嶽南亭主人 ディベート心得帳

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【解釈に係る雑感1-6】 質問3と4の検討:否定側の主張を確認する

2009-06-17 20:43:17 | ディベート
●問い(3)~中略により文意が変化したとする主張について

上記、問い(1)および問い(2)の文章をあわせて見て、以下の主張がなされた。

肯定側は「中略しても意味が変わらない」などと言っていますが、この中略は、行政改革なしに、あたかも立法の改革だけで、理想的な政府ができると見せかけ、否定側の反論機会を奪う、極めて悪質な歪曲であり・・・(後略!)

質問3: この主張の背後には、中略の有無によって文意が変化するという認識が主張者にあることが伺える。このとき、問い(1)から問い(2)にかけて、文意におけるどの部分が、どのように変化したと考えられるか。その理由は何か。特に、文中の「政府の改革」という語句について、どのような意味上の変化が生じたと考えられるか。その理由は何か。

質問4: 質問3に対して、問い(1)から問い(2)にかけて文意は概ね変化していないと主張することは可能か。可能である場合、どのような説明・理由付けが考えられるか。

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中略の有無によって、文意が変わるとすれば、どのようにそれが生ずるのか。

否定側・肯定側の議論の検証の予備的作業として、否定側の主張に対する主人の理解を整理しておこう。

特に文意の改変が問題となっているのは、資料の3)の文における「【政府】の改革」という語句についてである。この語句の解釈として、「狭義=行政府」と「広義=統治機構」の二通りがあることは、再三述べてきた。以下の検討では、この語句に焦点をあてて、検討を進めてみる。

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【検討: 否定側の主張の推察】

○否定側は、立論において、「中略部分で『行政改革をはじめとする…』という文言があります。これを意図的に飛ばすことは、著者の意図を歪曲しています。肯定側は『中略しても意味が変わらない』などと言っていますが、この中略は、行政改革なしに、あたかも立法の改革だけで、理想的な政府ができると見せかけ、否定側の反論機会を奪う、極めて悪質な歪曲であり」と、論じている。

○この主張、字面上のわかりやすさとは異なり、上記の主張を資料の記述と照らし合わせてみてみると、「あたかも立法の改革だけで、理想的な政府ができると見せかけ云々」という部分に関し、どのような理由に基づいて主張が展開されているのか、個人的には当惑を禁じえなかった(※注を参照)、それでもなんとか意味を汲み取ろうとすれば、おそらく、否定側は、概ね、下記のようなことを論じたいのではないか、と推察された。

 ※注:この点、もしも否定側が「問題の中略は、【政府】の改革を【立法府】の改革(=「統治機構」の改革では【ない】。為念)へと、意味を変化させてしまう」ということを”根拠”つきで説明していたならば、主人の当惑は消滅していたであろう。しかし、まさしくその「理由・根拠」を「説明」してもらわないと、「政府=行政府or統治機構」というデフォールトの解釈を有している人にとっては、「立法府の改革【だけ】」という部分に強いひっかかりが生じ、論理の飛躍が生じているように見えてしまう、ということに今、気がついた。

説明をもとにもどそう・・・・

(主人が推察した否定側の主張)

●そもそも、2)の中略がない場合、「行政改革をはじめとする・・・」という文言が示唆するように、3)の文章の「政府の改革」は「行政府の改革」と解釈するのが相当である。

●ところが、2)の中略を行なってしまうと、3)の「政府の改革」は、(一院制を含む)「統治機構の改革」を指す(=広義の解釈が成立する状態)かのように見えてしまう、<あるいは>、「統治機構の改革」を指すかもしれないし、「行政府の改革」を指すかもしれない(狭義もしくは広義、いずれかの解釈も成立しうる状態)かのように見えてしまう。

●すなわち、中略部分である2)「行政改革をはじめとする・・・」を読み飛ばしてしまうことにおって、「政府の改革」という語句の意味が変わる。

●この意味上の変化は、肯定側に有利になるような文意の変化である。

●そのような意味の変化を、中略によって生ぜしめる行為は、資料の歪曲に他ならない。

・・・・といったところであろうと、思われた。

上記を、より簡潔に表記すれば、

イ)中略なし → 3)の「政府の改革」は、「行政府の改革」を意味する。

ロ)中略あり → 「行政改革」というキーワードが隠されることで、3)の政府の改革は、「(一院制改革を含む)統治機構の改革」もしくは「(一院制機改革を含む)統治機構の改革、あるいは、行政府の改革」を意味するかのように変化する。

ハ)よって、中略を付すことにより、本来、含意しえない要素である「立法府の改革=一院制導入改革」を、資料上読み取る余地が生じてしまう。

・・・ということを否定側は主張したいのだろうと思われた。   

以下、項をあらためて検討を続ける。

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