無い素晴らしい眺め、しかし暑さで疲れた身体は眠気を催してくる。ハイマツにもたれ、じりじりと暑い日差しを受けながら仰向けに寝転んで少しうとうとした。起き上がると身体がすっきりとして、また登る元気が湧いてくる。ユーフン山からは、もう直ぐ上に主稜線に繋がる竜門山が近い。歩き出すと、花崗岩のモニュメントのような面白い形の岩が突き立っているところから一旦少し下って、残雪斑が見える竜門山の最後の登りは結構きつかった。振り返ると登ってきた尾根がうねうねと下に延び、遠くに高く月山が見えた。

 身を没する高さのナナカマドや笹の中の切り開きを少しあえぐと、いきなり目の前に標柱が現れた。南に大朝日岳方面、北には以東岳方面を指示している。やや高い南に少し登っていくとハイマツの高みに出るが、標識も何も無い、その先はもう下りになっている。竜門山山頂は、特にそれを示すものも無く、縦走路の途中の様な所で、身の丈のハイマツや笹に囲まれ眺めも何も無いところだった。休むような山頂では無いから、標柱まで戻り、そのまま避難小屋に下る。ハクサンシャジンやヨツバシオガマ、ミヤマリンドウ、ハクサンイチゲなどが沢山咲いている下りから、直ぐ下に避難小屋が見下ろせる。小屋のベンチには人が2人居るのが見えた。

 10時32分に竜門山避難小屋に着く。年配のご夫婦が小屋のベンチでお食事中だったが、小屋の中には誰も居なかった。小屋の中に先行したおばさんのザックがぽつんと置いてあったが、姿は見えない。居るはずの管理人も、どこかに出ているのか見えなかった。暑さでかなり疲れたから、今日は狐穴小屋まで足を延ばさずに、ここに泊まることにする。その代わり空身で寒江山まで往復してくることにした。お腹が空いていたので、ハンバーグが挟んであるボリュームのあるパンを食べ、お菓子を少し摘んでから、カメラや行動食と水だけサブザックに入れて小屋を出た。先ほどのご夫婦は、寒江山方面への稜線を先に進んでいくのが見えた。

 小屋の周囲の残雪はほぼ融けている。小屋前の縦走路には、地中に差し込まれたパイプから勢いよく水が流れ出ているので、ここで水を補給する。後で小屋番に聞いたところ、小屋の南側の沢の源流からパイプを繋げてあるのだという。水の心配の無い良い小屋だ。水を受けるポリバケツ中には缶ビールが数本入っていて、「一本800円でお譲りします・管理人」と書いてあった。小屋の前に看板があって、朝日連峰は全域で幕営が禁止されている特別保護地域だと書かれている。植生保護なのか、ロープに囲まれた四角いエリアがあった?

 高低差の少ないお散歩コースのような道を歩いていくと、切り開らかれた笹に混じってヒメサユリが咲いていた。寒江山に向かう道は花のプロムナードだ。種類を書ききれない程色々な花が咲いていた。ミソガワソウ、イブキトラノオ、ニッコウキスゲ、ミヤマリンドウ、ハクサンイチゲ、ノリウツギ、ハクサンフウロ等々、中でもハクサンイチゲとヒナウスユキソウは大群落だった。ヒナウスユキソウは残念ながら、少し花期を過ぎていて、純白の包葉は退色し中央の黄色い頭状花がやや褐色になっていたが、目を凝らすと花崗岩の礫状の斜面は夥しい群落で、最盛期はさぞ見ごたえがあるだろうと感じた。草地に咲くナンブタカネアザミには、ヒョウモンチョウやクジャクチョウがやってくる。チョウも沢山いるようだった。

 行く手の寒江山は3つのピークを連ねている。緩い上下から南寒江山へはかなりの登りになる。振り返ると、竜門山方面に緩く延びる稜線に続いて、西朝日・中岳・大朝日岳が逆光にややシルエットになりダイナミックな景観を見せている。その方面には雲が多く、西から強く吹く風が少し寒く感じる。この辺りの山の形や雰囲気が、谷川連峰の平標山や仙ノ倉山周辺に似ていた。竜門山附近の西斜面には点々とニッコウキスゲの黄色や白い花(多分ハクサンイチゲ)がパッチ状になっている。

