Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

越村通学

2006-03-13 08:08:57 | ひとから学ぶ
 一昨日の信濃毎日新聞南信地方版に、長距離の通学は大変だから越村通学をさせてほしいという陳情に対して、村会が不採択したという記事があった。場所は天龍村向方と大河内というところで、かつては神原村といわれていた地域である。それらの地域に隣接して小さな集落もあるが、子どもはいないくらい人口減となっている。天龍村の中心部である平岡は、村の北端にある。旧南信濃村や阿南町に隣接していて、そこから南へ向かって天竜川沿いに村は展開している。南北方向には天竜川に沿ってJR飯田線が走っていて、駅もあって通学は可能だ。しかし、西南に位置する両地域は、車による通学しかありえない。もちろん村でスクールバスを出しているのだから、金銭的負担はないが、遠距離であるということ、そして村へ通じる道が狭いということが、時間がかかったりして体力的、精神負担となる。すぐ隣接したところに阿南町新野があり、そこには小学校も中学校もある。しかし、生徒の減少という状況はどこも同じで、阿南町では町にふたつある中学の統合問題がのぼっている。もちろん新野にある第二中学は、町の中心部にある中学への統合対象となる。そんなこともあって、新野の人々にとっては、隣接する町外の子どもたちが通ってくれればありがたい話である。

 妻の父は、天竜中学にいたことがあった。この神原の子どもたちはもちろん、鉄道沿いの南端の集落の子どもたちも、当時は村の中心部で寮に入っていたという。同じ村の内だというのに寮生活なのである。今では車があたりまえのように利用されるようになって、寮生活をするなどということはないが、それほど地形環境は不便な通学形態を生んでいたのである。当然のごとく、高校に進学すると飯田の町に入寮したわけである。阿南町にある阿南高校は、まさしく地域にあって、地域の子どもたちが通いやすいために設立されたわけである。有名人の少ない長野県ではあるが、数少ない有名人のひとり、峰竜太はこの高校の出身である。

 さて、村会が不採択というのもわかる。村全体でも子どもの数が少ない。その学校ですら複式学級になりかねない状態であるという。村の状況は少子化というよりも、人がいないということが最も課題となっている。人口千人代というところまできている。単に一村だけでは対応できない状況といえるだろう。しかし、そんな小さな村に人が手をさしのべてくれるわけではない。国全体の流れである以上どうにもならない。この地域の立地をみたとき、阿南町の中心部である大下条とは別にひとつの空間を作っている新野という地域。その新野と現在の売木村は、かつて旦開(あさげ)村としてひとつの行政区域であったことがある。冒頭の両地区もそうだが、新野に比較的近いのが売木村である。この売木村も人口7百人弱という小さな村である。新野を中心とすれば、売木と神原といった地域はそれほど遠距離ではない。だからといってそれらがまとまればいいじゃないか、などということは言わないが、行政区域を越えたなんらかのつながりを、将来のために考えなくては地域はますます減退していくことが確実である。県という枠もそうだが、元来枠でくくられた周縁地域がこうしたことで悩んできたことを理解して欲しいのはもちろんだが、結局人が少ないから声はとどかないし、そんなところにお金がかけられないといわれればどうにもならない。記事にある「村には住み続けたい。しかしこのままでは、引越しを考えなければならない・・・」という子どもを持つ親の言葉から、現実の話として、こうした地域に若い人が住むということは、もう不可能なのだろうか。
コメント


**************************** お読みいただきありがとうございました。 *****