Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

同じ田舎を馬鹿にする

2006-03-23 18:38:07 | ひとから学ぶ
 わたしの家から南アルプスを望むと、手前に伊那山脈の山なみがあって、その山なみの麓の方の山間部に集落が点在しているのが見える。伊那谷は「谷」というだけあって天竜川を中心にV字型にはなっているが、右岸である西側は比較的緩やかで左岸である東側は急峻という感じで、形のよいV字型ではない。もちろん右岸は耕地が広がり、人口はそちらに集中している。わたしの家から見える左岸に点在する集落は、生田(いくた)というところで、そこには小学校が山の上にある。

 息子の同級生には、数は少ないがその小学校の卒業生がいる。西側で育った者は、なかなか東側の山間部へ足を運ぶことはない。そんなこともあって、以前から母は息子に「生田の方の友だちがいるんだから、友だちの住んでいる地域を見とくといいね」と言っていた。先日その生田をくまなくではないが、一通り息子と回ってみた。わたしは仕事で何度も行っているし、最も奥の集落では調査でくまなく歩いたこともある。何度も訪れていても、久しぶりに行くと脇道に入るとどこを走っているかわからなくなる。尾根が入り組んでいてあちこちに集落があるから、同じような道をぐるぐる回っているようになる。伊那谷でこんな感じの地形は、この生田と泰阜村ぐらいである。小学校に行ってみようということで、看板に沿って登っていくのだが、以外にも山の上のようなところにある。同じ生田でも天竜川端の比較的人口が集中している地域は、川を越えて違う学校へ通う。この山の上の学校に通う子どもは、まさしく山の中の子どもたちだけである。そんな山の中だから生徒も少ない。この学校まで行ったことはわたしもなかったが、中央アルプスが見えて、なかなか眺めがよい。学校から東側の方へ回ってさらに奥の集落へ向かったが、山が美しく見えるところがけっこう多い。

 ところで学校に登る手前に「アルプスの郷 梅松苑」という施設がある。5年ほど前にオープンした交流施設で、当初は食堂があったが、今は営業されていない。造っている時から、この山の中にこういう施設を作っても人は来ないんではないかと心配したが、その心配のとおりとなった。たまたま今日の信濃毎日新聞の地域版に、「梅松苑 指定管理者導入を否決」という記事が見えたが、町議会が指定管理者制度導入の条例案を否決したものである。きっと地域でもどう生かしていくかは悩みの種だとは思う。思うに施設の場所は県道の脇にあるが、谷の中にあるため、学校のある場所のように眺めはよくない。訪れた人たちに第一印象で気持ちよさを与えるには、眺めは良いにこしたことはない。そうした立地にない場所で、どうやって人に訪れてもらうかとなると、かなりの魅力が必要だろう。オープン当初の姿も知っているが、久しぶりに行って「だいぶ荒れているなー」というのが印象だった。ひとつの行政区域にあっても、人口の少ない地域に目を向ける人は少ない。きっと「あんな無駄なもの造って・・・」と陰口を言う人も多いのだろうが、やはり生田の人たちがどう生かしていくかが焦点になる。何かいい利用法があると思うのだが、残念でならない。

 以前町長選があった際、ある議員が候補を連れて我が家にもやってきた。その際、議員は「対抗馬は川向こうだから・・・」といって少し馬鹿にしたように語った。自分たちもきっと生田とは違う川向こうから「川向こうだから」なんて言われているのだろうと思うが、田舎のくせにさらに田舎を馬鹿にしているような地域に明日はない。
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