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米沢の容貌

2017年03月14日 15時29分39秒 | 創作欄
米沢の容貌はハンフリー・ボガートに似ていた。
妻の信恵が愛称のボギーと呼ぶと、米沢は満更でもない笑みを浮かべていた。
トレンチコートの襟を立てる姿は、ボギーを意識したのである。
妻とは映画「カサブランカ」を観に行く。
それが妻と観た唯一つの映画であった。
彼はボギーのようにヘビースモーカーであり、また酒豪でもあった。
1957年に食道癌を宣告され、妻と共に闘病するものの57歳でなくなったボギーを意識して、「俺も長くは生きないな」と言っていた。
「私を一人で置いて、逝ってしまうの」信恵は寂しい笑みを浮かべた。
「それも、定めだな」米沢は自らの死を予感していたのだろう。
「俺がもし、死んだら三島さんだけに連絡してくれ、それ以外は連絡しなくていいから・・・」
米沢は競輪にのめり込んでから、孤独感を一層強めていた。
これまでの、人との絆を自ら断ったのである。
まるで、自分の運に賭けて、全ての運を使い果たすような生き方となっていた。
三島に会いに行ったのは入院の10日前であった。
入院中の米沢に一度も徹は会いに行っていない。
「誰にも会いたくないと言っています」米沢の自宅に電話をすると、信恵は涙声になっていた。
余命、半年と医師から既に告げられていたのだ。
徹自身、死に向かっている友人の米沢の姿を見たくなかった。
血を見るのが苦手な徹は献血も苦手で一度もしていなかった。
一方、米沢は献血には常に協力的であった。
「渋谷の日赤献血センターには、女優のローレン・バコールに似た看護婦がいるんだ」と米沢はニッコリ笑った。
ボギーの4度目の妻である。
実は徹もローレン・バコールが好きなタイプであったのだ。

相手ではない、自分なのだ

2017年03月14日 14時26分39秒 | 社会・文化・政治・経済
人間は閉ざされた状態にある。
元品(がんぽん)の無明とは、魔の働きである。
自分自身に仏の生命が具わっている。
そのことを信じ切れない生命が、根本的な迷いである。

魔が人々を支配しようとしている
魔は何か特別な形をしているわけではない。
魔こそ迷いの原因である。
それを破るのは信の一字である。

自分の慾望に振りま回される。
心配や悲しみに心を奪われる。
自分の執着に突き動かされる。
何かを恐れる。
疑いや後悔に支配される。
驕り高ぶり、人を卑しむ。
怠惰な心を起こさせる。
魔との闘争とは、自分の弱い生命との戦いである。
己心の奥低に潜む魔性を制覇していく戦いなのだ。
相手ではない、自分なのだ。

厚生労働省発表資料(医薬品関連)掲載

2017年03月14日 13時52分32秒 | 医科・歯科・介護
□■ PMDAメディナビ ■□
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厚生労働省発表資料(医薬品関連)掲載のお知らせ (2017/03/13配信)
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(2017年3月13日付)
医薬品医療機器等法違反業者に対する自治体による行政処分について(第2報)(プレスリリース)
http://www.pmda.go.jp/files/000216937.pdf

■C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が発見された件について、東京都及び大阪府が卸売販売業者に対し、医薬品医療機器法(※)に基づく行政処分を行った旨のプレスリリースが、厚生労働省より発出されましたのでお知らせ致します。

※医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

<参考情報>
2017年1月17日から3月7日にかけて発出されました
「C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品」関連の厚生労働省発表資料は、下記のURLからご確認いただけます。
--------------------------
今までに掲載された厚生労働省発表資料(医薬品関連)
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/mhlw-released/0001.html

□■ PMDAメディナビ ■□
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厚生労働省発表資料(医薬品クラスI回収)掲載のお知らせ (2017/03/13配信)
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(2017年3月13日付)
医薬品自主回収のお知らせ(クラスI)(販売名:エピペン注射液0.3mg)(プレスリリース)
http://www.pmda.go.jp/files/000216924.pdf

■本日、下記の製品について製造販売業者が自主回収に着手した旨のプレスリリースが、厚生労働省より発出されましたのでお知らせいたします。

■回収対象
販売名   : エピペン注射液0.3mg
一般的名称   : なし
製造販売業者の名称 : ファイザー株式会社
http://www.info.pmda.go.jp/rgo/MainServlet?recallno=1-0974