 南寒江山に登りつくと、先行していた年配ご夫婦が休んでいた。角が丸くなった標石があるが他には何も無い。一旦緩く下って、砂礫の道を登り11時49分に寒江山に着いた。山頂には文字がほぼ消えている木製の山名標柱が立ち、土台がむき出しになった三等三角点があった。ここからは、西に見える相模山の姿形が良い。以東岳方面は相変わらず雲が多くて良く見えない。直ぐそこの北寒江山にはべったりと残雪が目立つ。寒江山頂で少し休んで引き返す。花や景色を楽しみながらゆっくりと戻った。

 戻る途中で一人の人とすれ違ったが、それにしても人が少なくて静かだ。1時23分に小屋に戻ってくる。小屋の前で景色を眺めていたら、白髪ひげの管理人が間もなく戻ってきた。金玉水まで行ってきたと言った。管理人さんによれば、これからこちらに向かってくる人が高校生の団体を含めて20人くらいいるので、今日の小屋は賑やかだという。ええっ、ホント…やっぱり、オンシーズンの週末ですからね。今のところ今晩泊まるというのは、ぼくの他に一人と、例のおばさんのザックは相変わらず上がりかまちに置いてある(どこに行ってるんでしょう?)。この避難小屋は、清掃管理料1,500円を宿泊費として払う。

 小屋に入り、2階に場所を確保して少しお昼寝をした。小屋は1階に20人くらい2階は30人は収容できるという。朝日連峰は全域で幕営禁止なので、泊まる人は全てこういった避難小屋を利用するしか無い。シュラフに半身を入れて4時ごろまでうとうとしていたが、そのうちに1階は5人くらい人が増えていた。早めに夕飯(カレーと魚の缶詰)を作って食べた。高校生の団体15人程と、中高年の山の仲間らしい4人が2階の宿泊客になったが、至ってみなさんマナーが良くて静かだった。1階にも最終的には10人が泊まるようだったので、全部でこの日は30人ほどの宿泊客があった。夕飯を食べて下に下りていったら、例のおばさんが居た(結局この小屋に泊まるようだ)。

 食事をしてしまうと何もすることが無い。相変わらず良く晴れて、周囲の山々はすっきりと見えていたが、風は強くて少し寒い感じだ。夕焼けに染まる寒江山方面の景色を眺め、早めにシュラフに潜ってしまった。宿泊の人達もみな早めに寝てしまうようだった。その夜は一晩中風が強くて、ごうごうと音がしていた。

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2 コメント

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朝日の景色は涼しげでやはりいいですね (ノラ)
2012-08-03 21:23:27
あさぎまだらさん こんばんは。朝日の景色は日本海側の高山の印象で涼しげでいいです。月山とも似ているし,飯豊のようでもあるし。花も寒江山周辺は多いのですね。私はこの山は行ってないので一度行ってもいいなとストックに入れました。今まで天気に恵まれたことがないので。羨ましいです。日暮沢小屋から登るコースは鉄砲登りで大変そうですねご苦労様でした。暑さも相当なようでコースは考えないと行けないですが,このコースしかないのかな。
私は今週は釜山に行っていてやはり暑かったです。クマゼミがうるさく波状的に鳴き暑苦しい感じです。なので朝日の写真は涼しげでいいです。小屋の傍の水場なんて想像するだけでひやっとします。
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ミニサイズのアルプス (あさぎまだら)
2012-08-03 23:05:05
ノラさんこんばんは。
おっしゃるとおり、景観は高山ですが、飯豊と同じで多雪が作り出した偽高山地形です。雰囲気はミニサイズのアルプスですが、基本的には標高も低いのでやはり夏向きじゃないですね。秋が良いのかなあと思います。
でも、花を楽しみたければ夏に登るしかないです。日暮沢コースはこの連峰の真ん中、竜門山に登り上げるので効率的に周回できる唯一のコースですね。できれば、大朝日から以東岳まで縦走したかったです。車でアプローチでは難しいですが…。
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