澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

「日台関係史1945-2008年」を読む

2009年06月05日 04時09分20秒 | 台湾
「日台関係史 1945ー2008」(川島真ほか 東大出版会 2009年)を読む。

 (「日台関係史 1945-2008」 川島真・清水麗・松田康博・楊永明著 東大出版会 2009年)

東大出版会のこの種の本は、さすがに質が高い。「ヨーロッパの政治」(篠原一)「日本の政治」(京極純一)など、かなり前になるが愛読した本も多い。これらの本の多くは、講義録をベースにしたもので、やはり何はともあれ最高学府だなと思う。

奇妙なことだが、これまで台湾の政治史を扱った本格的な通史は存在しなかった。「ひとつの中国」という原則、あるいは「幻想」と呼ぶべきものが、学界までもを包み込み、台湾は中国の一部としてしか扱われなかったのである。

だが、この「日台関係史」は違う。その構成をみると…
序 章 戦後日華・日台関係を概観する(川島真・松田康博)
第1章 日華・日台二重関係の形成ー1945~49年(川島真)
第2章 日華関係正常化の進行ー1950~57年(川島真)
第3章 日華関係再構築への模索とその帰結ー1958~71年(清水麗)
第4章 日華断交と72年体制の形成ー1972~78年(清水麗)
第5章 日台関係の安定化と変化への胎動ー1975~87年(松田康博)
第6章 台湾の民主化と新たな日台関係の模索ー1988~94年(松田康博)
第7章 安全保障の二重の三角関係ー1995~99年(楊永明)
第8章 東アジアの構造変動と日台関係の再編ー2000~06年(楊永明)
終 章 継続と変容の中の日台関係(清水麗)

この目次を見ただけでも、本書の意図は十分に伝わってくる。
東京大学には、長い間、台湾研究の講座が存在しなかった。教養学部国際関係論専攻には、東アジア国際関係のコースがあるが、台湾は中国の一部としてしか採り上げられなかった。法学部でも、アジア政治外交史の一環として、講義されるだけだった。これらの卒業生は、国家公務員上級職や外務省上級職を目指す人も多いのだが、アジア関係を専門とすると、欧米コースよりも一段低く見られるという風評も強く、人気は今ひとつだったと聞く。

東大の台湾研究は、若林教授によって開拓され、本書の川島真準教授が続く形で、いまや台湾研究の総本山という印象だ。
大昔になるが、われわれの時代の「中国研究」は、実にひどいものだった。文化大革命に関して、台湾(当時は中国国民党が独裁を続ける「中華民国」だった)の資料を使った学者を、その仲間が「反中国」呼ばわりするなど、中国研究は「真理の追究」の場などではなく、「政治闘争」「日中友好運動」の道具となった印象が強い。特にお粗末だったのが、安藤彦太郎、新島淳良といった「文革派」教授がいた早稲田大学。何度か無断で授業を聴いたことがあるが、あまりにひどい内容だったのには驚いた…。
これに対し、慶應大学には、石川忠雄という重鎮がいて、まともな研究をしていたようだ。山田辰雄という「中国国民党史」の先生もいたような気がする。東大は、衛藤瀋吉という厳しい人がいたので、ひどくはなかったようだが…。
だが、いちばんまともだったのは、中嶋嶺雄(東京外大)ではなかったか…・。

そういう時代、台湾は反動派・蒋介石の巣窟呼ばわりされていた。善と悪、白と黒という議論は、粗雑な頭の学生にもわかりやすいので、毛沢東vs.蒋介石、共産党vs.国民党、中国vs.台湾というような単純な図式で中国問題を捉えていたのだ。

こんな昔話をしても、多分、いまの学生には分からないだろう…。この「日台関係史」を手に取ると、ようやく折り目正しい「通史」「正史」を読めるという喜びを感じるのだが、それも分からないだろうな…。

台湾がいまや中国に飲み込まれる寸前というこの時期に本書が出るのも、ちょっと遅きに失したという印象があるが、一読に値する本であることは間違いない。







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