□■ PMDAメディナビ ■□
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 医薬品リスク管理計画(RMP)掲載のお知らせ (2017/03/13 配信)
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RMP提出品目一覧
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0001.html

販売名:リアメット配合錠
一般名:アルテメテル/ルメファントリン
製造販売業者:ノバルティス ファーマ株式会社

販売名:ヤーズフレックス配合錠
一般名:ドロスピレノン・エチニルエストラジオール ベータデクス
製造販売業者:バイエル薬品株式会社

※前週分の新規RMP掲載情報についてとりまとめてお知らせしております。

医療従事者の皆様におかれましては、RMPをご覧頂き、
市販後の安全対策への更なるご協力をお願い申し上げます。

医薬品リスク管理計画の目的や詳細については下記URLよりご覧ください。
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0002.html

※3月6日配信の「RMP掲載のお知らせ」について、訂正させていただきます。
(誤)アプレミラス→(正)アプレミラスト


□■ PMDAメディナビ ■□
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厚生労働省発表資料(医薬品関連)掲載のお知らせ (2017/03/09配信)
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(2017年3月7日付)
医薬品医療機器等法違反業者に対する自治体による行政処分について(プレスリリース)
http://www.pmda.go.jp/files/000216879.pdf

■C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が発見された件について、奈良県及び奈良市が、薬局に対して、早急に業務の運営の改善を図るべきとして、医薬品医療機器法(※)に基づく行政処分が行われました。
詳細な情報は、奈良県及び奈良市の報道資料をご確認ください。

■医療関係者の皆様におかれましては、患者の手に偽造医薬品が渡る事案が再発することのないよう、管理等を徹底していただけますようお願い致します。

※医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

<参考情報>
2017年1月17日から2月16日にかけて発出されました
「C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品」関連の厚生労働省発表資料は、下記のURLからご確認いただけます。
--------------------------
今までに掲載された厚生労働省発表資料(医薬品関連)
http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/mhlw-released/0001.html

△▼厚生労働省▼△ ・平成29年3月10日付大臣会見概要

2017年03月14日 13時50分18秒 | 医科・歯科・介護
新着情報配信サービス

      03月13日 10時 以降掲載

○ 大臣会見等

・平成29年3月10日付大臣会見概要
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230445

○ 報道発表

・「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱」と「特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申~三酸化二アンチモンを特定化学物質として規制します~
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230447

・「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申~産業医制度等に係る見直しを行います~
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230449

・平成28年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230451

・医薬品自主回収のお知らせ(クラスI)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230453

・指定薬物を含有する危険ドラッグの発見について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230455

・「製造業安全対策シンポジウム」を開催します~製造業における安全対策のさらなる強化と情報発信~
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230457

○ 政策分野

・犬の鑑札・注射済票様式等の変更のお知らせ(島根県大田市、邑南町、津和野町)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230459

・平成29年度薬局医療安全対策推進事業実施法人の公募について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230461

・平成29年度 人生の最終段階における医療体制整備事業実施団体の公募について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230463

・集合契約の取組に関する支援(各種資料)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230465

○ 審議会等

・第101回労働政策審議会安全衛生分科会
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230467

・審議会、研究会等予定
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230469

・第18回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会の開催について
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230471

・第15回厚生科学審議会 議事録(2017年2月6日)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230473

○ 統計情報

・介護保険事業状況報告(暫定)(平成28年12月分)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230475

○ 採用情報

・総合職(化学・生物・薬学)(薬学系)
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230477

○ その他

・調達情報 後期高齢者医療制度の保険料軽減特例及び高額療養費制度の見直しに関する周知広報用品(リーフレット1,344,400部 外1件 1,835箇所)の梱包発送
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=230479

○リンク

丸山ワクチンに望みを託した

2017年03月14日 11時03分02秒 | 創作欄
多くの競輪ファンが負け続ける中で、米沢は奇跡的に「負けなかった」のである。
直感ともいうべきものであろうか、嫌な予感がしたら車券を買わずにレースを観ていた。
案の定、彼が車券の軸にした選手が仕掛けられず敗退する。
頭裏に数字が浮かんでいることもあった。
それは霊感のようなものであっただろうか。
競輪は9人選手が走るのであるが、「数字が走るのだ」と米沢は独自の考え方に至る。
勝負勘を補強するような、数字の閃きを確信した。
当然、数字が浮かんでこないこともある。
その時は、レースを冷静に観ていて、車券は買わない。
だが、彼の勝負勘に狂い出てきたのである。
肺がんの初期症状は風邪の症状とよく似ていた。
「安静にしていれば自然に治る」と勘違いされやすい、という特徴もある。
米沢は新潟の弥彦競輪場で風邪が悪化したのだと思い、8レースで競輪場を後にし、新潟市内戻り「熱爛かん」の日本酒を飲む。
だが、体が温まってきたのに、痰や咳が止まらない。
そして一か月以上空咳が続いた。
段々咳がひどくなり、息切れを感じるようになり、競輪場へ行っても勘が冴えなくなる。
それまで奇跡的にプラスを続けていたのに、負け続けたのだ。
常時、手元には100万円以上の軍資金があったのに・・・
痰の量が増え痰の色が濃くなったり、血痰が出るようになってきた。
持続性の胸の痛みを感じ、物が飲みこみにくなる。
食欲が落ち、急に体重が減った。
首や顔が腫れることが増え、疲労感が強くなる。
それを酒で誤魔化すが、限界に来て日本医科大学病院へ行く。
そして丸山ワクチンに望みを託したのだ。

米沢に思わぬ博打の才

2017年03月14日 10時12分13秒 | 創作欄
米沢これまで知的好奇心から、多くの本を読んできた。
若き日の彼は、映画人の端くれとしての立場であったが、身近に接する優れた監督や脚本家たちには、それなりの知的な豊かさや理念の裏付けが感じられた。
陰で相当の努力を重ねてきて、今日の彼らが居るのだと羨望の眼を注いできた。
米沢は足を踏み入れた競輪に翻弄されていく。
たかが競輪、されど競輪である。
血も湧き立つ。
走る格闘技と評される競輪に、米沢も闘争心を燃やし初めていた。
初め行って大宮競輪では、手にしていた退職金が約3倍になったのである。
妻には、「アルバイトの金だ」と言って10万円を渡した。
妻はどのようなアルバイトなのかを問わなかった。
二人の間には子どもが居なかった。
米沢は妻にとって、大きな駄駄っこのようなものであった。
マイペースを貫く夫である。
妻の言いなりになる夫ではなかった。
一人でぷらりと旅行へ行く。
そして旅先から絵ハガキを送ってきた。
ほとんど夫婦で旅行をすることはなかった。
米沢は地方の競輪場へも出掛けて行った。
小田原、伊東温泉、静岡、名古屋、京都、奈良などである。
米沢には、思わぬ博打の才が眠っていたのである。
脚本でも書くように、展開を組み立て描く。
「競輪にドラマがある」その通りであったのだ。

3月13日(月)のつぶやき

2017年03月14日 02時10分31秒 | 医科・歯科・介護

米沢の変化

2017年03月14日 02時01分06秒 | 創作欄
失業保険を手にした米沢は、競輪場へ向かっていた。
居酒屋で一人飲んでいたら、「相い席、いいですか?」と60代と思われる白髪頭の男が前に立つ。
「どうぞ」と応じた。
男はコートのポケットから競輪の専門紙を取りだす。
競馬、競輪、パチンコも米沢はやらない。
余暇は映画を観ることが多い。
映画を観ると若き日に身を置いた撮影現場に戻りたい気分となる。
「競馬、競輪を題材にした映画はあっただろうか?」と想ってみた。
「競輪は面白いですか」相手が酒を飲みながら、熱心に新聞に目を落としているので聞いてみた。
「競馬より、面白いね。競輪は人間臭いからね」男は多舌となり、競輪談義をする。
「ほう、そうですか」米沢はなぜか興味を示したのである。
「競輪には、ドラマがあるね。小説を書く才能があれば、書いてみたいね」男は上機嫌となる。
「この席、何かの縁だ。驕らせてください」
「いいですよ」と米沢は手を振る。
「ドラマがあるんですね」別れ際、米沢はその気になって、大宮競輪へ行くことにした。
「ゴール前の辺りに居るからね」男は佐々木と名乗った。
米沢は土日でないのに、多くの観客で競輪場が溢れていることにまず驚いた。
そして、客を呼び込む予想屋のだみ声に恐れ入る。
「浪花節でも、唸りそうな声だな」と相手を見上げた。
予想屋は木箱に乗って客を引き付ける。
「穴だよ、穴だよ。これを買いな。本命なんぞ買うな」
「4、6、8を買って、ハワイへ行こう」
「勝負、勝負、有り金勝負だよ」
多くの予想屋が客の心、気持ちを揺さぶるのだ。
中には元競輪選手だった予想屋も居て、ユニフォーム姿である。
米沢は昨夜、出会った佐々木の姿を探したが、見あたらない。
米沢は「どこが、ドラマなのか」と車券を買わずにレースを観ていたのだ。

米沢の死

2017年03月14日 01時12分03秒 | 医科・歯科・介護
米沢の死を早めたのは、ストレスというマイナス要因ではなかっだろうか?
彼は業績を上げたのに、それが報いられなかったのである。
「今回の特集の企画は、三島君が企画したもんだ。あんたは、三島君と二人で広告を取った。編集が記事を書いた。事務の者も間接的に協力している。あんただけの待遇を特別にだね、よくできないんだ。勘違いするんじゃないね」社長の坂田は約束を反故にしたのである。
暗い表情を一層暗くした。
編集の大田浩介が影で「坂田真っ暗」と揶揄している表情である。
翌日、社長が大阪に出張してから米沢は無断欠勤する。
米沢の待遇改善を進言した三島の期待も裏切られたのだ。
「実績を横取りする男と言う人もいたけど。そんとおりだね」米沢を怒りを露わにした。
「米沢さんがいるから、頑張れるです。辞めないでください」一心同体のような気持ちで徹は説得した。
「どうしようかな・・・明日、返事します」米沢の電話の声は歪んでいた。
10日後、米沢は辞表を出した。
「辞めても、時々、飲みましょう。元気で居てください」
10日ぶりであるが、米沢が痩せたように見えたので徹は身を案じた。
「そうだね」投げやりのような返事であった。
米沢はこの日も、朝から酒を飲み、午後2時ころに社に姿を見せたのだ。
彼は多くの広告主を開拓していた。
経済雑誌、経済新聞、政治雑誌も読んでいたので、話題が豊富であったのだ。
「米沢さんの話はいいですよ。参考になります」徹は得意先の声を直接聞いていた。
だから、徹は米沢と酒を飲むのを楽しみの一つにしていた。
その彼が去っていく寂しさをしみじみと感じていた。坂田社長に請われて入社したという思いが米沢にあっただけに、裏切られた気持ちになった。
怒りを込めて飲む酒は、体によいわけがない。
遺伝的要素でがんにり患しやすいと言われているが、怒りや絶望は自らの心身をも痛めように攻撃していくだろう。



将棋の駒「角」

2017年03月14日 00時28分03秒 | 創作欄
死は、意外にも身近にあった。
雑誌の印刷をしている新橋の印刷所の工員の君島三郎が、朝のジョギング中に荒川沿いの遊歩道で倒れ急死したのである。
昼の休みに徹は君島と度々将棋をしていた。
君島は冬でも半袖姿であった。
女性工員の野村寛子が「健康優良児」と声をかけながら、太い腕を触る。
「たやすく、触るのはよしてくれ」と君島はむくれる。
「抱かれてみたい。腕だもん」寛子は18歳だが大胆なこと言う。
ボディービルで鍛えた胸も盛り上がっている。
「何て、呆気ない死に方なんだ」通夜に出席した米沢がつぶやく。
強靭な肉体がお棺のなかに横たわっていた。
野村寛子は少女のように肩を震わせ泣いていた。
「お別れなのに、死に顔を見られない」寛子は君島の足元に菊の花を添えた。
三島徹は君島の死に顔を凝視する。
眠っているような穏やかな死相であった。
自宅から持参した将棋の駒「角」を、顔の脇に置いた。
君島が「角が一番好きなんだ」と言っていた。
団地の集会場での葬儀であった。
彼は32歳、独身であった。
「お清めをしましょうか」と米沢が言うので、赤羽の駅前の居酒屋で飲んだ。
1年半後、米沢が肺がん逝くとは、神のみぞ知るであった。